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Artery - Vein

そんなに長い文章にはならない。
書けることは多くない。
ただ、何が出てくるのか、知りたいだけ。
自分の中から。
きっとそれは多くない。
それは分かる。

僕もまた、ベスト盤は、好きじゃない。
「ベスト」という
押し付けがましい言葉が嫌いだ。
対象が好きなバンドやアーティストであればあるほど、
俺の「ベスト」は違うぞ、なんて思うときもある。
知らないバンド、アーティストの場合だと、
ベストを聞いて全て知った気になる自分がいて、
それは間違いだとわかっていても、
そう思う自分がいて、それが嫌で、
それも原因をベスト盤に求めてしまって、
結果的に、何かベスト盤が嫌いになって。

いいものもある。それはそう思う。
語り継がれるベスト盤も、あるのだろう。
世の中には。
だがしかし、世間的な評価を
無闇に信じてもいけない。
自分が、ある音を聞いたときに、
その対象に評価を下すのは、
自分でしかないのだから、
世間がクソだと言っても、
自分は宝石と思えば、
それはクソ? それとも宝石?

*** *** ***

正直、期待はしていなかった。
だって手元に99%の音源はあるのだから。
そんな人がベスト盤を購入するのなら、
そこには相応の理由が必要だ。

・今では入手困難な音源が入っている。
・未発表曲が入っている。
・全曲リマスタリング。

それが僕の、購入の理由だった。

何がどう作用したのか分からない。
ひょっとしたら、最後の理由が、
一番大きな効果を持っていた、
ということかもしれない。

何回も聴いた曲なのに、
何度も噛みしめた曲たちなのに、
僕の眼は、1曲目で潤んでしまった。
なぜなのか、自分でもよく分からない。
泣きたくて、涙を出したわけではない。
泣こうとして、聴いたわけでもない。
先に言ったように、
過剰な期待も、なかった。
だから、理由が分からない。
もう少しで、眼から出た水は
頬を伝うところだった。

・・・・・・。

思うに、ただの推測でしかないが、
僕はきっと嬉しかったのだろう。
たとえ「ベスト盤」という形であろうとも、
それはひとつの「新たな音源」として捉え得る。
だとすれば、それは僕にとって
「久しぶりの音源」となり得る。
だから、例えて言うなら、
僕はまだ「おかえり!」と大きな声で
言えないまでも、玄関の外に待ち人が
見えたような気がして、ハッとしたんだろう。
たとえ、見えたのが幻だとしても、
幽霊だとしても、
僕には待ち人が見えたような気がして、
すぐそこにいるような気がして、
心は再会の予感に打ち震えたのだ。
そして涙が、沸いて出てきたのだ。
ごくごく、自然に。
本当に、自然に。

それだけきっと、
会いたいってことなんだろう。

*** *** ***

僕は噂は信じない。
最悪だと言われている人が、
まったくそんな人ではなかったという、
そんな経験は、何度もある。
五感を通じて体験した事象が、
やがて事実となり、それが真実となるまで、
僕は噂は信じない。

だからね、いや、「だから」じゃないけど、
「噂」なんて、どーでもいいじゃん。
いや良くないけど。いや矛盾してるけど。
メディアが噂を取り上げると、
それは盛り上がるのかもしらんけど、
あらぬ方向へ拡散したりするから、僕は好きじゃない。

それは余談。ごめんなさい。
関係ない話、なのかもしれない。
何を書いているか分からなくても、
そこはご愛嬌。
ホントは僕は、
「分からない人にも分かる」ように
文章を書きたいし、普段そう心がけているんだけど、
今回はまあ例外でいいじゃないか(勝手)。

*** *** ***

『動脈』と『静脈』。
僕は『静脈』から聴いたんだ。

好きな、ベストアルバムです。
好きに、なりました。
何回も聴いています。
前にも書いたように、
僕は決してSyrup至上主義じゃない。
なのになんでか・・・、
“You Say ‘NO’”でも泣いている。
これに関しては、
歌詞がどう、とかではない。
ただ、その全体的な触感が、
妙に懐かしくって・・・堪らなかった。

・・・・・・。

リマスタリング。
ギターの音が妙に立って聞こえる。
音が包み込んでくるのに、
けれど歌は真ん中にしっかりあって。
特に“Reborn”がいい。断然いい。

『HELL-SEE』からの音源、
例のモコッとした感じがなくなっていて、
実にビックリさせられます。新鮮に響く。

逆に重みがなくなって
遠のいたように感じられる曲も
(僕の耳には)あるけれど、
それすらも、新たな魅力。
特に『coup d'Etat』の収録曲は、
そんな感じがする。

2枚組、とっても濃いんだけど、
「軌跡」と呼ぶには
なんだかとってもアッサリしてる。
それはSyrup16gが走り始めてから、
第一期を終了するまでの、
その期間がそれほど長いものではなかった、
そのこととも関係あるのかもしれない。

世の中には、そりゃあ他にも例はある。
Syrupとはちょっと違うけど、
活動状況がアヤフヤなまま、
半永久的に復活はないだろうと思われながらも、
それでもファンがずっと音源を待ちつづけるって、
そんな状況は。
メジャーなところなら、
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。
日本でも、あんなバンドやこんなバンド。

海外でも、活動していながら、
作品間のインターバルが長いのはザラにある。
僕の好きなNine Inch Nailsも長い。
アルバムの間は毎度5〜6年開いている。
だから何ってわけじゃないんだけど。
その間に長いツアーとか何やらやってるからね。
んー、にしても、長いか。
そこから言える(言えそうな)ことは、
当たり前だけど、作品制作に必要な期間は、
各々異なるだろうってことです。

だから、きっとやってくれるだろうと、
そう思う一方で、
「大丈夫かしら」という気持ちもやっぱりある。
ほんの少しだけど。
でも『動脈』、『静脈』を聴くと、
やっぱり信じるしかねーなと、そう思う。

自分を切り売りするような作り方をする
アーティストさんは、
ホント「インプット」がないと、
いずれ空っぽになってしまうだろう。
あるいは同じ事を延々繰り返すだけになる。
それは呪縛みたいなもんかもしれない。
特にSyrupみたいなバンドは、
「歌詞」がキーになるんだろうけれど、
それが自分の中から「自然」に
出てこなかったら、ねえ、
無茶苦茶しんどいことになるじゃないですか。
色んな事を統合して考えるに・・・、
借り物の何か、古い何かを飛び越えて、
新しい自分だけの何かを手に入れつつ、
生み出しつつ、
なおかつ、自分を納得させ、
周囲のプレッシャーも跳ね除ける。
そうやって、バランスをとる。
それがベストなんだろうけれど。
・・・・・・。
ってか、どう変わってもいいから(それは嘘かな)、
やっぱり新しい音源聴きたいですね。

うまく整理できかねる。
どうしても、憶測ばかりが加速する。
ムー。
早く「おかえり」と、言いたいです。
それに尽きる。

2006/09/07
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