MONTHLY RECOMMEND [2002, November] Home

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□Artist(s) … ART-SCHOOL
□Title … REQUIEM FOR INNOCENCE
□Number …
1.boy meets girl / 2.リグレット / 3.diva / 4.車輪の下 / 5.メルトダウン / 6.サッドマシーン
7.欲望の翼 / 8.アイリス / 9.フラジャイル / 10.foolish / 11.シャーロット / 12.乾いた花
□Comment …
アート・スクールのメジャーデビュー作にして彼らにとっての初のフルアルバム。2002年リリース。
メンバーは木下理樹(G/Vo)、大山純(G)、日向秀和(B)、櫻井雄一(Dr)の4人。 もともとは木下さんのソロユニットだったアート・スクールが、 2000年初頭に今のバンド形態へ移行したようで、ソングライティングはすべて木下さんが手がけています。 これまでにもシングル2枚、ミニアルバム3枚を発表していますので、満を持してのフルアルバムといったところでしょうか。

骨太ギターサウンドに分かりやすいメロディ、そしてとめどなくあふれる感情と起伏の激しいテンション、 木下さんの書く曲は随所で言われているように、「オルタナティヴロック」と呼ばれ、 80年代〜90年代に活躍した海外のバンドたちを彷彿させます。
木下さんの歌声は多少ナルシスティックな部分がありますし、苦手な人はそこが苦手なのかもしれません。 ですが、この非常に説得力のある痛々しい歌声には誰しも耳を奪われることでしょう。
失くしてしまった何かを追い求めるかのような、繊細にしてエモーショナルな木下さんの叫び、 中心にはあるのはそのエネルギーなんだと思います。それをさらに大きくしているのが、 疾走しまくりのヒリヒリ感溢れるギターと、少し重めの確かなリズム。そして非常にPOPなメロディ。
そのサウンドと歌詞はまるで身を切り刻む冬の冷風のような痛さ。あるいは凄腕の暗殺者が 通り過ぎた後の現場のような無常観。すべてを無に帰し、後には何も残さない。

「偽った 苦しくて偽った 車輪の下 誰一人信じれず生きてきた 笑えばいい 初めての注射器とモンマルトル 広場のリス 昔からそうやって生きてきたんだ アイソレーション」、「灰になる前に 助けて 助けてよ」、「君の髪も 匂いも この気持ちさえも ただ消え去っていくって そんな気がしてさ」、「シャボン玉が舗道に落ち 砕けた瞬間 この刹那を この刹那を信じた」、「ごらん夢は今目の前で崩れて行く」、「シャーロット、僕を焦がして シャーロット、それが全てで シャーロット、空っぽなだけ シャーロット、僕達は皆」。

人なんて独りで生まれて独りで死んでいく。だから他人を求めることなんて無意味かもしれないけど、でもそれを止められない、そんな気持ちが突き刺さってきます。

「そうさ 今日は 繋がれていたい 繋がれていたいよ 今日は」

こうやって叫んでいればいつかきっとすべてを取り戻せるんじゃないかと、そう信じているかのように、圧倒的な力(エネルギー)に満ち溢れています。何がここまで木下さんをそうさせるんでしょうか。
まあそういったサウンドから予測される要素はさておいて、僕はアート・スクールの凄さってのはやっぱり楽曲の素晴らしさにあると思います。この2〜3分の中で展開される、非常に分かりやすい 比類なき直球メロディを聴いていると、僕的にはピクシーズなんかを思い出します。ニルヴァーナって言う人もいるかもしれません。そんなこんなで、僕は木下さんってスゲーなあと、思うわけです。彼と同い年のせいもあるかもしれません。 自分の感情をこんなに上手に、POPなメロディにこめることができるなんて、これはやっぱり才能以外の何モノでもないのでしょう。凄い。

「青春バンドが横行する今の日本の音楽シーンに終わりを告げたかった」と、ラジオでタイトルの由来を聞かれ、木下さんはそんな意味もあるんだと言っていました。「あんなのガキの音楽で、聴く方もガキになってる」と。それが木下さんの真意かどうかはともかく、確かに少しはそんな気持ちがあったのでしょうね。嫌いそうですもんね、ああいうサウンド。それに下北沢のシーンに入れられるような扱いについては、「吐き気がする」というようなことも言っていました。やはりサウンドだけじゃなくて内面的にもヒリヒリしている方のようです。メジャーシーンにあんまりいない人ですよね。これからの動向を思うとゾクゾクします。

ちなみにジャケットに描かれているイラストはメンバーの大山さんの手によるもののよう。これまた才能です。お見事。


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