MONTHLY RECOMMEND [2003, October] Home

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Artist(s) … THE MARS VOLTA
Title … DE-LOUSED IN THE COMATORIUM
Number
1.son et lumiere / 2.inertiatic esp / 3.roulette dares(the haunt of) / 4.tira me a las aranas
5.drunkship of lanterns / 6.eriatarka / 7.cicatriz esp / 8.this apparatus must be unearthed
9.televators / 10.take the veil cerpin taxt / 11.ambuletz
※11曲目はボーナストラック。

Comment
1994年にテキサスで結成され、2000年のメジャーデビューアルバム『リレーションシップ・オブ・コマンド』で人気絶頂に達するも2001年に突如空中分解した5人組、AT THE DRIVE-IN(アット・ザ・ドライヴ・イン)。そのアット・ザ・ドライヴ・インのメンバーだった2人、omar a rodorigues−lopez(オマー・ロドリゲス)とcedric bixler zavala(セドリック・ビクスラー)が中心になって結成したのがこのTHE MARS VOLTA(マーズ・ヴォルタ)。メジャーデビュー以前(2002年春)にEPを発表してから1年以上が経ち、2003年にリリースされた今作が1stフルアルバム。

アット・ザ・ドライヴ・インの熱心なファンでない僕には比べる術がないのだけれど、このマーズ・ヴォルタはアット・ザ・ドライヴ・インほど直線的ではないように感じられる。変拍子と呼ぶことさえためらわれそうなエキセントリックなリズム、ときには痙攣的に小刻みなリフを刻み、ときにはドラマチックに爆発するギター。即興演奏的な奔放な要素も多分にある。その混沌としたサウンドの中でも存在感を放つセドリックのハイトーンなヴォーカル。この荒くれぶりは荒野を転がるタンブルウィード(回転草:秋に根元から折れて、球状になって風で野原を転がる植物です)。もしくはロデオの荒馬。まさに『予測不可能』な動きをする物体なり動物なりのイメージがぴったりくる。

こういったサウンドだとアナログ一直線で突っ走るような先入観が僕にはあったのだけれど、このアルバムはチョット違う。リズムやヴォーカル、ギター等に加える大胆な電気的な処理であったり、ときおり差し挟まれるアンビエントな効果音が耳につく。特に後者の静的な効果音があることによって、このアルバムは独自のサウンドスケープを生み出している。息詰まるような混沌としたサウンドのイメージが「剛」であるとすれば、それらのエフェクトは「柔」。ひっくるめて聞いた場合に、聴き手に不思議な空間的広がりを与えてくれる。この音作りは、今作がコンセプトアルバムであることと大きく関係あるだろうと思う。この作品はオマーとセドリックの友人であるjulio venegas(フリオ・ヴェネガス)という人物に捧げられており、このアルバムで展開される物語は、フリオが自殺未遂の結果昏睡状態となり、そこから目覚めるまでの体験を表現しているよう。昏睡の中で“彼の心は様々な場所へと流れていき、そして物語の中でフリオは後に目覚める”(オマー)という。アルバム中の規則性のないグルーヴや、それと対比的な不思議な落ち着き、これはフリオの精神状態と対応しているのだろうか。一個人の精神世界を表現したコンセプトアルバムは山ほどあるだろうけど、僕はそれらをこのアルバムと比較するのに充分な量聴いていない。だから相対的な評価はできないのだけれど、それでもこのアルバムは見事だと思う。欲を言えば歌詞が読みたかったか。

最後に、このアルバムを制作したメンバーは先のオマー(G)とセドリック(Vo)に加え、Jon Theodore(ジョン・セオドア:Dr)、Jeremy Michael Word(ジェレミー・マイケル・ワード:electronics、programming)、Flea(フリー:B)、Ikey Isaiah Owens(アイキー・アイゼオア・オーウェンズ:keyboards)。フリーはあのレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー。マーズ・ヴォルタと親交深く、またバンドの大ファンでもあるフリーは、正規のベース不在の穴を埋める形で参加。しかもレッチリのギター、ジョン・フルシアンテもギターで1曲参加。そしてプロデューサーはRick Rubin(リック・ルービン)。豪華メンバーだ。サマーソニック03でも来日。



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