MONTHLY RECOMMEND [2007, October] Home

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Artist(s) … トレモロイド
Title … 5 meters high and swimming
Number
01. BLUESTAR / 02.閃光 / 03.空想の街 / 04.Five in the morning / 05.フレッシュゴーレム
06.シンデレラ / 07.朝 / 09.a happy song

Comment
2005年に、小林陽介(Vo&Gu)と小林郁太(Key&Sampler)の小林兄弟を中心に結成。紆余曲折があったようだが、本作作成時のメンバーは、小林兄弟に加え、山口実苗(Gu/Cho)、高垣空斗(B)、村上寛(Dr/Per)。僕が彼らのことを知ったのは、だいぶ遅くて、2007年に入ってから(いや、“遅い”か…?)。ネットで試聴した“フレッシュゴーレム”があまりにも耳に残るもんだから、音源を手にしたいと思ったのだった。でも何か通販とかで?普通に流通してるのかよく分からんし、まあ僕の近所には置いてないし、で、ちょくちょくサイトをチェックしてたら、アルバムリリースということなので、今回手に取った次第。2007年リリース。

試聴のときから思ってたんだけど、「ああ、くるりだよなあ」って誰もが思うでしょうね(笑)。いや難しいこと言ってココがどうだから「そう」だとか、「違う」とか、言い出したらキリがないんでしょうけど、ファーストインプレッションがね、似てるよね。くるりの影響受けてるバンドなんて、腐るほどいるだろうけれど、彼らもその1つなのは間違いない。これは断言できる。

でもブログにも書いたけれど、くるりよりフワフワしてる。彼らほどリアルではない気がする。くるりってたまにグロテスクな気もするんだが、トレモロイドには、それはない。歌詞も意味があるようなないような、断片的な言葉の羅列。ヴォーカルスタイルも、声質は岸田くんに通じるものがあるけれど、もっと不明瞭である(エフェクトのせいもあるだろう)。メッセージ性をさほど感じない。雲の上で散歩でもしているような。発したそばから、空気になるような、空気に溶け込んでいくような、唄というよりも、音というイメージが強い(山口嬢のコーラスはあくまでコーラスであって、決して耳につくものではない)。その辺り、Sigur Ros的、と言うと言い過ぎか。

音にしても、どこかライヴ感に乏しい(もともと宅録でスタートしてるとこにも理由があるんだろね)。良くも悪くも。音のつくりには非常に気が使われているのだろうけれど、それを感じさせない(つまりサラリと聞き流すこともできる)のが、憎い。上手いと思う。淡々としたリズムの上を舞う、つかめそうでつかめない、綿毛のようなメロディ、声。その整合されていない感覚もたまらなく好きだ(逆にとことん“キッチリ”作られた作品も聴いてみたい)が、ところどころで心に入り込んでくるキーボードの切ない音が、これまた絶妙だ。切なさ2割り増し。サンプラーが音の輪郭をゆるやかに変形させ、世界を広げるために果たしている役割も大きい。1回聴いただけだと、きっとツルリとお腹に入ってしまう(“フレッシュゴーレム”だけは口に残るだろうか)。けれど、何度か聴き、その音像に身を委ねることができたなら、彼らのキャッチコピーにある「空想の街」へ辿り着くだろう。



Artist(s) … audio safari
Title … ウルノソラ
Number
01. 車輪 / 02.泡に響く / 03.ほころび / 04.transpose to October sun / 05.十数えて
06.fall / 07.波の模様 / 09.南の庭

Comment
京都のバンド、audio safari。発足したのは2003年。現在核となるメンバーは、桜井まみ(Vo)、 吉賀大介(Programming/G)、川本真太郎(Dr)の3名。ここに複数のサポートメンバーが入ることで、彼らの音は鳴らされている。注目を集め始めたのは、おそらく2006年に、くるりが主宰するノイズマッカートニーから出された音源『V.A./みやこ音楽祭』のよう。彼らはここに“after you drew the line”を提供している。そして本作が、1stアルバム。2007年リリース。これ以前にDemo CD-Rのリリースが有る(“車輪”、“fall”、“ほころび”の3曲収録)。

何と言っても、このアルバムの冒頭を飾る“車輪”。素晴らしい。これを聴けば、まさにこのバンドの何たるかが分かる。荘厳なシンセ音に続く、湧き出る泡のごとき電子音、そして走り出すリズム、その上に流れる桜井まみ嬢(ソロでも活動している)の、夢幻の声。一曲で世界がaudio safariに染まる。決して似た音がないわけではない。僕の頭の中では、声のせいもあるだろうけれど、クラムボンが1番近い。でも違うのは、向こうのイメージが“昼”だとしたら、こちらは“夜”。向こうが“太陽”だとしたら、こちらは“月”。だろうか。でも暗いとか、冷たいとか、そういうことではない。クールなんである。音楽に使うのは嫌いなのだけれど、“神秘的”なんである。月光の射す森を歩いているような。視界には夜霧が薄く漂っているような。そして思考はどこまでも止め処なく羽ばたいていくような。そんな気がする、時間、空間、それを彼らの音は作り出している。

個人的には、ちょっと電子的な響きが強すぎるだろうか。もう少し、生っぽくても、僕は好きです。って、もろ個人的な。あとは、まだ曲ごとの弁別がやや難しい。アルバム全体が似通り過ぎている。音作りのせいかなあ。使われている音色のせいかなあ。“車輪”くらいの強い曲がポコポコ出てきたら、きっともっと、すごいことになるでしょう。アンビエントでアコースティックで、エレクトロニカで、POPでクールな唄モノで…素敵だなあ。




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