□Comment …
2005年に、小林陽介(Vo&Gu)と小林郁太(Key&Sampler)の小林兄弟を中心に結成。紆余曲折があったようだが、本作作成時のメンバーは、小林兄弟に加え、山口実苗(Gu/Cho)、高垣空斗(B)、村上寛(Dr/Per)。僕が彼らのことを知ったのは、だいぶ遅くて、2007年に入ってから(いや、“遅い”か…?)。ネットで試聴した“フレッシュゴーレム”があまりにも耳に残るもんだから、音源を手にしたいと思ったのだった。でも何か通販とかで?普通に流通してるのかよく分からんし、まあ僕の近所には置いてないし、で、ちょくちょくサイトをチェックしてたら、アルバムリリースということなので、今回手に取った次第。2007年リリース。
試聴のときから思ってたんだけど、「ああ、くるりだよなあ」って誰もが思うでしょうね(笑)。いや難しいこと言ってココがどうだから「そう」だとか、「違う」とか、言い出したらキリがないんでしょうけど、ファーストインプレッションがね、似てるよね。くるりの影響受けてるバンドなんて、腐るほどいるだろうけれど、彼らもその1つなのは間違いない。これは断言できる。
でもブログにも書いたけれど、くるりよりフワフワしてる。彼らほどリアルではない気がする。くるりってたまにグロテスクな気もするんだが、トレモロイドには、それはない。歌詞も意味があるようなないような、断片的な言葉の羅列。ヴォーカルスタイルも、声質は岸田くんに通じるものがあるけれど、もっと不明瞭である(エフェクトのせいもあるだろう)。メッセージ性をさほど感じない。雲の上で散歩でもしているような。発したそばから、空気になるような、空気に溶け込んでいくような、唄というよりも、音というイメージが強い(山口嬢のコーラスはあくまでコーラスであって、決して耳につくものではない)。その辺り、Sigur Ros的、と言うと言い過ぎか。
音にしても、どこかライヴ感に乏しい(もともと宅録でスタートしてるとこにも理由があるんだろね)。良くも悪くも。音のつくりには非常に気が使われているのだろうけれど、それを感じさせない(つまりサラリと聞き流すこともできる)のが、憎い。上手いと思う。淡々としたリズムの上を舞う、つかめそうでつかめない、綿毛のようなメロディ、声。その整合されていない感覚もたまらなく好きだ(逆にとことん“キッチリ”作られた作品も聴いてみたい)が、ところどころで心に入り込んでくるキーボードの切ない音が、これまた絶妙だ。切なさ2割り増し。サンプラーが音の輪郭をゆるやかに変形させ、世界を広げるために果たしている役割も大きい。1回聴いただけだと、きっとツルリとお腹に入ってしまう(“フレッシュゴーレム”だけは口に残るだろうか)。けれど、何度か聴き、その音像に身を委ねることができたなら、彼らのキャッチコピーにある「空想の街」へ辿り着くだろう。
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