□Comment …
謎の新人ラッパー、レイト。てっきりアーティストとして活動するための名前かと思ったら、本名もレイト(麗人)らしい。今作が初音源で、1stアルバム。2008年リリース。トラックメイク、歌詞、イラストは、すべてレイト。
真っ黒な背景にたたずむ、うつろな目をした女子高生。そのジャケットから受ける、鬱屈したエネルギーは見事にアルバムの世界を象徴している。頭からケツまでダークで、思春期的な視野の狭さ、それゆえの心の袋小路、先を見れないネガティヴィティが充満している。とは言ってみても、ただダークなだけではない。そこが凄いと思うのだけど、トラックがPOP。すこぶるPOP。だから、ぜんぜん聴ける(もちろん明るくはない)。JAPAN誌上では「マス」という言葉が使われていたけど、まさにそれ。“言いづらいこと”のラスト、まるで鼻歌みたいに「風がフワリとカーテンをなでる、とても気持ちいい時。誰かが僕を拳で殴る、とても言いづらいこと。」と放たれるのだが。ホントこの人、バランス感覚がすごいなあと思う。
でも全編がレイトにとってのリアル、つまり実体験というわけではなくて(だって“行方不明”なんて、本人死んじゃうしね)、ほぼフィクションと思っていいと思う。でも詞世界はとても物語性に溢れているので(主に思春期的な情景が多いのは、レイトの若さと、初期衝動のせいだろうか)、その辺りから、私はどうしてもミドリカワ書房を思い出してしまう(って、ココは笑うところかな、よく分からない)。POPなくせにダークで、根底に作り手の持つ“何か”が宿っている。“目隠し”なんて、ちょっとジメジメしてるけれど、隣の席の娘が鼻クソほじってるところを見てショック受けるなんて、なんだか笑えてしまう。あと度々出てくる「秋山さん」って女子は誰なんだよ?とか。そんなユーモア?を感じさせるところも、共通項のように感じる。
あまりに上手くできてる、ウェルメイドなのがなんだか気に食わなくて、もっと歪でもよかったのになんて思う。にしても、こっから先、どうするのか、どうなるのか、目が離せないけれど。どうか、マッチョにはならないで欲しい。このダークなトラックに乗る甲高い少年的な声が漂わす、垢抜けなさが、魅力の1つに思えてならないものだから。
しかし、全編通して聴くと、やっぱり疲れますね・・・。
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