MONTHLY RECOMMEND [2008, October] Home

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Artist(s) … レイト
Title … 明日など来るな
Number
01. 馬鹿な奴 / 02.言いづらいこと / 03.鼓動 / 04.海の底へ
05.パシリ / 06.目隠し / 07.赤い包丁 / 08.過去の人 / 09.人間の最後
10.行方不明 / 11.真っ黒な光 / 12.言葉 / 13.未定

Comment
謎の新人ラッパー、レイト。てっきりアーティストとして活動するための名前かと思ったら、本名もレイト(麗人)らしい。今作が初音源で、1stアルバム。2008年リリース。トラックメイク、歌詞、イラストは、すべてレイト。

真っ黒な背景にたたずむ、うつろな目をした女子高生。そのジャケットから受ける、鬱屈したエネルギーは見事にアルバムの世界を象徴している。頭からケツまでダークで、思春期的な視野の狭さ、それゆえの心の袋小路、先を見れないネガティヴィティが充満している。とは言ってみても、ただダークなだけではない。そこが凄いと思うのだけど、トラックがPOP。すこぶるPOP。だから、ぜんぜん聴ける(もちろん明るくはない)。JAPAN誌上では「マス」という言葉が使われていたけど、まさにそれ。“言いづらいこと”のラスト、まるで鼻歌みたいに「風がフワリとカーテンをなでる、とても気持ちいい時。誰かが僕を拳で殴る、とても言いづらいこと。」と放たれるのだが。ホントこの人、バランス感覚がすごいなあと思う。

でも全編がレイトにとってのリアル、つまり実体験というわけではなくて(だって“行方不明”なんて、本人死んじゃうしね)、ほぼフィクションと思っていいと思う。でも詞世界はとても物語性に溢れているので(主に思春期的な情景が多いのは、レイトの若さと、初期衝動のせいだろうか)、その辺りから、私はどうしてもミドリカワ書房を思い出してしまう(って、ココは笑うところかな、よく分からない)。POPなくせにダークで、根底に作り手の持つ“何か”が宿っている。“目隠し”なんて、ちょっとジメジメしてるけれど、隣の席の娘が鼻クソほじってるところを見てショック受けるなんて、なんだか笑えてしまう。あと度々出てくる「秋山さん」って女子は誰なんだよ?とか。そんなユーモア?を感じさせるところも、共通項のように感じる。

あまりに上手くできてる、ウェルメイドなのがなんだか気に食わなくて、もっと歪でもよかったのになんて思う。にしても、こっから先、どうするのか、どうなるのか、目が離せないけれど。どうか、マッチョにはならないで欲しい。このダークなトラックに乗る甲高い少年的な声が漂わす、垢抜けなさが、魅力の1つに思えてならないものだから。

しかし、全編通して聴くと、やっぱり疲れますね・・・。



Artist(s) … CHUB DU
Title … YES NO
Number
01. ゆとりのリリース / 02.finale / 03.ABC / 04.so happy
05.refrain / 06.me & me / 07.世界のAM / 08.フリルノート / 09.本当のこと

Comment
CHUB DU(チャブ・ドゥ)、2ndアルバム。2008年リリース。1998年結成で、1stアルバムは2003年なので、ここまでのアルバムはいずれも5年間隔ということになる。もともとは「アップダウンの激しいハードなナンバーをすべて裏声で歌う」(CINRA MAGAZINE vol.18)という、ヘンテコな音楽だったらしいが、1st以降、現在のような音楽性に変化したという。じゃあ現在の音楽性っていうと…嫌いな表現だという人もいるかもしれないけれど、ダブ・ポップ、プラス、エレクトロニカ、というのが私の印象。いやこれはそんなに“ダブ”じゃなくねえ?っていうならば、ダウンテンポと言ってもいい。ダウンテンポにポップで…ん、そうか!!ダウンテンポップ!!ってのはどうだ!? …いや、ダメですね。

とにかく、ダブ的な空間処理、ダウンテンポなグルーヴ、そこにソフトなエレクトロニカ的(あるいはフォークトロニカ的)音触りを加味、そして浮遊感漂う歌声が奏でるPOPなメロディ。私はこの手の音が大好きなのですが、なかなか歌まで乗せてらっしゃるアーティストさんていないんですよね。私が知らないだけかもしれませんが。

たとえばフィッシュマンズなんかと比べると、明らかに“こっち側”で鳴ってる音楽なのですが、だからこそ気持ちいい。なんかホッとする。少しの悲しさと、それを内包した温かさ。同居。私はM-2が大好きなのですが、これはすごい外に向かってる(歌詞が、じゃなく、曲が)のに、全体的に楽曲は「in」な印象。だから曲単位で聴くとちょっとナイーヴな気もするのですが、通して聴くと、実にまとまりがあって、アルバムとしてすばらしいと思います。2006年に悶々混沌状態に突入し、2007年に再始動したそうですが、今後とも是非、活動を続けて欲しいです。ちなみに今作作成時のメンバーは、核となっているのが、Takashi Kato(Vo)、Satoshi Yabumoto(B)の2名で、加えて、Kinya Kamijyo(Dr)、Kiyoaki Saito(G/Key)、Tatsuya Ohashi(G)、Daisuke Matsuzaka(Prog.)の3名。すべての作詞作曲はKato氏。




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