MONTHLY RECOMMEND [2009, March] Home

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Artist(s) … camellia
Title … 23'39
Number
01.6'56 / 02.(sorry, unknwon) / 03.7'37

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千葉県拠点の3ピースポストロックバンド、camellia。メンバーはtakashi ishiwata (gt,key,stick,vo.)、kazuya notsuke(ba,vo.)、Yukinori hijikata(dr, vo.)。 2005年結成で、本作は2008年にリリースしたデモCD-R。

ポストロックと言われるカテゴリにも、いくつかの下位カテゴリが存在すると思いますが、このcamelliaさんは、クールな技巧派のイメージが強いですね。アンビエント色もないし、鬱々としたイメージはまったくないです。上り詰めてって、爆発するような印象もない。1曲が長くて(7〜8分)、プログレッシヴな展開を見せてくれる曲が多いのですが、この作品にある1曲目が最たるもの。途中で曲変わってんじゃねーですかね、ってくらいに、展開がいきなり。ポストロック勢はその多くがジャズへの接近、その影響が顕著とか言われることもありますが、私ジャズはまったく分かりませんが、このcamelliaさんにもそれは感じます。どこがどうとは残念ながら言えないのですが。アドリブ的にさえ感じさせる小刻みなドラムプレイと、ベースラインの太さが目立ちますので、そこから発生するエネルギーの在り方がジャズ的なのかもしれません。しかしながら、緻密に構成されたと思しき情報量の多い圧倒的なクールサウンドは、どことなくクラブ向きにも思えます。

基本はインストものなんですが、曲によっては歌声も披露(M-2)。これがなんと浮遊感の漂う、どちらかと言うと、ダブ的なサウンドに似合いそうな歌声で、サウンドにあるクールさと相反して意外。でもこの2曲目が好きなんですね私。他2曲とは違った、音数の少ない、鍵盤を押し出したメロウな展開の中、終盤に炸裂するダイナミックなギターが堪りません。YouTubeでライヴ映像も見れるのですが、どうもステージが暗くて、演奏風景がよく見えないのが残念。どういう構成で演奏しているのかもよく分かりません。でもスクリーンに映像を流しているようで、この極彩色的サウンドにどのような映像を合わせているのかも気になるところ。3曲目に収録されている“7'37”のライヴ映像(コチラ)では、ベースが超かっこいい(ダサい言い方だけど)。ドラムと一緒に鳴った瞬間ゾクゾクする。生で観たら、やっぱり興奮するのでしょうねえ。ちなみに本作はSTMonlineで購入可能(コチラ)。どういう方向に進むのかも含め、先が気になります。



Artist(s) … メカネロ
Title … メクルメクセカイ
Number
01.蛍光浴 / 02.カーテンコール / 03.ようこそ / 04.ブルーサマー
05.風のミラクル / 06.スルー / 07.突如空いていた広い穴 / 08.モノ
09.ハローアワー / 10.部屋の中

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メカネロは1999年に林英樹(B)と真嶋信二(Gt)が大学で出会い、結成され、3ピースバンドとしてスタート。幾度かのメンバーチェンジを経て、最終的には、上記の2人に、大森まり子(Vo)、藤田優(Dr)、柏井万作(Key)の3名を加えた5人編成に。作詞作曲はすべて林英樹氏。2007年に大森まり子氏と真嶋信二氏が脱退し、バンドは解散するが、2005年に『メクルメクセカイ』、2006年に『世界の日暮れ』と、2枚のアルバムをリリースしました。ということで本作は1stアルバム。

キーボードを交えたギターポップサウンドに、♀ヴォーカル、ということで、私は好きなんですねー。と言う割には、今頃アルバムを購入したわけですが。YouTubeでトルネード竜巻のクリップを観ていたら、ふいにメカネロの“カーテンコール”が関連動画で出てきたという…聴いたらストライクで、それがきっかけって言う…。ということで、不思議なくらいにトルネード竜巻とイメージが重なりますね、とくに“カーテンコール”は“パークサイドは夢の中”とダブって仕様がありません(普遍性を備えた曲という意味の中で)。

ニューウェーブ、オルタナとか、ポストロックとかいう言葉を持ち出されたりもしますが、そんなもん関係ねえって言いたいですね。ただポップなだけでいいじゃないですか。それに今様のポストロックという言葉を、ここに使うのは憚られる。でもポップって言っても、商業ベース的なものではなくて、どちらかと言えばインディーよりな。たまにいなたいインディー的なギターが聴こえたりもしますが、むしろギターが表に出てくる曲はあまりなくて。ミドルテンポの曲でも実にメロディがくっきりとしていて、歌が真ん中にありながら、それを包むようにコーラスやキーボードといったカラフルな音が存在しているという様子。まれにクラムボンの郁子さんを思わせるまり子氏の歌声も曲に実にマッチ(曲によって柔らかくも冷たくも、表情が変わる)。不自然なくらい豪快なギターが炸裂しても、暑苦しくなく、逆にどこかクールなのは、ヴォーカルによるところも大きいのだと思います。そしてポップさの裏で、希望と背中合わせの不安を感じさせるような、突き抜けきらない歌詞。その冷めた佇まい、すんごく好きですね。

ポップな楽曲群は言うまでもなく、楽曲の配置、曲の多様さ、とにかくバランスがよくて、私はこれは名盤と言ってもいい。そう思っています。解散は実に残念。ちなみに林氏と藤田氏は、解散後オードリーシューズというバンドを結成しています(コチラ)。あ、風のミラクルってニック・ヘイワードですね。



Artist(s) … sphere
Title … Separation and Diffusion
Number
01.underwater color / 02.low-attitude flight / 03.The plastic heart/The rusted lip / 04.inside a doll
05.Niflheimer / 06.Glossy flower / 07.kill without fall / 08.The sky ties to ground
09.moon / 10.fragment

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sphere(スフィア)は、ZEPPET STOREにメジャーデビュー時まで在籍していた五味誠氏が中心になって結成されたバンド。メンバーは中條 有紀(Vo/Piano)、KIYOSHI(B)、石橋 竜太郎(Dr)、そして五味(Gt/Prog.)の4名。2004年に結成され、2007年に1stアルバム『Echo and Narcissus』をリリース、2009年に本作をリリース。

一言で言うと、シューゲイズ、ということになるのでしょう。まあ私特にシューゲイズファンと言うわけでもないので、ここが個性的ですね、とか胸張って言えないのがなんなんですけれど、ドリーミィな印象は薄いと思います、このsphereさんは。甘美と言うよりも、耽美的なイメージ。ヴォーカルの中條氏の声に依るところが大きいのかと。透明感、よりも、どこかソウルというか、エモーションを感じるのですよね、彼女の声。強い。決して音に埋もれるとか、後ろに引っ込んでいるとか、そういうものではない。だから、ウタモノ、という感覚がすごく強い。あとは彼女の弾く鍵盤の音も、バンドの世界観を形作るのに、一役買っていると思う、そして私の中の「耽美」というイメージを強くすることにも。メロディアスというよりも、ミニマルなフレーズを淡々と繰り返しているのだけれど、これがギターの壁と相俟って、「瓦解」のイメージを私の頭に浮かばせる。高層建築物のコンクリートの壁が、ポロポロと宙を舞いながら、落下していくような。滅びの美とでも言うような。デカダンス。耽美。

“inside a doll”などは、アンビエントな空気の中、ピアノの旋律が右側で転がり、やがてささやかなノイズが左側に侵入し、中條氏は語りとも歌ともつかぬ様子で、風景の一部と化した言葉をささやいている。アルバム中でも一際オブスキュア。アルバム通して聴くと、ちょっと似通った曲が多いかも思いますが、もっとそのようなアンビエントな空気感を出してくださると、私はすごい好きですね。きっと。あと速い曲も聴いてみたいかも。でもこのサウンド、透明感は保ちつつも、輪郭がフニャフニャしてなくて、いいですね。ガッチガチに硬いクリアの立方体、みたいなイメージもあります。外がどんなに騒がしくても、中はとってもひっそりと静かで、そこは時間がゆっくりと流れている。そんな感じ。




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