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2003.01.12−「Art-School in 渋谷CLUB QUATTRO」 Home

1月12日。日曜日。
アート・スクールは今日のライヴを皮切りに
名古屋・大阪・福岡・広島と、日本を回る。
初のワンマン・ライヴツアーだ。
今日は東京、渋谷はクアトロで。

この日の常磐線は
なんかチョットばかし混んでいて、
ホントは僕はボックス席が嫌いなんだけど
他に空いてないみたいだから仕様がなく
若気な女の子の斜め前に腰かけて、
暑すぎる車内にムカつきながら、一路上野へ向かった。
そして山手線を経由して渋谷へ・・・。

あ、今回は迷ってませんよ(笑)。
無事にクアトロへ辿り着きました。
でもチョット早く着きすぎたのか
だいぶ待たされるハメに・・・。

先に言っておきたいんですが、
この日の僕は一身上の都合で
いくのやめようかと思うくらいに
テンションが低くてですねー、
しかもこの後明らかになるある出来事が原因で
今回は長々したレポートは書けません。

でもまあ僕は、はるばる渋谷にやってきたわけで、
そして入場時、
会場へ入った僕の耳に聴こえてきたのは、
妙にマッチョなテイストのへヴィな音楽。
と思ったらこれはオーディオスレイヴのアルバムだ。多分。
この肉体的なサウンドはアート・スクールのイメージとは
似ても似つかないんだけど、いったい誰の選択だろうコレは。

グルーヴ感満点のへヴィサウンドに耳を傾けながら、
僕は落ち着ける場所を探して会場をウロチョロした。
多分、おそらくフロア前線はアート・スクールの楽曲に
身をゆだねて飛び跳ねる人たちが占領するはずだ。
というかその時点ですでにTシャツ姿の方たちが
ワラワラと集まり始めていた。
でもまだ全然余裕はあったから前列に食い込もうと思えば
行けたけど、僕はチョット止めておいた。
なぜって、やっぱテンション低かったから(笑)。
それにアート・スクールの曲で拳を振り上げる気にはあまりなれない。

結局僕はフロア中央よりやや後ろ、
ちょうどミキサー卓の右あたりに位置を決めた。
ステージもまあ全体が見えるし、
落ち着いてライヴを観賞できそうだったから。
そして僕はその位置で、
今日のロウ・テンションの原因に思いを馳せたりして
さらに気分がダウナーになったりしたりして(笑)。

開演予定時間の6時を5分くらいまわったころ、
客電がスゥッと暗くなった。会場が一気に闇になる。
さあ来るぞ来るぞ。
期待で前に詰め寄る観客。
そして流れ始めたBGMは・・・
艶っぽい弦楽器のつまびきから始まって・・・。
んんんん・・・ん?これはこれは・・・
なんとエイフェックス・ツインの「girl/boy song」!
ヒャーなんか不思議な感じだ。
ガイキチじみた乱れたビートに絡む弦楽器。
いつもこれ流してるのかな?いいセンスだ(笑)。

そんなアバンギャルドな音に乗って暗闇に現れたメンバー。
拍手です。歓声です。歓迎です。
木下さん(同い年だけど敬意を込めてさん付けで呼びます)は
もちろんステージ中央に立ち、
僕らから見てその右にギターの大山さん、
そして木下さんの左にはベースの日向さん、
そしてセンター後ろにはドラムスの櫻井さん。

メンバーはしばらくモタモタしていたけれど
girl/boy songが徐々にフェイドアウトしていくと
なんのあいさつもなく演奏が始まった――
鳴り響いたのはいきなりサッドマシーンのイントロ。
初めっから飛ばします。お客さんも早くもモッシュ気味。
や、カッコいいな。単純な曲構成だと思うんだけど
メロが分かりやすいのと静と動のクッキリした対比に体が反応する。
後半の“You're sad machine”という
歌詞を乗せて疾走するリズムは圧巻だ。

あ、どうでも良いことかもしれないけど、
メンバー皆さんは・・・なんか「普通」だ(当たり前か:笑)。
ベースの日向さんとドラムスの櫻井さんが体格良いのに対して
木下さんと大山さんが非常に小柄というか線が細いのが目立つ。
そして他3人が半袖なのに対して、
木下さんはボーダー柄と思しきシャツの上に
黒っぽいカーディガンといういでたち。
んーまったくもって普通の青年。
なんか縁側に腰掛けて
日本文学でも読んでそうな(←今時普通じゃないね:笑)。
それがギターを弾きながらマイクに向かった途端に
ある種の輝きを発することには驚かされる。

特にMC後に曲が始まったときに、ハッとする。
木下さんの話方はどこかモゴモゴしてて
あまり声のとおりがよろしくない。
それに声のトーンもそんなに高くないと思う。
自分で何か言うたびに、
照れくさそうに「ハハッ・・・」と小さく笑う。
初っぱなにも
「今日はお集まりいただいて・・・、あり、がとうございます」
妙な間で言葉を発していた。
それに「今日は楽しんで帰ってください・・・
一生懸命、やりますんで・・・ハハッ」

なんて、ものすごく普通の言葉だ。
ウワサに聞いてたような「危険」なイメージはどこにもない。
だけど曲が始まったとたん、あの声だ。あの歌い方。
ヒリヒリした声。感情的な叫び。
ときには身をのけぞらせて、大口を開け、悲鳴をあげるみたいに叫ぶ。

メンバーの皆さんも、演奏に入ると途端にアグレッシヴだ。
小柄で華奢な大山さんは曲になるとリズムに合わせて首を前後、
ときには左右に激しく動かしながら前傾姿勢でギターを弾きまくるし、
ベースの日向さんは別にギャップがどうこうと言うわけじゃないけど
櫻井さんと常に向かい合うような形でコンタクトを取っているのが
印象的で、「ため」の部分になると、客を煽るように
腕を頭の横で振り回すのが妙にカッコいい。ムードメーカーみたいだ。
ドラムスの桜井さんにしたって、アート・スクールの楽曲には
直線的なリズムが多いのに始終それを叩きっぱなしなのには恐れ入る。

彼らが普段ワンマンでどれほどの曲数を演奏しているのか知らないけれど、
この日は「多い」と感じている人が多かったように思う。
っていうか多いよやっぱ(笑)。多いって(笑)。
2時間弱ほとんどやりっぱなしじゃん(笑)。
「演奏された曲」より「演奏されなかった曲」を
数えた方が早いことは間違いないし。
最新アルバムの曲から過去の曲まで満遍なく披露した上で、
ライヴ中盤には新曲を2曲披露してもいる。
だから20曲以上は演奏していると思う。
そのことを考えるとリズム隊の2人はやっぱ凄いなあ。
ライヴ中や帰り際にもリズム隊の二人を心配する声が聞こえましたが。
体は大丈夫なんでしょか。しっかり癒して下さい。

ちなみに新曲はおそらくイービル
ミッシェル?(ミッシング?)というような
タイトルだった。どちらもアート・スクールらしい曲なのだけど、
僕としてはギターをぶちかましまくりの後者よりも
間の取り方が抜群にゾクゾクさせられる&カッコいい前者の方が好ましかった。
サビでは赤いライトをバックに、
おそらく「I FEEL EVIL!」と叫んでいたように思う。
「次作では悪魔を呼び出すようなものを作りたい」と言っていた木下さんらしい。

ライヴ全体通して聴いてみると、
初期の曲が意外に映えているという印象が強い。
意識的にローファイサウンドを作り上げた1stミニアルバム収録の
FIONA APPLE GIRLとか、NEGATIVE、それから斜陽なんて
見事な骨太チューンに生まれ変わっていて、驚かされた。
(ちなみに、やたらと骨太に変化していて、
すぐには何か分からない曲もあったりしました)
こういった曲はもう演奏されないんじゃないか、
あるいは演奏されるとしたらどうなっているんだろうと思っていたから、
1つの回答が与えられたことは嬉しくもあった。
特に斜陽は今回のハイライトの1曲だ。
骨太なサウンドとセンチなメロディが交錯する瞬間がたまらなく良かった。
もちろん他の曲でもそういった交錯はあるんだけれど、
アーなんて言うんだろう、
CDだと刺々しくもセンチメンタルな脆さを感じさせる楽曲たちも
ライヴではやたらとサウンドの骨太さばかりがめだって、
「脆さ」とか「はかなさ」がどっかに行ってしまってるものが多い。
それに木下さんの歌声がサウンドに負けることが多いのも痛い。
こちらまで聴こえてこないのだ。これは機材の具合によるものなのか。
それとも・・・?
それにアチコチで言われていることだけど
木下さんはあまり歌が上手いほうではない。
途中、危なっかしい箇所が何度かあった。
その辺からなんとなく「完成されていない」というイメージが
僕の頭の中をちらつく。発展途上?

ただ、ステージ上の4人の勢いというかエネルギーは凄まじい。
木下さんのワンマンバンドかと思ってたけど、どうやら違いそう。
4人全員が輝いてます。
これを若さとかいう言葉で片付けてよいのか分からないけれど、
かといって「4人の息があってる」とかそういう感じでもないんだけど・・・
なんというか4人が4人とも焦燥感を放射していると言うか。
「今しかねーんだよコンチキショウ!今やらないと!今だよ!」みたいな。
そういう苛立ちみたいな気持ちがステージ上から強烈に放射されてます。
だからかどうか色んな曲のアウトロが
ヤケクソ気味にカオティックだったりするし。
汚れた血のアウトロなんてCDよりさらに混沌としてて
「ギャギャギャギャッギャッ、ギャッ、
ギャッ、ギャッ、ギャッ、ギュワワーワーワン」て
やたらとけたたましい響きが印象的&カッコよかった。

でもきっとアート・スクールは、
まだまだこんなもんじゃないんでしょう。きっと。
って勝手に決めてますが(笑)。
きっといつか客に唐突に往復ビンタ食らわすみたいな、
そんなライヴをやってくれるはず。
「ウーワッ!」とか「ヤッベーよこれ!」みたいな、
そんな気持ちになってしまうライヴを。
この日は何となくサウンドの切ればかりが目立ってしまっていたけれど、
コレに加えて木下さんの世界観が
うまく表現されればもっともっとよいライヴになるはず。
ライヴはライヴでCDとは別物だから
これでもいいんだなんて、僕は思いたくないし。
ひょっとしたらこの日のライヴが調子悪かっただけとも考えられるけど(涙)。

あ、ちなみに、木下さんのMC、やっぱり変な箇所もありましたね(笑)。
序盤に「今日はみなさん、カップルで来たんですか?」
「カップルで来た人はいいっすねえ、うらやましいっすよ・・・」
と言ったと思ったら、中盤でまた、
「今日はみなさん、カップルで来たんですか・・・」って(笑)。
メンバー紹介では大山さんの出身地を「群馬市・・・だっけ」とか、
挙句の果てには櫻井さんを「ユタ州の先住民族で・・・年齢は38歳」とか。
最後には今年の抱負アンド音楽シーンを予見して、

「今年はリリースをたくさんしていこうと思いまして・・・
えー今年は日本の音楽シーンが大きく変化するんじゃないかと・・・
業界がしかけたようなバンドは消えていくんじゃないかと・・・
えー実感しているわけですよ・・・って、
なんでこんなこと言ってるかわかんねえハハッ」、


と、木下さんらしい意見で締めてくれました。
そしてMC中はどこかうつむき加減でありました。

というわけでもう分かるかと思うんですが、
演奏曲目が多すぎてですね、その流れに沿ってレポートすることが
管理人にはできないわけですよ。曲目すら把握できてません。
んーちと悔しい。
というわけでセットリストはありません。
知りたい方は自力でお調べください。
でもほとんどの曲が演奏されてましたので、
あまりセットリストにも意味はないかなと(笑)。
まさに新年1発目に相応しい、やる気のみなぎったライヴでした。

以上、ライヴ会場で購入した
アート・スクールのパーカーに身を包みながらの
管理人がお送りしました。

2003/01/13(最終修正日:2003/05/15)
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