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2004.12.10−「Last Days Of April in 原宿ASTRO HALL」 Home ◆Set Listへ

僕は夢でも見ていたのかもしれない。
そんな気がしてしまった。
残念なことにこれは悪い意味で、だ。
会場を出て、原宿は竹下通りを直進し、
原宿駅前の横断歩道の手前に来たとき、
僕はフト思ってしまった。
「アレ? 俺今ライヴ観てきたっけなあ?」

*** *** ***

はっきり言おう。
僕は今回の、彼らLast Days Of April(LDOA)のライヴには
不満足だった。不完全燃焼だった。
燃えきらない何かが残ってしまった。

もし誰もこういう主旨のレポートを書かないのなら、
ここで僕が書こう。
僕は少なくとも良い印象は持てなかったから。

今回1番気にしていたのは、
彼らが果たしてバンドとしてどうなのかという点だった。
演奏が拙いという評価を各所で目にしていたこともあり、
その点が1番気がかりだった。

まずはその演奏は置いておいて、
見た目が「バンド」然としていたかどうかだが、
サポートのギタリストさんとベーシストさんの在り方が
明らかに不自然で、バンドとしての視覚的まとまりを
悪いものにしているように思う。
なぜお二方はあんなに動かないのか。
僕らから見て、中央にいるカールの右側に、
2人はまるで添え物のようにチョコンと立っていた。
「わしらはサポートじゃけん。ここでひっそり仕事しますけんのう」
的な佇まいで黙々と楽器をプレイしているその姿。
伸びたクルーカットをワックスでもって
後ろへなでつけたような髪型のベーシストさんは、
ほぼ眼前を見据えたまま、そのちょっぴり突き出たお腹の下で
ベースをブリブリと弾く。腕以外はまるで微動だにしない。
ニューヨークヤンキースの帽子を被って、眼鏡をかけ、
うっすら無精ひげを生やしたチェックのシャツのギタリストさんは、
多少動きがあるものの、ほっとんどギターを手先でプレイしているだけ。
うーん……。むー・……。
えー、何か、…サポートの方ってこういうもんなんですか?
もっとアクションしてもいいと思うんだけどな。
動くなって言われているわけでもあるまいし。
なんであんなに動かないのか…拭えない違和感。

相変わらず細いカールは、新品と思しき赤黒のボーダーシャツに
黒っぽい細身のジーンズを履いていて、
ギターを弾きながらフラフラとよく動くのであるが、
なーんか自制しているような印象が拭えない。
もっと動きたいんだけどでも止めとくか、みたいな。
動きが何か中途半端で、
その様子が前述のサポートの2人の佇まいとあいまって、
視覚的にはバンドとしてのまとまりが
とても変てこなものになってしまっている印象。

逆に、カールの後ろにいるドラムのアンドレアス(けっこう男前)と
キーボードのサポートの方(カールの左:モジャモジャ頭に口髭のナイスガイ)、
それから中央のカール、この3人を視界に収めてバンドを眺めると、
何となく見た目にまとまりが良くなるのだから、余計始末が悪い。
書くとこがないんでここに書いておくけど、
キーボードさんの忙しくしながらも瞑想的なプレイは素敵でした。

次に演奏に関してだけれど、
正直僕は素人なので、演奏の良し悪しは良く分らないし、
各々の「演奏」に関して言えば、問題はなかったようにも思う。
初来日時はサポートのドラマーさんがグダグダだった、
というのは今や有名な話で(僕は観れていないが)、
今回は正規のドラマー、アンドレアスが来ているし、
そんなグダグダ感がなかった感じからして、
大きな問題はなかったのだと思う(きっと)。
ただ、これまた音の「バランス」が何か悪い印象。
特に3rdの『Angel youth』収録曲には、
色々な音がバランス良く詰め込まれている曲があったりする。
だから僕は、LDOAの演奏力不足を指摘する文章を読んだときに、
3rdの曲はライヴではやりにくいかもなあ、なんて思ったりしたのだ。
たとえば、僕の大好きな“Will the violins be playing?”という曲がある。
音源をヘッドフォンやイヤフォンで聴くと分るが、
あの曲は色んな音や、リフが使われている。
バックでピロピロ鳴りつづけるキーボードや、
2本のギターの細かいリフなどだ。
これをライヴでやってくれたのは非常に嬉しかったのだが、
印象としては、すべての音が大きすぎ。
(特にベースは、全編に渡って音がでかすぎに感じられた、僕には。)
どの楽器も「俺が俺が」的な鳴り方をするもんだから、
最終的にカールの声が埋もれてしまって聴こえやしない。
うーん、残念。
バランスがちと崩れただけであんなにガタガタに聴こえるとは、
音源がいかに絶妙なバランスで作られているかが分るというものだ。
同じ事は“Two hands and ten fingers”にも言えた。
楽器の音が大きすぎて、せっかくの歌声が聴こえない。
ということはメロディが聴こえないということで、
何の曲を歌っているのか、分りかねるということだ。
僕の立ち位置が悪いとかいう可能性もないではないが、
あまり関係ないような気もする。どうなんでしょう?
良い歌なのに、耳を傾けないとメロディが聴こえないとは、非常に残念。

「The next song is brand-new song from……」

という言葉に続いて
演奏された曲もまた同じ。メロディがつかみにくかった。
この辺の煮え切らなさが、バンドの演奏力のせいなのか、
それとも機材のせいなのかは、僕には断言できないのだけれど、
そういう場面があったのは事実だった。

そう、もちろん逆の印象をもたらしてくれた場面もあり、
僕を高揚感が支配した瞬間もあった。
多分“Too close”に続いて、
4曲目に演奏された“All will break”などはまさにそれ。
流星群のようなきらめくギター&キーボードのイントロ、
抑えたヴォーカルスタイルから一転し、
カールが声を張り上げて歌い上げる切ないメロディ―
(鳥肌もんでしたよこの瞬間)、
上昇するキーボードの音色と
畳みかけるようなギター&ドラムが混ざりあって迎える荘厳なアウトロ。
いいじゃないの。素晴らしいじゃないの。
僕の心に一気に火が点いた瞬間だった。
だけれども、その後に、上記のような不満をもたらす場面が
続いてしまったので、点いた火はどこへやら、消えてしまった。

しかし、5thアルバム『If you lose it』の楽曲たちは、
印象の良いものばかりだった。
やはりライヴ感のあるアルバム。ライヴ映えするものが多いようだ。
“It's on everything”“Been here all time”“If you”“Your anyone”“Live the end”、そして“Fast, so fast”
特に“Live the end”などは、
キーボードの醸し出す流麗な疾走感も見事に感じられたし、
良かったと思う。

しかーししかし(しかしを使いすぎだな)、
僕がもっとも納得いかないのはその演奏時間!
7時開演で8時ジャストに終わってるってどうですかコレ?
確かに1時間くらいしかプレイしないバンドもいますしね、
おかしくないってのは分りますよ、充分に分るんですが…ええ。
短いぃぃ、やっぱり。
腹八分どころか三分くらいですよ。まだまだ食える。
そんな、ハードコアじゃないんだからもちっとやって欲しいなあ。
5枚もアルバム出してるんだから(不満タラタラでスマンです)。
せっかくアンコール1発目の“Aspirins and alcohol”
あんなに盛り上がったのになあ、まさかそこで終わりとは…。
初来日時に演奏されたという“At your most beautiful”、聴きたかったあ…。
すげえ良かったらしいですからね…。キー悔しい。

カールがギターを肩から外し、

「Thank you very very much! Good night!」

と叫んで、胸の前で親指を突き出し、
ステージ袖へ消えていった後、
無常にも客電は点いてしまった。
もう、「なんだとー!?」という思いでいっぱいでした。

というように、
あまりにサックリ終わってしまったんで、
僕は夢でも見ていたのではないかと、
そんな気がしてしまったのだった。
もしかして、
自分はこれからライヴを観に行くのではないかと、
実はまだ観ていないんじゃないかと、
現実には帰り道なのに、
そんなことをちょっぴり疑ってしまったのだった。

激しく振られたカールの頭から抜け落ちた数本の髪が、
ステージ上をフワフワ舞いながら、ライトを浴びて輝く瞬間とか、
ギターを換える間、カールは必ずプラグを尻のポケットに
突っ込むもんだから、その分ジーンズが微妙にずり下がる瞬間とか、
本編終了後に、再登場を願う拍手に応えて、
ギター抱えたまま笑顔で、
そして小走りでステージに戻ってくるカールの姿とか、
あとはドラムのアンドレアスがセンスフィールドのTシャツを着ていたとか、
客入れのときに、ジョニー・キャッシュ(違うかな?)の歌う
ナイン・インチ・ネイルズ(NIN)の“Hurt”が流れていたりとか
(これはNINファンじゃなきゃどうでもいいね)、
印象に残っている風景はいくつもある。

しかし今回の1時間という演奏時間の中では、
僕はライヴに対してはあまり良い印象を持てなかったのだ。
もっと長くプレイしてくれていれば、
また印象は違うものになったろうと思う。
もちろん今回のライヴで(しかもこれは僕の感想なのだから)、
これでLDOAのすべてを知った気になるのは大間違いだ。
また、これで僕がLDOAのファンでなくなるということもない。
引き続き彼らの作品は聴きつづけるだろう。
しかし、もう一度ライヴを観たいかと問われれば、
そこには首を真っ直ぐ縦に振りかねている僕がいる。
それもまた事実。
……って、まあ迷っても結局行くんでしょうが僕は(笑)。

とにかく、僕の方に原因があるのかもしれないが、
結論としては、今回のライヴ、不完全燃焼。

残念。初来日時のインストアは素晴らしかったのに。


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- SET LIST -
01.It's On Everything
02.Been Here All Time
03.Too Close
04.All Will Break
05.Two Hands And Ten Fingers
06.Wind In Tree
07.If You
08.Your Anyone
09.Will The Violins Be Playing?
10.Live The End
11.Nothing's Found
12.Make Friends With Time Instrumental
13.Fast, So Fast
14.Aspirins And Alcohol
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2004/12/11
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