ミドリカワ書房 Home Music Official HP



Title … みんなのうた + α
Number
[DISC-1:CD みんなのうた + α]
01.〜乙女の1024色〜−02.顔2005 / 03.〜暖かいキヌカツギ〜−04.笑って俺について来い
05.〜サムシング・フレッシュ〜−06.だまって俺がついて行く / 07.〜Takanori Makes 朝帰り〜−
08.それぞれに真実がある / 09.〜同級生フォーエバ(“万引き is 窃盗”チューン)〜−10.馬鹿兄弟
11.〜深い夜に割り増す〜−12.保健室の先生 / 13.〜花粉からにょきにょき〜−14.雄と雌の日々
15.〜多摩濡らす低気圧〜−16.ユミコ / 17.〜茂木淳一のしればっくれ大名−P.N.カミキリムシ〜−
18.居るんだ / 19.〜NRH国際カンファレンス〜−20.チューをしよう / 21.〜シャイニーボーイ DX〜−
22.真っ赤な太陽 / 23.〜なまはげプロジェクト〜−24.私には星が見える
※21〜24はボーナストラック。

[DISC-2:DVD みんなのうた The Movie]
01.オープニング / 02.顔2005 / 03.居るんだ / 04.それぞれに真実がある / 05.雄と雌の日々
06.保健室の先生 / 07.笑って俺について来い / 08.だまって俺がついて行く / 09.ユミコ
10.チューをしよう / 11.馬鹿兄弟

Comment
ミドリカワ書房、メジャーデビューアルバム。2005年リリース。中身は、インディーズ時代に出した『みんなのうた』をメジャー仕様にしたもの。「+ α」として、ボーナストラックが収録されている他、初回限定で、なんと『みんなのうた』収録の10曲分のPVがDVDでついてくる! これはすごい。

ミドリカワ書房は、緑川伸一の1人ユニット。彼は1978年生まれで、僕と同い年だ。ということは、アートスクールの木下くんや、ストレイテナーのあの2人なんかとも、同い年(?)かな。なんか書けること沢山あるのだけれど、まずは本作、各曲の前に、「導入部ショートドラマ」なるものが用意されている、これは「スキージャンプ・ペア」でナレーターを務めた千葉レーダの茂木淳一(もぎ・じゅんいち)さんが、語りを担当している。これがねー、クスクス笑いが止まらない。そのあとに始まる各曲にひっかけたドラマを演じてくれていて、うっかり気を抜いて聞いていると分からないんだけど、じっくり聞くと、細かいところですんごく面白い。導入部の役割もちゃんと果してるし、お見事。1番好きなのは、“〜なまはげプロジェクト〜”。酔っ払いが留守電へのメッセージ入れてるってスタイルなんだけど、途中で時間がきて切れちゃうのね(笑)。2番目に好きなのは(長いけど書くよ)、“〜Takanori Makes 朝帰り〜”、タイトルも笑えるが、たたみかけるように放たれる「ンケチャアッッップ!」に笑いがもれてしまう。3番目に好きなのは(ってもういい?:笑)、“〜同級生フォーエバ(“万引き is 窃盗”チューン)〜”で、普通に結婚式でこんなスピーチありそうで、なんかいい。笑えつつもちょっとホロリ、みたいな空気。オチも上手くついてるし。あとは・・・、もうやめておこう。

で、そんなドラマの後に曲が始まるんだけど、スタイル自体はフォーキーでシンプルでPOP(それもかなり)。影響源がその辺のアーティストにあるということなんだろう、それはすぐにわかるんだけれど(余談を言えば、ほんっと初期のスネオヘアーに似たものも感じる)、独特なのはその歌詞世界だ。それぞれの歌詞にドラマがあるのだが、その歌詞は単独で読み物(orドラマ)としても成立するくらいに、「カチッ」としたものなのだ。それはたとえば、離婚する父親から娘へと送られる、苦くて暖かい言葉を綴った世界だったり、金はないけど新たな家族が増える、そのために夜居酒屋に働きに出る男の日常を綴った世界だったり、セックスアピール全開の保健室の先生の告白を綴った世界だったり、堕胎した子供が、実は自分の子じゃなかったかもしれないなあ、俺騙されたのかも、って、あとで悩む男の涼しげな開放感を綴った世界だったり。それらはもう完全に「ドラマ」で、決して明るくはないんだけどね(明るいというか、平和な曲もあるけれど)、緑川くんの歌い方が全然湿ってなくて、感情は入ってるんだけど、乾いた空気がフィクション性をすごく強く漂わせているから、それらは僕に、あくまで「うた」として響く。だから聴き終わったあとに、歌の世界を引きずって悶々とする、なんてことは、少なくとも僕は絶対にない。まさに大人のための「みんなのうた」。初めは、ショートドラマも邪魔かなあ、ミスマッチかなあなんて思ったのだけど(失礼)、これがあるせいで、作品のドラマ性がアップしているし、なんて言うかな、「作品」として統合されているというか、シリアスな空気をヒョイとかわしているイメージが楽曲と共通していることに気づいた(というか思った)。だからこのショートドラマがあるせいで、歌詞の持つ世界が薄まることはないし、むしろある意味で濃くなっていると言ってもいいかもしれない。たぶんこの飄々(ひょうひょう)テイスト、好き嫌い分かれるけど。

DVDは、10曲分のPVと書いたけれど、厳密には、丸まる1曲分の映像がついているものは数曲で、あとは1部分に映像をつけて縮尺したものになっている。独自の演出が加えられているのは、“雄と雌の日々”で、「俺の子供ではなかった」という部分をすべて、挿入される臨時ニュース内で説明してしまっている(笑:キャスターは茂木さん、レポーターは緑川くん)。なんてすごい。“顔2005”では緑川くん、女装してるしね。しかも違和感ないっていう(なんか個人的に鈴木蘭ヶ似だと思ったんだが)。それ以外のどの映像も、みな一癖あって、観る価値は大いにある。各曲で楽しむというよりも、このDVD1枚で1つの作品とみなした方が、より楽しめると思う。各曲の間に入る「みんなのうた!」というナレーションも何パターンもあって、(CDも含めて)こだわり具合、遊び心が尋常ではない。聴くほどに、観るほどに、ハマる。名作だー。



Title … リンゴガール
Number
01.リンゴガール / 02.彼は昔の彼ならず

Comment
ミドリカワ書房、初シングル。2006年リリース。以前から、ライヴでは演奏されていたそうで、音源化が待たれていたそうだ。まさに「待望」という言葉がよく似合う。

そしてこれがまた期待を裏切らないできなんです。ウクレレのポクポクした音色とアコーディオンみたいなキーボードの音色が、どこか郷愁を誘う。そしてミドリカワくんのデカい声が、のどかなメロディで歌うのは、アパートに住む売れない漫画家と、その隣に住む普通の女子大生のおりなす「お隣さん物語」である。歌詞はもちろん、例の形式である。彼女には彼氏がいて、「夜はロマンポルノ」であったりするのだが、実家から届いたリンゴを持ってきてくれた彼女を見ると、「あーなんてこった、こうして見ると最高に可愛いじゃないか」なんて、淡い恋心感じちゃったりして。めでたく僕が引越しをするときが来るのだが、そのときも彼女は支度を手伝ってくれる。「えー寂しいな」なんて言ってね。んでも何もなくて、電話番号交換して、それでバイバイ。あーなんか、アルよね。こんなこと。今すぐどうにかしたいってほど好きなわけじゃないんだけど、でもなんとなく好きで、向こうも「もしかして?」みたいなニュアンスで、でもよくハッキリしなくて、そのままサヨナラのときって、他とは違う胸の痛みがありますよね。ビタースウィート。その感覚が、ここにはあるのだと、僕は思うわけです。ホーッ。曲もPOPだし、いい曲です。ちなみに歌詞カードはマンガ家の本秀康さんが描かれてましてね、なんとマンガ形式の歌詞カードなんですな。しかも違和感なし。あの、どっか“のどか”でありつつも毒のある話を描かれる、 本さんのテイストが実に曲にマッチ。グッドです。

しかーし、ミドリカワ書房がこれで終わるわけがなかった! カップリングでは、数年後に「大先生」になった「僕」が、まったく昔の面影をなくしてしまった姿が描かれる。アシスタントをこき使い、自分は夜の町で遊び三昧、仕事場にリンゴガールから手紙が届くも、誰だか分からない。「どこかのホステスか?」なんて思う始末。ああ。手紙を読むも・・・「しゃらくせえ なんなんだ この女は 俺を誰だと思ってんだ」 なんつって、アシスタントたちに激(げき)を飛ばしたあと、また夜の街へ・・・。グワー。なんてブラックな。つーわけで、2曲で見事な1作品。ビタースウィートから、ビターでブラックな味まで、味わえます。ちなみに、このカップリングで、リンゴガールの声の部分を歌ってる「elly」とは、元SPEEDのイマイ・エリコ氏でござる。



Title … 家族ゲーム
Number
01.I am a mother / 02.豆電球の灯りの中で / 03.メシ喰えよ! / 04.許さない 忘れない
05.もも / 06.母さん

Comment
ミドリカワ書房、待望のミニアルバム。と言うか、初のミニアルバムでもあるわけですか。 そこはいいか。2006年リリース。全6曲収録。テーマはもちろん「家族」。ちなみにプロデューサは寺岡呼人氏。

“顔2005”“それぞれに真実がある”で、一気に階段を駆け上がったミドリカワくんであるけども、当然のことながら、ココでもあのスタイルは変わらない。歌詞は物語を形成している。M-1はミドリカワくんが大ファンであるハマショーの“I am a father”に影響されてというか、「ちょっとあんな感じの作ってみるか」という感じで作ってみた曲だそうだが、確かにハマショー系である。このあと“I am a father”を聴くと、「おお、あんな感じだ」と妙に合点がいく。歌詞の内容は、妊娠を告知された若い主婦(想像)が、夫にそれを報告するまでを描いた、ハッピーなソングである。冒頭のアップテンポなリズムとサックスの煌めき、そして“この頃 酸っぱい果物 やたら食べる 気づけば食べている”という歌詞でさっそくノックアウトである。POPなメロもたまらん。聴いたら間違いなく耳を持っていかれる。口ずさむ。初めてライヴで聴いたときから思っていたが、これは「いい曲」である。ホロリ。だから、途中で「これってテイク違うんだろぉなあ」という感じで、声の調子が変わることには目を瞑る。

しかしそんなハッピーな出だしから一転、走り出した足に、イタズラして足をひっかけて転ばせるように、次の曲から雰囲気が変化する。M-2はタイトルから予想がつくだろう、両親の「夜の営み」を目撃した子供の視点で描かれている。曲調がいまいち弾けないのと、子供の無邪気さのようなものが少ないので、どこか「不気味」な空気が漂っている。まあ実際に目撃したらそんなもんかな。パンツ一丁でトイレへ連れて行ってくれる「お父さん」の姿を熱唱するところは、クスリとくるが。M-3は過剰なダイエットをする娘を心配する母親と、大して気にしない父親を描いているが、これもやっぱりちょっとシリアスに過ぎるんだよなあ。途中で裏声飛び出したり、冬を思わせるシンセ音がしたり、どこか侘しい感じなのです。トゥーマッチなのですな。どうも今作は他の人の作品に影響されて作っているものが多いようだけど、そのせいかどうか、曲の感じが少し変わってきたのかもしれないなー。歌詞と曲が「歪」な(あるいはそれは、世間的には「真っ当」な)形でリンクしてしまっているような。

M-4もね、ドメスティックヴァイオレンスの歌ですよ。夫から逃げ出して、新幹線(だっけ?)に乗った妻の視点。本人も言うように、ヨシダ・タクロー節である。字余り的な感じが。“もし万が一 どっかで会ったなら どうにかして どうにかして 殺してやりたい”と結ばれるが、んー、重い。これまでにあった飄々とした雰囲気が薄れているからなあ、『みんなのうた』にあった、あのスッとかわすような感じは一体なんだったのだろう。茂木さんのテイストに依っていたのだろうか。そうかもしれない。あれは大事な要素だったようだな、僕にとっては。

続く“もも”は、ペットを飼いたいとねだる娘の話であるが、ここでようやく一息つく。「パパに聞いて」という母親と、「また俺かよ」と困惑する父親。古いレコードをかけているようなプチプチッとした音と、オルゴールのような音作りが、セピア色の映像を浮かばせる。娘が買ったブサイクな犬(パグ)は、結局家のアイドルになる・・・。ンフ。M-6は諸事情で歌詞を省いた状態で収録されている、すなわちインストであるが、その省かれた歌詞は死刑囚を扱ったものである。彼が母親に書いた最初で最後の手紙。「前から書いてみたかった」と本人は言うが、ソニーというメジャー会社にいるのが理由で、歌詞は抜かざるを得なかった・・・。考えてしまう部分と同時に、胸を打つとこもある、メイ(迷)曲なんだけどね。

とういわけで、本作、全体的に「暗い」のです。どんなアーティストでも(とはいえないが)、「あの作品は暗い・ディープ」ってヤツがあると思うんだけど、これもそんな位置付けになるかもしれない。僕としては、もっと肩の力抜いたやつ希望!! もっともっと「バカ」でいいと思います。冒頭の軽やかさで走ったていたら、間違いなく名盤でした。



 
Title … みんなのうた2
Number
[CD・みんなのうた2(DISC 1)]
01.〜行きたい、けど / 02.心 / 03.〜命の尊さ / 04.ドライブ / 05.〜僕のお爺ちゃん / 06.恍惚の人
07.〜大変なんだぞ / 08.OH! Gメン / 09.〜若手俳優の逆襲
10.遺言〜『日本以外全部沈没』のテーマ〜 11.〜男復活祭 / 12.恋に生きる人 / 13.〜俺だよ、俺
14.上京十年目、神にすがる / 15.〜必死に言い訳 / 16.昨日 / 17.〜粋じゃないね / 18.リンゴガール
19.〜度々伝言 / 20.母さん

[DVD・みんなのうた2 The Movie(DISC 2)]
01.OH! Gメン / 02.上京十年目、神にすがる / 03.リンゴガール / 04.恋に生きる人 / 05.昨日 / 06.
07.母さん / 08.ドライブ / 09.恍惚の人 / 10.遺言〜『日本以外全部沈没』のテーマ〜

Comment
ミドリカワ書房、待望の2ndアルバム。2007年リリース。前作『みんなのうた+α』と同じく、初回限定で、全収録曲のPVを収めたDVDがついてくる。つまり、これは絶対なんとしても、初回版を手にするべきで、それを逃すのはまったくもって、悲しいことですよ。

前アルバムが、各曲の前にショートドラマを導入するという、特殊な構造であり、しかもそれがウケてしまったのだから、さあ大変。次作となる本作で、果たしてどんな構造を見せるかと、ファンは期待していたところ。結果は、前アルバムを踏襲、ショートドラマは健在である。前作でナレーションを務めた茂木さんに代わって、今回はなんと劇団ひとりがその役を。ミドリカワ書房のライヴを見て、勝手に「憑依型芸人の匂い」を感じていた僕であるが、ここにきてその「憑依型芸人」劇団ひとりの起用、これはまさに適役と言っていいだろう(彼ひとり氏が深夜番組で見せた、数十分に渡る憑依後のアドリブ劇は、圧巻でした)。しかしながら、茂木さんは確かに声のお仕事が多いだろうから、聞き手も顔を意識せずにドラマを聞いていられたのだが、対してひとり氏は芸人であるし、いかんせん露出が多いから、聞いていると、どうしてもマイクの前でしゃべっている彼の顔が浮かんでしまって、素直にドラマを受け止められない自分がいる。それでも何回か聞いていると、ようやくドラマ本体が見えてくるのだが・・・とあまり長いのもアレなんで、僕が好きなのは、M-3M-9とだ。骨格はひとり氏が作ったわけではないようだが、僕の中にある彼のキャラにマッチしていて素直に笑える。志村けんのコントみたくなりかかるM-13も好き。

と、肝心の本編は、ダークな曲が多いとか言われるが、そんなこともないように思う…? きっとようやく日の目を見たM-4や、M-20がそんな言葉を呼んでいるのだろうし、確かにこれらの曲の歌詞が原因で、本作はインディーでの流通となっているようだ。でもそれを除けば、そんなダークなこたあないのだから、全体としてはダークじゃないだろう。M-14や16なんかは、心の中に入り込んで、彷徨い、答えを求め、けれど答えの出ないモヤモヤ感を漂わせているけれど、それはダークとは違うし。それと関係して言えば、曲作りに「物語」という制限をそんなにきつく設けなかったようだが、そのせいか、きっちり終わっていない(嫌な言い方をすれば、オチがない)曲が目に付く。そりゃあね、こんだけ独特の形で曲作って、しかもそこに全部オチを、なんて言ったら尋常じゃなく大変だと思いますが(しかしそう考えると、1stはすごかった!)。

そんな中でも好きなのは、まずダントツで“ドライブ”。本人は「昔に録った音で、歌が未熟」とかおっしゃるが、僕はこのあたりの歌い方が好きかもだなあ。次はこれもダントツで(笑)、“恍惚の人”。ライヴで聴いたときから予感していたけれど、これは曲調と声で騙されているにしろ、「いい曲」だ。騙されてるってのは、だって、認知症になっていく爺ちゃんの様子を表した歌詞で目が潤むって、なんか間違ってる気がするのだもの…。当事者ならまだしも、部外者がね、目潤ませたって…。でもいい曲! あとは“恋に生きる人”。僕はこの曲調、とくにイントロ、好きなんだな(BaseBallBearのアレとか、Going Under Groundのアレみたいな)。今までなかった感じだよね、これは。歌詞にしても、ちょっぴり抽象的だ。ひたすら繰り返される、「恋に生きる人にはなれない」っていう、切ない言葉も好き。思えば『みんなのうた』ってリニューアルして『みんなのうた+α』として出したから、新しい気がするが、実際だいぶ前の作品であるし、そこからこの2ndまでの間にいろいろ変わったんでしょうね。前にも書いたかもしらんけど、だんだん(ミドシンの大きな魅力でもある)曲と歌詞のギャップ具合が弱くなってる気がするのよね。曲と歌詞が素直に結びついちゃってる気が。特に後半。だもんで、1stと比べちゃうなら、1stの方が好きなんだけど(笑)。んー、歌詞の焦点が、より心の深い方へシフトした結果、そうならざるを得なかったんかなあ。“ドライブ”みたいな曲が、ガンガン出てきたら最強だと思うんですが(でも“ドライブ”も昔の曲ダネ!)。でもでも、やっぱりなぜか繰り返し聴いてしまう、さすがの中毒盤ではござんす。

おっとDVDのことを書き忘れたが、相変わらずオマケのレベルを通り越して、異様にクオリティが高いので、手にすることができる人は、必ず手にすべし! 初めの2曲でノックアウトされたね、ワシャ。



 
Title … みんなのうた3
Number
01.SAVA / 02.私の恋愛 / 03.〜お茶の水クライベイビー / 04.誰よりもあなたを / 05.サヨナラニッポン
06.〜毒が3倍[当社比] / 07.君と今夜こそ / 08.生きて死んで / 09.〜TDJ / 10.頑張るな
11.〜ナポリタン / 12.危険な二人 / 13.〜謝罪会見 - しっとりとつぶつぶとmix -
14.ごめんな / 15.おめえだよ / 16.〜続・謝罪会見 - デリケートハネムーンmix -
17.春よ来るな / 18.〜耳 for You

Comment
ミドリカワ書房、待望の3rdアルバム。2008年リリース。前作『みんなのうた2』、前々作『みんなのうた+α』では、全曲のPVをボーナスDVDに収録という形で、太っ腹な2枚組を提供してくれていましたが、今回はCDのみ。前作発表後からここまでオフィシャルなリリースはなく、ファンが手に出来た音源といえば、ライヴ会場で無料配布された「ごめんな」のみ。しかも08年春、メジャー契約していたソニーをまさかの(でもないか?)解雇! 再びインディーズに! その上、“笑って俺について来い”のPVに出演もしていたマネージャーの失踪(?)と、苦難続きのミドシン。このアルバムの発売も1回延期(といっても数ヶ月)されたことや、HPのミドリカワTVでのミドシン自身のコメントを考慮すると、ここに漕ぎ着けるまで、けっこうしんどかったのではないかと、思えます。私も活動を危ぶみました。

DVDはつかないものの、やはり曲前のショートドラマは健在で、今回はファンの要望を受けて、茂木淳一氏がカムバック! でも全曲にはドラマ付いてないのよな・・・あと何か以前よりパワーダウン気味な気がするのは私の気のせいかな。M-13とか16とかは好きなんですけどね・・・あとは、M-9のタクシーの運転手はやっぱり『みんなのうた+α』収録の“〜深い夜に割り増す〜”に出てくる運ちゃんなのかな・・・クスクス。でも最後のM-18は、どこにどうひっかかっているのかが、よく分かりません・・・と思ったら、「味噌煮」という言葉が出てくることから考えるに、これは冒頭の“SAVA”に繋がるんですねきっと。ということで、今作はループして聴くことを前提としてるのだ!と言ってみる。

そのM-1“SAVA”はアルバムリリースと前後して「電気書房」名義で発表されているものと同じだが、なぜエレクトロ路線なのかやっぱり腑に落ちない。別にフォーキーでもよいと思う。“私の恋愛”“誰よりもあなたを”(これはHPでPV公開。イカす)は、アルバム中でも特に好きですね―フォーキーでPOPな世界に少し滲み出す黒色。そしてミドシンの歌は映像と組み合わさることで、さらに魅力を増すと思う。あの飄々とした世界観が、POPでPOISONな映像とマッチするのだ。つーか児玉さんがやっぱすげえのか。

しかし本作にコメントする上で、重要なのは、雑誌でミドシン自身が語っていたように、音楽と小説(つまり物語)は別物だという意識が芽生えているということ。そこ(音楽と文学の融合)がウリなんじゃないか君は!とツッコミたくなるけど。ハッキリ言うけど別にして欲しくない。確かにもう『みんなのうた+α』にあったような、物語調はほとんどない。“おめえだよ”というまさかの子殺しの歌が1番物語的であり、そしてショッキング(死体を運ぶシーンとか出てきますからね・・・)。“母さん”のときには「あの日に僕がやったことは僕の意思じゃない」という言葉に自身から何の批判もなされてなかったが、今回は「僕じゃない」という言葉に対して、タイトルの“おめえだよ”があるわけで、そこはスッキリ。“頑張るな”も、昨今の応援ソングへのアンチ精神を直球で投げつけているようでありながら、これはこれで応援ソングになっているという、特殊な構造。そしてマッキーの“遠く遠く”を親父視点で歌ったかのような最終曲“春よ来るな”は、新鮮。

これはこれで受け止めるなら、確かに1回聴いてドカン!と来る曲はないかもだけど、何回も聴きたくなるアルバムである。曲調はレイドバックした雰囲気があるけれど、言葉と音の展開にフックがある、味がある。いいアルバム。「何か殻破りかかってる?」的な印象もあり、今後にも期待。『みんなのうた+α』と比較すると、むしろあのクオリティが異常だったのだと思えてきますが。あ、でも“笑顔だったなら”、入れて欲しかった! (※あとミステリー仕立てのアルバム構想はどうなったのかしら? 面白いアイデアだと思ったのですが)



■Music ▲このページのTopへ



welcome to my world.