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2007.01.28‐「“251 presents〜NIGHTSWIMMING VOL.9.5” in 下北沢 CLUB251」 Home

2007年1月28日、日曜日。
この日は、下北沢にある
CLUB251のイベントに行ってきた。

イベント名は「NIGHTSWIMMING」、
そのvol.9.5。
なぜ“9.5”なのかはよく分からんけど、
ま、その辺はいいか。

“NIGHTSWIMMING”と言えばR.E.M.。
別にR.E.M.のファンじゃないけど、
あの曲は好きだったりするので、
久々に聴こうと思ってCDを探すも、
見当たらないなー、どこかに潜り込んでるか。
ないとなると不思議なもので、
なんとか聴きたくなるのが人間てなもので・・・

と、頭から話が脱線したな。

*** *** ***

開場は18時半からで、
僕はわりとピッタリな具合で
251前に到着したのだが、
ここで下北ビギナーの僕には
大きい(かもしれない)ハプニング。
251やや手前の路上に、
どこかで見た人がいると思ったら、
あのバンドのアノ人だった。
人違いではない。
いや、僕が間違えるはずはない。
紺色の長袖Tシャツに黒っぽいジーンズ姿で、
フラリと路上に立っている。

その人は、Art-schoolの木下理樹。

うわっ。うぅわっわっ。おう。

数人の女性と話をしている。
ファン? 違うか? 誰と話をしているのだ。
あのくらいの時間にあそこを通った方は、
みんな気づいただろうか。
なんだろう。何の用だろうか
(と思ったが、彼のブログ「狂人日記」を見ると、
どうやらこの日は下北で、友人・仕事仲間の
モリカツ氏の結婚パーティがあったそうで、
おそらくはその関係で居合わせたのだろう)。
他に人がいなきゃ(んな状況ないか)、
僕も突っ込んだところであるが、
突っ込んだところで、
つまらない話しかできないだろう。
取材等で腐るほど話したことなんかを、
改めて根掘り葉掘り生で聞きたいのが僕の心情であるが、
そんなことこんな路上で聞くなんて、
もちろんアレなので、
僕はグッとこらえて我慢のコ・・・。

しかし、なんとも、
下北ってこういうトコがずるいよなあ・・・。
などと、通る人がみなオサレに見える、
雑然とした、決して自身が溶け込めない町並みを、
遠い目で眺める僕であった。

と、また話が脱線したな。

*** *** ***

さて――、
今回のイベントに出るのは三組のバンドさんだ。
登場順に挙げさせてもらうと、
まずはused knowledge(※彼らは後2008年11月、解散しました)、
次がsleepy.ab(スリーピ−)、
そして最後がalcana、である。

used knowledgeは、僕はまったく未知であったので、
ライヴ終了後に情報を拾ってみる――、
彼らは99年に大阪で結成、
これまでに2枚の音源を出しているようである。
メンバーはVo/Gにテラムラ・タケフミ氏、
Gにオカモト・ツヨシ氏、Bにタケガキ・モリヒロ氏。
06年頭に前ドラマーの方は脱退されたそうだが、
とすると、この日ドラムを叩いていたのは、
サポートの方だろうか、あるいは新しく加入した
パーマネントなメンバーの方になるのだろうか。
05年には251で初ワンマンを行っていて、
チケットは見事ソールドアウトしたらしい。
なるほど。

sleepy.abは、改めて説明するのも
アレですが――なんでって
別コンテンツ「Monthly Recommend」で、
以前に取り上げているからだ――、
北海道は札幌を中心に活動する4ピース。
僕はこの日、彼らを観に来たのである。

三組目のalcanaも、僕には未知のバンドさん。
経歴が全く分からないのだが、
メンバーはVo/Gの徳山拓磨氏、
Gに中村佳嗣氏、Drに白石功一氏、
Bはサポートかな?、中西智子氏。
メンバーさんの生年月日なんかを見ると、
活動歴が長くてもおかしくないのだが、
でも音源が何枚出てるとか分からないし、
得体の知れないバンドさんである。
あるいは紆余曲折を経て、
このalcanaにたどり着いたのか。

ということで、sleepy.ab以外は
ほとんど情報なし、という状態で
ライヴ会場に赴いた僕であった――

 used knowledge 

相変わらず251はゴミッとしている。
灰皿の置かれた小さなテーブルが
暗く狭いスペースに点在する様は、
ライヴハウスというよりも、
ライヴスペースという言葉が似合う。
酒飲んだりタバコ喫ったりしながら、
自分のペースで鑑賞、みたいなね。
でもそのせいか、
タバコの煙の密度がいかんせん濃いな・・・。

と、開演前の会場には、
Last Days of Aprilが
流れていたりして、アラ嬉しい。
もちろんそれだけじゃないけれど。

*** *** ***

フロア脇にある通路を通って、
バンドさんたちがステージに上がるのを
間近で見れるというのが、
このCLUB251の特色ということになるだろうか。

電灯の落ちた暗い空間を、
荘厳なシンセ音と共に
ステージに現れたのは、
Vo/Gのタケムラ氏以外の3人だ。
Drさんが帽子に開襟シャツってのが
印象に残っている。

最後に現われたタケムラ氏は、
少し長めの髪を、ザックリと後ろで結んでいる。
ステージ中央で軽くジャンプするようにして、
体を慣らすタケムラ氏。

と、曲が始まるのだが、
ドラムの音が硬くって、バチンバチン。
僕の好みの音である。
ギターを持たずにタケムラ氏は、
両足と上半身でリズムを取りながら、
マイクにコーラス(?)を入れる。
音源だとどういう形で入ってるのか
分からないのだけど、ライヴで
「アッ、アッ、アッ、アッ」という
コーラスをずっと入れ続けるのは
なかなかにエネルギーを使いそうだ。

タケムラ氏の声はどちらかといえば高音で、
そして実に伸びやかだった。パンチもある。
1曲目のメロディは極めてPOPだった。
爽やかといってもいいかもしれない
(蒼い光も、そんな印象に手伝っていた)。
特にサビの、視界が開けるような
展開具合、伸び具合が気持ちいいです。

けれどやはり1曲ではバンドの何たるかは
掴めないわけで、2曲目で
タケムラ氏がギター持って曲が始まると、
先とはまた違うんだけど、
どこか「風」なイメージが漂っていて、
ああ、割と「爽やか?」なんて思っていたら、
だんだんとディープになっていく。
ぜんぜん別空間が広がり始める。

3曲目以降はタケムラ氏はギターを手放す。
照明も蒼い色はどこかへ消えて、
赤い色が主役に踊り出る。と同時に、
黒い影も目に付き始める。
そして上がるリズムテンポ。

3曲目以降から分かり始めたのだけど、
ロックというよりも、
ダンスやソウルなんかの血が
流れているのかもしれない。
リズム、ビートが、
曲の肝になっている印象が極めて強いし、
Voがギターを手放して、体を動かしながら
歌うのにも、そんなイメージがある。
でもやっぱりそこに、アグレッシヴに動きまくる
オカモト氏のギターが、
ロックなエキスを注入していたりする。
そのオカモト氏、スピーカーに登りまくって、
ギターを弾きまくり、アジテートというわけでもないが、
フロアの熱量をあげていく。
加えて、ドラマーさんのドラミングがまたイカす。
スピードのあるダンサブルな細かいリズムを、
小気味よくロックに叩く姿が実にイカす。カッコいい。
しかも先に書いたように音がバチンバチンに硬いから、
非常にその音が耳について、体を撃ってくる。
オオオ。ヒートアップ。
冒頭のあの空気はどこかへ消えた。

そんな要素の中を、縦横に泳ぐのが、
タケムラ氏のヴォーカルであるが、
実はフロアの熱量を一番上げているのは、
タケムラ氏のアクションであろう。
曲、発声と一体化しているようなその体の動き。
声を伸ばすところでは、身をかがめた後に、
体をグィーンと伸ばしたり、
後ろ向きのポーズから、前を向いて声を張り上げたり。
すげーリズム早いのに、
シンバルクラッシュが入る僅かな瞬間に、
ピタッと動きを止めて、見事にキメて見せる。
リズムがフロアに乱射されているときは、
まるで音に打たれているかのように、
目を閉じて、頭、体を左右にスイングさせる。

これは熱い。
とってもエキサイティング。

中盤からもう曲の切れ目が分からないのね。
全部繋げて演奏されてるの。
そこもやっぱりリズムが肝になってるから、
そういった構成ができたりするんだろうな。
途中でたぶん洋楽をカヴァーしてたと思うんだけど、
無知な僕にはタイトルが出てこない。
曲は分かるんですけどねー。
あれは抜群にハイライトやね。よかった。
しかし後半の歌い上げはエネルギー使うだろうなあ。

というように、
POPからディープに潜り込み、
途中でカヴァーを挟み、
またディープになり、
最後にはまたPOPに戻る感じで、
彼らの演奏は終了した。

タケムラ氏はMC中に
バンド名を連呼していたけれど、
僕はしっかり覚えましたよ。
used knowledge。
リズムが肝になりすぎな感もございましたので、
そこにもっと、たとえば冒頭の曲みたいな、
POPなメロをガンガンに乗せてくださると、
また違った魅力が出てくるんだろうなあ、
なんて、思いました。

しかし熱いパフォーマンスでした。
お見事です。拍手。
機会があれば音源も是非聴いてみたいです。




◆◇◆ sleepy.ab ◆◇◆

スリーピーの前になると、
お客さんがドカッとステージ前に集まり始める。
小さな壁ができあがる。
やっぱり、しっかり人気があるバンドさんみたいだ。

そんなお客さんが見つめる前で、
メンバーが機材準備を始めるが、
スリーピーの布陣はちょっと変わっている。
Vo/Gの成山氏が、僕らから見て一番右端。
左端に、Bの田中氏、中央後方にDrの津波氏、
そして中央前面にGの山内氏がつくのである。
なんか変わってないですか。
津波さんは、恰幅がよろしくて、
口ヒゲ生やしたりなんかしてて、
僕が行ったことのある沖縄風居酒屋の
店員さんみたいだった(笑)。
対して、Bの田中さんは背が高くって、
キャップ被ってて、スマートな印象。
Gの山内氏は朴訥とした印象やね、
目にかかるくらいの前髪に、色白な肌で、
黙ってサラッと凄いことしそうな感じ。
バンドの要の成山氏は、写真で見るよりも、
近しい感じだったなあ。
普通にその辺にいそうな感じであり、
思ったよりも、「こちら側」の人だった。

誰の曲(自分たち?)かは分からないが、
アブストラクトな音響系の音が流れていたのだが、
機材準備終了と共に、成山氏が、
それを止める合図を挙手で送る。

彼らは次の3月に4枚目のアルバムを控えている。
タイトルは『fantasia』。
当然そこからの曲もやってくれるだろうと思ったが、
1曲目はまさにその中の頭の曲、“なんとなく”
成山氏のギター弾き語りから導入するのだが、
僕は彼の声について、たとえを誤ったなあ。
フィッシュマンズじゃないね、これは。
トクナガ・ヒデアキ氏だね。
あんなにハスキーじゃないけど、系統は同じ。
セクシーって言葉を使ってしまうと、
ちょっと僕の中では、ミスマッチなのだけど、
艶っぽいのと同時に、耳にひっかかる声です。


 「なんとなく悲しくて なんとなく楽しくて
 なんとなく生きている」



という、この日本に生きる僕らの、
満ち足りているのに、何か足りないと感じてしまう、
我がままだけど、けれど確実に心の奥に眠っている、
そんな気持ち、そんな状況を、
スロウで流麗なメロディに乗せて、歌っていく――
『palette』に収録されている、
“メロディ”に連なる、美しくて切ない楽曲だ。

演奏中、どうも山内氏の姿が見えないと思って、
首を伸ばして、小さな人垣の向こうを見ると、
彼はステージ中央で、イスに座ったままギターを演奏している。
あらまあ。ずうっと座ったまま。
イスにすわったままディストーションギター。
僕には新鮮です。そんな音の放ち方。

ドラムの音はused knowledgeに比べると、
ややこもった感じであり、
個人的にどうかなあと思っていたのだが、
そこはさすが、音にこだわりを感じさせる
バンドさんだけあって、楽曲には見事にマッチ。

数曲終わったところで、Bの田中氏が話し始める。
エキサイトしてるのか、緊張してるのか、
言葉が切れがちで、硬い印象である。
ニューアルバムと、それに伴うツアーの告知。
今日は新曲を5曲もやってくれるそうである。
あらまあ。アルバムの半分以上じゃないか。

成山氏は言葉を発しないので、
なんかアレか、イメージを大事にするのか、
と思いきや、途中から普通に話す。
今回のツアーで大阪に行った彼ら。


「で、普通にタコ焼きとか喰うじゃないですか」


間。


「2キロ増、ですよ」


オホッ。普通に世間話。
そういや頬からアゴにかけてのラインが、
写真で見るよりも丸みを帯びていたが、
関係あるのだろうか。
写真で見ると、逆三角な感じなんだけどね。

彼らは音源では、流麗な、メロのハッキリしたものから、
実験的とまではいかないけれど、
抽象的な音像のものまで、幅広く聞かせているので、
その辺の世界がライヴではどう再現されるのか、
そこにも興味があったわけであるが、
この日は、イベントということもあるんだろうか、
その広い世界は、僕には感じられなかった。
この日の2曲目にやったような、
割と激しい曲調になると、
どうしても成山氏の声が埋もれてくる。
もしかしたらそういう聞かせ方の曲かもしれないが、
でもなんとなく音に負けている感じがして、
僕はいただけなかった。インストだったらまた別だけど。
ライヴではやっぱり彼の声がしっかり聞こえる、
メロディアスな曲が映える。
中盤にあった“賛歌”もいい曲だった。


 「階段を上れば 景色は変わるから
 逃げたいなんて もう思わないよ」

(※若干記憶違いの可能性含む)


この、弱さも強さも内包してるんだけど、
でもどこかフラットでありつつ、
けれど、ときたま平手打ちのように、
ささやかな悩みに対する
ささやかな回答というか、
わずかな光を見せたりするという、
そういった歌詞世界がなんとも言えない。
「いい」んだけど、なんとも言えない。
クセになるとはこういうことか。
上手く表現できないのが、もどかしい。

中盤で話し始めた田中氏を、


 「相変わらず硬いね」


と茶化す成山氏。


 「か、硬いですかっ」


と誰にともなく言う田中氏。


たっぷり間を取って、


 「“硬いですかっ?”って」


と言って、笑う成山氏。
「それがすでに硬い」とそう言いたいのだろう。
フフ。
4thアルバムに伴う次のツアーでは、
都内での初ワンマンが決まっている彼ら。


 「ホント、お客さんいるのかあって、
 逆に来る方が心配になっちゃうよね、お客さんが。
 サクラでもいいから、来てください」



なーんて冗談をカマす成山氏だが、
都内近郊のファンは、ワンマンを
待ちに待ってるんじゃないですかねえ。
ええ、ええ。ねえ?

多くのバンドには「この1曲」というのがある。
もちろん「1曲」だけではないバンドも多多いる。
スリーピーの「この1曲」は、
“メロディ”じゃなかろうか。
僕はこの曲で彼らを知ったのだし、
そういう人は多いのではなかろうか。

その必殺ナンバーを演奏しないはずはない。
とっておきのヤツは、最後に放ってくれた。

これは・・・やっぱり・・・いい曲だなあ・・・。
メロディといい、詞といい、声といい、名曲だ。

途中で挿入される激しいディストーションギターも、
不思議なくらいに、歌の世界を壊していない。
終盤では、そのディストーションに導かれるように、
ヒートアップする演奏がカオスと化し、
その中で成山氏は、体を傾けて、大声で叫んでいた。
この感じだ。この渾身という感じが、
ここで初めて表に出てきたのだが
(もっと言えば萌芽は
“遊泳スローモーション”の辺りにある)、
これがもっと早く感じられれば、
このライヴはもっともっとよいものになっていただろう。
ライヴならではのダイナミクスが
ここまでの演奏には欠けていやしなかったか。
そうすると、音源聴いていればいいかなあ、
なんて思ってしまうもんだが、
この“メロディ”でその気持ちを吹っ飛ばしてくれた。

最後までギターの山内氏は
黒子的なポジションに徹していたわけだが、
HPを見れば、彼のフェイバリットには
シガーロスの名が挙げられていたりする。
もちろん厳密には違ってくるけれど、
スリーピーには、シガーロスなイメージがある。
もちろんメインで曲作ってるのは成山氏だが、
山内氏の世界観は少なからず
バンドの佇まいに影響を与えているだろう。
『palette』の最後には彼の作った
“ホログラム”という曲が入っているが、
これが実に僕好みのアンビエントな音なのだ。
もっとガンガン作ってくれないかしら、
なんて思ってしまうのだった。

話を戻すと、
もっと大きな会場で、ライティングや
演出に凝った形でのライヴも見てみたい。

といえば、会場限定で、
ライヴアルバムが販売されているのだが、
これには札幌で行われた、
アコースティックライヴの音源が収録されている。
ストリングス隊を招いてのライヴなんだけど、
これはこれで素晴らしいのだが、
やはり音源よりも会場で生で聴きたいね。
絶対すごいと思うんだな。
オーケストラって生で聴くとすごいじゃないですか。
たぶんそれに近しい感じがあると思うんだよなあ。
都内でも、アップルストアなんかで、
アコースティックセットのライヴが決定しているが、
大きな会場でやってくれたらなあ、
観に行ってみたい。



 alcana 

alcanaは、ヴィジュアルイメージが
どこかチグハグである。
Bの中西さんはワンレンで、スレンダーな体を
黒いファッションで包んでいて、
Gの中村さんは、長身で、顔を覆う
サラサラした明るめの茶色い髪を持ち、
Vネックのシャツを着ておられる。
どこか耽美的だなあと思ったら、
中村さんは、昔はいわゆる
ソレ系のバンドにいたようで、
今は他にも清春氏のサポートなんかを
しておられるようだ。なるほどなあ。
Vo/Gの徳山さんは、どこかARASHIの
マツジュンに似たクッキリした顔立ちで、
わりと長めの髪先に、パーマをかけておられる、
Tシャツ、ジーンズ着用で、ふっつうである。
そしてー、Drの白石さんは、
なんか濃ゆい顔で、メタルバンドのドラマーみたいな
モッサな髪型をなさっているので、
ふいに出オチ感が漂う(失礼です)。
しかも「aloha!」なんて書かれたTシャツ着てるし、
理由の分からない僕は、
なんでアロハやねん!と笑いを禁じえない。

っつうように、どこかヴィジュアルに
統一感がないのですなあー。
統一感なくてもどこかシックリ来る
バンドは来るものだが。
みなさん他にも活動の場所を持っているから、
そういった具合になるのかしらん。

*** *** ***

そんな印象も手伝ってしまったのか、
前半は僕はいまいち、ピンとこない。
別に演奏がアレだとか、そういうことでもない。
むしろ逆に演奏は確かなものであったし、
徳山さんのヴォーカルも独特であるし、
なんだろう、なんだろうと首をかしげる僕。

メロディにフックがないのか、
あるいはリズムがやや単調なのか、
その辺に理由がありそうだが、
しかし結局よくわからない。

話は変わるが、この日のイベント名は
“NIGHTSWIMMING”であるが、
そこから何をイメージするだろうか。
僕は浮遊感なのであるが、
この日の出演バンドさんは、
実際、みんな声に浮遊感がある。
used knowledgeもsleepy.abも、
このalcanaも。

それでも、alcanaの徳山さんの声は、
どこか金属的な冷たさというか、
硬さを持ちながらも、広がっていく声だ。
でもでも、やっぱり楽曲なのかなあ、
その宝も埋もれてしまっている気がする。
歌詞にしても、空とか海とか木とか、
なんか同じような単語を用いて、
同じイメージのことを歌っているように感じられて、
僕は困ってしまった。いまいちつかめない。

徳山さんは、ときおり何が原因か、
歌いながらフッと笑ったりするのだが、
ガッついて喋る人ではなかった。
「alcanaです」くらいしか言わない。
終わりの方にはライヴの告知をして、
「alcanaでした」と結ぶ。
でも寡黙というキャラクターでは
ないんだろうな、きっと。なんとなくそう思う。
「アレコレ言わんでもいいよね」的な、
自信の表れとでも言うか。そんな感じ。

と、どっちつかずな印象ばかりが強かったのだが、
最後におそらく1st mini album「hello hero」からの
曲を演奏してくれたと思うのだが、
こっから急に僕の胸のスイッチを押してくれた。
ギターのつま弾きから始まって、
そこに切れのある伸びやかなヴォーカルを乗せ、
途中のリズム展開もメリハリが利いてて、
演奏もがっつりカオティックですげーいいの。
なんだなんだー、もっと早く
こういう曲をやってくれればいいのに・・・。
なんて思っていたら、本編終了。

アンコールの登場時、


 「いやあ、すぅいませんねぇ・・・」


なんてギターをかつぎながら、
ニヤッと笑う徳山さん。


「エェ・・・CDが売ってるんで」


と彼が言ったら、ドラム白石さんが、


 「あちら、物販の方で」


ってフロア後方に手を伸ばす。


「アンケート入ってるんで」


とギターいじりながら徳山さんが言うと、


 「あちら、物販の方で」


って再び白石さん(笑)。


 「え? 入ってない?」


とスタッフから言われたらしい徳山さん。


「すいません」


ってギターいじったまま素直に謝る。
いいなあ、なんかこのテンション好きだわあ。

そして演奏されたアンコールも、
僕はじっくり聴くことが出来た。1曲だったが。

なんか本編最後から急にスイッチが入るという、
妙なテンションの上がり方をしてしまったせいで、
バンドさんの何たるかをつかめなかった感があるが、
楽しめる形で終われて、よかっただす。

でもやっぱり総じて、
楽曲はツボに入らなかった感があります・・・。
うーん。そんなの好みの問題だけど。

*** *** ***

ということで、ライヴ終了。
お疲れ様でした。

しっかりsleepy.abのライヴアルバムを
購入して、僕は早々と家路に着いた。
腹も減ってるし、都内じゃないし、
早く帰ろう、ってね。

階段を上がって地上に出て、
駅に向かってまっすぐ歩く。
夜に包まれた251手前の路上は、
肌寒く、人影もまばらである。
さっき見たアノ人も、もしや幻か。
いやいや、そんなアホな、
なんて思いながら歩いていると、
路肩に止めたバンの扉を開け放して、
そのスペースに座り込んで話している人物が・・・。

ふと目を向けると、
ああ、Art-schoolのギタリスト、
戸高くんじゃないか・・・。
普通に男前だなあ・・・。
髪、結構ナガイデスネ・・・。

・・・・・・。

しかし、ふーむ、
ホントに下北ってヤツは・・・。


2007/01/31(最終修正日:2009/08/03)
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