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□Title … SHEEPSLEEP
Number
01.highway / 02.青い月 / 03.E / 04.emore / 05.夕暮れオレンジ
06.森 / 07.days / 08.sheepsleep / 09.Noah

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ギターバンドブームなどという言葉が聞こえ始めたかもしれない2004年、確かに雑誌をめくれば毎月毎月新しいバンドさんの名前を目にしていた(る)気がします。そしてそんな状況についていけていない僕がいた(る)わけですが、そんな僕の耳にも、インパクトを与えてくださったのがこのSCARLET(スカーレット)。結成は2001年で、アルバム作成時のメンバーは、橋本洋介(はしもと・ようすけ:G,Vo)、林束紗(はやし・たばさ:B,Vo)、宗村つとむ(むねむら・つとむ:Dr)の3人。2004年6月に4曲入りEP「scarlet EP」でデビュー。そして本作が1stフルアルバム。2004年リリース。

初めに聴いたのは“青い月”で、そのときは「何かスマパン(スマッシング・パンプキンズ)みたいだなー」なんて漠然と思ったりもしたんです。それはなぜか、本作を聴いていくと、 どうにか説明がつけられそうなくらいには、原因がはっきりしてきました。まずメインヴォーカルの1人でもある橋本くんの歌い方、かなりクセをお持ちです。「ら」行の音に他の音が繋がる場合に、その間が明確に切れていない(故意かどうか分りませんが)。まるで2つの溶けた蝋(ろう)が混ざり合うように、トロッとした感じで繋がっている。そんな舌足らず(って表現も的確でないか)な歌い方がビリー・コーガンを連想させたというのが、まず1つ。そして2つ目は、曲の構造。スカーレットの曲は、1曲の中でテンポが大きく変化することが多い。 そしてテンポがダウンしたときに、ディレイがかかったりして、一気にサイケデリックな色が濃くなる。この辺の粘っこい感じが、スマパンの長尺な曲を彷彿とさせる。だから僕は“青い月”を聴いたときに、スマパンをイメージしたのだと思う。

なんて、他のバンドを引き合いに出してばかりいるのも失礼なので、スカーレットの何が良いかっていうと、曲がいいんですよ。歌詞はどことなく曖昧な感じで歌われているので(決して陽性ではないですが)、あまり重要視されていないのかなあとも思うのですが、曲は非常にPOPで、時にはディストーションギターを爆発させながら、時には独特の幻惑感・粘っこさをまき散らしながら、そしてどちらの場合においても透明感を保ちながら、甘美かつドリーミィなムードを絶やさない。また、もう1人のメインヴォーカル束紗さん(なぜか名前で呼ぶ:笑)と橋本くんのツインヴォーカルも気持ちよい。ハモったりしているわけではないし、マッチしてるとも思わないんだけれど、独特の絡み方をしていて印象的。聴いていると、ふと、初期のスーパーカーを思い出したりもした。

気になることを書かせてもらえるならば、音がキッチリしすぎているところ、ですか。スカーレットの曲は、このキッチリ感で気持ちよさを与えている部分も少なからずあると思う。ドラムやギターの絶妙な「間」だったり、テンポの急な変化だったり、そういった部分だ。音源ではこういった部分がすごくキッチリ作られているので、ライヴでどう演奏されるのかも気になったりした。まあなんだかんだ書いても、僕が本作を買った理由は、“sheepsleep”のPVで、ヘッドフォンをつけてフンフン乗りながら歌う束紗嬢に魅了されたからなのであった…。



□Title … STARLIGHT EP
Number
01.starfruits / 02.そら、キラ星 / 03.空ノ下 / 04.ニジムセカイ

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2005年リリースのEP。全4曲収録。今作発表後バンドは初のツアーとなる『左目でチラリ☆』をスタート。

M-1はこれまでになかったすごくシンプルなPOPナンバー。淡々としたリズムとまどろむようなギターに導かれて、束紗さんの透き通った声が“夢で見ていたような夜明け もう 今は ふたりきりにしておいて”と歌う。 んーこの感じ…いつ聴いてもスーパーカーを感じる(だからどうだってことはない)。束紗さんのあとに橋本くんの声も入ってくるのだが、そこで一気にホワホワ感が漂ってくる(笑)。リズムはあくまで脇役に徹しているのかと思いきや、「ストトットットトトッ」と唐突に流れを乱してアクセントをつけると同時にバンド感をも感じさせてくる。何か面白い。きっと淡々としたリズムのままでもいい曲だったと思うけど、この妙なアクセントが僕は気に入っている。ただ聴き流させやしないぜ!というような意思を感じる。というようにPOPだし、耳にひっかかるし、大好きな曲なのだがいかんせん短くないですか(笑)。ライヴでもこの尺のまま演奏されてましたが、もっとグルグルな感じにして長尺で演奏するのも面白いかもしれない…なんて思いました。

M-2は非常にライヴ映えのする、疾走感溢れるナンバー。別にロック!っていうほどにゴリゴリではないのだが、スカーレットにはあんまこういうストレートに突っ走る曲がまだないので、新鮮に感じた。M-4は…僕は密かに(そして勝手に)これがスカーレットの真骨頂だと思っている。淡いノスタルジアと少しの悲しみ、決してそれらをストレートに表現するわけではないが、ただボンヤリと聴き手に感じさせるのだ。そんなバンドそれこそ腐るほどいるんじゃねえの?って言われそうだが、スカーレットは何か違うのだ。うまく言えないのだけれど、七色の光を閉じ込めたガラス玉を眺めているような、綺麗で見惚れてしまうんだけど、どこか幻惑的…みたいな。途中でギターがギャーン!と入ってきてしまうのだが、これがなくても、前半の静かな世界観のままいってしまっても、良かったかなあなどと思う。しかし考えるとスカーレットは「似たバンド」があまり思いつかない、不思議な音楽性を持つバンドさんだ。

総じて見ると、1stアルバムよりずっと肩の力の抜けた感じだ。アチラにはガチガチに張りつめた緊張感、もしくは構えみたいなものが如実に感じられたのだが、こちらにはそれがない。 優しささえ漂わすほどに柔らかい印象がある。楽曲的にも1stアルバムには入っていなかったタイプの曲が多いように思う。まだまだこんなところでバンドのイメージを固定することを許さない、そんな作品だ。



Title … HEART ALBUM
Number
01.陽炎 / 02.starfruits / / 03.君がいた夏 / 04.ナナイロネイロ / 05.summer high
06.pray / 07.淡い季節 / 08.love song / 09.永遠いライト / 10.ニジムセカイ

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スカーレットの2ndアルバム。2005年リリース。この作品の前に、シングル「summer high」(2曲入り)をリリースしています。全10曲。前作に続き、全10曲ということにこだわりがあるのかどうか分りませんが、この潔さは大好きです。

M-1はいきなりアコースティックテイストで、これまでになかった柔らかな始まりで、楽曲のレンジが広がったことを感じさせる。夏の終わりを感じさせる淡い歌詞(シャイなのか何なのか、相変わらず全編通して橋本くんの歌詞は抽象的であるけれど)もGOOD。好きな曲です。そして橋本くんの歌い方は、あの独特さをさらに押し進めたものになったように思う。作品を重ねるにつれて、新たに自身の歌い方を身につける人もいるし、これまでの歌い方をさらに深化させる人もいるけれど、どうやら橋本くんは後者のようだ。

インタビュー等でも、「バンドを意識しながら楽曲を作れるようになった」という旨のことを言っていたが、なるほど、バンド感増大しています。むしろ前作はカチカチしすぎていて、バンド感がなかったようにも思うので、増大というよりも、獲得といった方が相応しいかもしれない。M-4や5,8のような激しい曲を聴くと、グルーヴの芽生えのようなものをビシビシ感じて、心にゾワゾワがやってきた。だからだと思うんだけど、中盤以降、少しマッタリし過ぎているように感じて(特にM-6,7,9)、僕はもっと突っ走って欲しかったなあ。それに確かに「バンド」としてのまとまりは出てきたけども、POPさで言えば前作の方が上だったように感じる・・・けど、どうかなあ。もっとガンガンPOPなものを出しても◎だと思うんだけれど、このヒネくれた感じがスカーレットぽくもあるのかな。一発聴いただけだと全然味わえないんだけれど、何回も聴くと、確実に味が出てくるもんだから、それはホント不思議。凄いなあと思う。味が出ないヤツはいくら聴いても出ないモンね。

歌詞は一見変わっていないように見えるけれど、M-8では“大好きさ”という言葉を使うなどタイトルどおりラブソングを書いちゃったりして、情景描写や思い出を羽ばたかせるだけではなくて、どこか未来を見た歌が現われてきている(ような気がする)ところに、変化が生まれてきているようにも思う。そして特筆すべきはベースの束紗さんの書いたM-3。ストレートにすんげえPOPで、大好きです。ギターポップなテイスト。彼女1人で書いた曲はこれ1つしか入っていないのだけれど、もっとガンガン入れればいいのに、なんて思うくらい、良い曲であった。歌詞はなんかちょっと、恥ずかしいんだけれど(笑)。



Title … SHORT FILMS
Contents
01.short films / 02.over / 03.world's end / 04.august / 05.break down
06.wish / 07.愛の逃避行

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2年ぶり?くらいにリリースされたミニアルバム。2ndアルバム発売後、事務所が変わったりと紆余曲折があったようですが、その間にもライヴは続けており、会場のみで音源も販売していた(それらはほとんど今作に収録されている)のですが、2007年末、正式に音源リリース。初回特典としてライヴ音源つき。

水面下と言っていいのかどうか、ガリガリ活動してなかった時期も僕は情報をフォローしていたわけですが、1番目立っていたのは、ベースの束沙嬢の課外活動。ベンジー氏のライヴ要員として、あっちこっち行ってましたね。その彼女が持ち込んだ要素なのかどうか、前よりもっと楽曲が荒い印象になりましたな。別に悪い意味でなく。だから、キラキラって言葉は、ここには似合わないと思いますよ(帯には書いてあるけど)。ジャケット写真にしても、彼女、なんとなく変わった気がするな。M-1、6、7の歌詞は彼女が書いているのだが、どことなく深みが増したような・・・というかハッピーではない印象の歌詞が多い、そしてモヤモヤ度が増したような(笑)。橋本くんの歌詞は相変わらず抽象的なんだけどね。なんとなくやはり陽の光をイメージさせる歌詞です。

曲を見ると、ミドルテンポの曲が多いのね。そしていつにも増して普通ていうかフラットていうか。どんなときでも聴ける感じなんですけど、スカーレットの曲って、その印象がすごく強い今作。昼でも夜でも、春夏秋冬、いつでも聴ける。M-4が僕は1番好きなのだけど、こういったバースト、疾走する曲がもっと欲しかったですなあ。作品として小粒がそろっている感じ、腹八分な感じはすごい好きなのですが、欲を言うと、もっとPOPだとなお良かったです。ライヴ音源では男前な歌唱を見せている束沙嬢がいて、「アレなんかスカーレットのイメージが・・・」って思ったりしてしまった(笑)。



Title … REFLECTION
Contents
01.reflect / 02.dance to the tune / 03.movie / 04.青く高く / 05.come on come on
06.AM 6:49 / 07.life / 08.clearly / 09.夢の続き / 10.未完成の物語 / 11.マボロシ

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前作から1年半ぶりの、4thアルバム。2009年リリース。前作発表後にまたレーベルを変わったようで、心機一転のリリースであるようです。

1年半の間、相変わらず表立った動きはありませんでしたが、でもライヴはこつこつと行ってくれておりました(私、行こうとして行けなかったの何回かありますね・・・)。その中で目だったのは、ギター・ボーカルの橋本くんのソロアコースティックライヴが数回行われたこと。今作に際してのインタビューを読むと、そこでの経験が、曲作りによい形でフィードバックされたようです。詰まっていたものがとれたような。

音を聴いて思うのは、これまでにないバンド感があるということ。録音方法を変えたので今までにあったキッチリ感がない、ということをインタビューで言ってましたが、そこからきているんでしょうね、この走ってる感触。そしてこの感覚(グルーヴと言っていいのかしら)がすごく、いい。一皮むけた、という言葉を使うには今後を追いかけなければいけませんが、でも使ってしまいたい。突き抜けている。そして、今作から束紗嬢がほぼメインボーカルを取っているのも特徴。「これが本来のスカーレットに近い形」と、インタビューで束紗嬢が言っていたが、このことが及ぼす影響はなんだろう。おそらく言葉の力が増している。橋本くんのボーカルと、そのスタイルは詞をぼかすところがあるので、聴き手の歌詞の受け取り方が抽象的になりがちである。変わって束紗嬢のスタイルは危なっかしくも、ストレートな感傷、切実さを持っている。もちろんその二つの交わりがスカーレットの世界なわけであるが、その交わりのバランスが極めてよい。それはたとえば直線に差し込んできて、特殊な硝子で以って拡散する日光のようなイメージ。あるいは冴えた頭で眺める蜃気楼のような。

そのボーカルのバランスに加えて、これまでにないバンド感、グルーヴが、歌詞の力を強めてもいる。特に出だしの2曲の歌詞が好きで。“思い出して 3年前はどうだった?こんな未来を想像した?君から僕を抜いたって足りないものは1個もない そういう僕はどうなんだ 欠けてる時でもキレイだって言ってくれ どうか言ってくれ”、“君から僕を抜いたって何も足りないものが見つからない 君から僕を照らしたってこと忘れてるのだろう”(“REFLECT”)。君からの想いに輝いた自分を欠けた月に例え、君を太陽に例える。君がいなければ輝けない自分(しかも欠けている)。僕なんかいなくても輝く君。「欠けてる時でも僕を照らしてくれ、キレイだって言ってくれ」という切実な想い。そのタイトルは“REFLECT”。スカーレットというバンドのイメージにもなる、月や太陽といった光を放つ星を用いて、人間関係(あるいは恋心)を巧みに描いてみせた。上手い!! “何て言うか本当は傷つくのが怖い 「幸せ」だとか「それ守る」とか「でも失くす」とか 忘れたいのに”(“Dance to the tune”)。“何て言うか”や“とか”の口語的な言葉遣いが呼び起こすのは、身近にある曖昧な気持ち。ハッキリとは言い切れないモヤモヤ。それらを抱えて、ただ突っ走れない自分を嘆く心。それをスピード感のあるメロディに乗せることで、湧き上がる焦燥感(加えてメインボーカルは束紗嬢)。堪らない気持ちになります。そしてM-10は、「物語」が未完成なのかと思いきや、逆で、「未完成」を歌った物語なんですね。してやられた。“見ていて このままじゃ 終われはしないんだ”。ずいぶんかっこいいこと、歌うなあ、なんて。ええ、しっかり見ていますとも。そういうことで、現時点で最高傑作であるのは、間違いない。



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