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2005.03.31−「SCARLET with APOGEE, BASEBALLBEAR, and Hi-5 in 下北沢 CLUB 251」 Home

僕にとっては初めての下北沢だった。
そしておそらく(ってのも変な言い方ですが)
初めてのライヴハウスらしいライヴハウス。
2005年3月31日。
この日はスカーレットにとって初のツアー、
「左目でチラリ☆」ツアーの最終日だった。
場所は下北沢のCLUB251。
下北沢駅南口を出てしばらく直進(素敵な商店街)、
ファミリーマートの横にある
ビルの階段(バンドのシールやポスターベタベタ)を下り、
扉をくぐれば――

*** *** ***

低い天井に暗い照明、黒い壁、
鉄骨でできた壁際の背もたれ(座るのも可能)、
灰皿が置かれただけの小さなテーブル数脚、
そしてフロアとさしたるくぎりのないステージ。

なるほどなあ。
僕のライヴハウスのイメージそのまんまです。

開演を待つ間、ステージ前に下ろされたスクリーンには、
なぜかトラヴィスの色んなプロモが延々と流されている。
かかってる曲は違うのだが。

僕はフラン・ヒーリィの髪型の変遷を
ぼんやりと頭の隅で追いながら、
今日の登場メンバーに思いを泳がせる。

そう、この日は3組のゲストが出演する。
もちろん観たいのはスカーレットなわけだが、
このゲストの方々も見逃せない。

まずはAPOGEE(アポジー)、
次にBASEBALLBEAR(ベースボールベアー)、
そしてHi-5(ハイ・ファイヴ)。
このお三方。

アポジーさんについては僕は知識不足だったので
事前にネットで調べてきたのだが、
インディーズで2004年9月にデビューしていて、
おそらく現時点でまだマキシシングル「Preview(プレビュー)」、
この1枚しかリリースはされていない。
メンバーは永野亮さん(Vo/G)、間野航さん(Dr)、
大城嘉彦さん(Key)、内垣洋祐さん(B/Cho)の4人。

ベースボールベアーは、ジワリジワリと、
確実に人気を高めてきている若手ギターロックバンドだ。
とは言っても僕は音源は持っておらず、
音に関しては色々いえないのだが、
どちらかといえば疾走系なのは知っている。
そしてこの時点で平均年齢19.5歳(!)というのも知っている。
メンバーは小出祐介(Vo/G)、関根史織(B)、
湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr)の4人。
この日(3月31日)より二週間ほど前の3月16日に、
1stフルアルバム「HIGH COLOR TIMES(ハイカラタイムス)」をリリースしている。

Hi-5さんは…言うまでもないでしょう。
2000年デビューのダンサブル&エレクトロ、ロックかつPOPな3人組。
メンバーは、リーダーのタケダ・ナオキさん(Synth/Vo)、
ノグチ・テッペイさん(G[以前はB担当])、
そしてオダ・タカユキさん(Dr)の3人。
作品を沢山出されてるので、もっと活動歴長いかと思ってたんですが、
デビューしてからまだ5年なんですねー。意外でした。

と、開演前にここまで僕が実際に考えたわけではないが、
各バンドがどんな演奏を聴かせて、見せてくれるのかと、
僕は興味津々だった。

いつもなら会場をグルッと見回して観察する僕であるが、
この日はなぜかそれはしなかった。
ぼんやり待ちつづけて、
開演時間の7時を少し回った頃に、1番手のアポジーさん登場。
フロア横の狭い通路を歩いて、ステージにメンバーがぞろぞろ上る。

*** *** ***

メンバー全員パッと見ワイルドかと思いきや、
キーボードの大城さんだけ妙に中性的。
赤のタートルネックにブルージーンズで、
セミロングより少し短い髪を額の上で分けている。
知的なイメージ、そして60年代チックな匂いがしました。
あと印象的だったのはベースの内垣さん。
ノーネクタイのスーツ姿(シャツはもちろん柄物です)に、
まあるい坊主頭、さらに口髭をポチポチ生やしたそのルックス。
強面です。木村祐一さんに近しいものを想像してください(笑)。
(とは言っても、喋ってるところは全然和やかな方でしたよ。)

さしたるコメントもないままに、アポジーの演奏は開始された。
事前情報では、「ファンキー」という言葉を聞いていたので、
勝手にそんな音楽を想像していたのだが、
メチャメチャロック。
ライヴでは、サポートにキーボードをもう1人加えた
5人編成となっており、
ソリッドなギターにファンキーな(ここがファンキー)キーボード、
そして大城さんが操るシンセ音が絶妙なスパイスとなって、
予想外にカラフルでロックな演奏が繰り広げられた。
どの曲にも必ず演奏の聴かせどころがあって、
ここが抜群にカッコいい。
間野さんのドラムがまた熱くて、何か頭の奥がジンジンした。
ときおり笑顔を交えながら、
楽しそうに演奏するみなさんの雰囲気も好感持てました。

永野さんはときおり両手でマイクを抱え込んで歌に専念する。
そのハイトーンヴォイスが冴え渡ったのが
おそらくラストから2曲目の(これまたおそらく)“Slowmotion”
ミドルテンポの浮遊感漂う楽曲の中を泳ぐ永野さんの声に、僕は聴き入った。

MCはまだ慣れていないのか、それともこういうスタイルなのか、
次回ライヴの告知や、近況報告にとどまり(5月からレコーディングだそうだ)、
あっという間にやってきたラストナンバー“Ghost Song”
僕、アポジーさんの曲は知らないつもりだったんですが、
すいません、この曲だけ知ってました(笑)。ラジオで聴いたのかなー。
ライヴの方が音源よりも全然アグレッシヴでカッコよかったな。
サビでギターから手を離し、
腕を振ってリズムをとりながら歌う永野さんが印象的。
メロディもPOPで耳馴染みいいし、
どこか和を感じさせる艶があって、よい曲だ。
今のところ代表曲ということになるのだろうか。

しかし、今回のライヴではまだ見せてくれていない、
もっと色んな引出しをもっていそうな、
そしてその引出しを中身を見てみたい、
そんな気がする要チェックなアポジーさんでした。
(要するに、もっと色んな楽曲聴いてみたいです。)
拍手。

*** *** ***

アポジー演奏後には再びスクリーンが下りてきて、
トラヴィスのプロモが流される。
自分たちで機材の片づけをしたアポジーさんに換わって、
スクリーンの後ろで準備を始めたのはベースボールベア。
ちらちらメンバーが見えるが、うーん…わけえ(若い)なあ(笑)。
見た目がもう若い。高校とかに普通にいそうだもんなあ。
実際の年齢としては大学生くらいなわけだが。
ベースの関根ちゃんなんか全然化粧っ気ないし、
スニーカーのかかと踏んでるしなあ(しかしこれには理由があった)、
ギターの湯浅くんとか絶対クラスに1人はこんな雰囲気のヤツいたなあとか、
ギター・ヴォーカルの小出くんは、髪型がアートスクールの木下くんみたいで、
クラーク・ケントみたいな黒ぶち眼鏡かけてて、なんか文系な佇まいだなあとか、
別にどうでもいいところにばかり目がいってしまう。

準備をした後、メンバーは1度引き、
スクリーンがあがると、
僕の知らない入場曲(UKっぽい)をかけて再び登場。
湯浅くんが率先して拍手をし、会場に拍手を促す。
定位置についたメンバーを見ると、
なんと関根ちゃん裸足!
裸足で歌う女性シンガーさんはよくいますが、
裸足の女性ベーシストって珍しくないですか。
足の裏でリズム取るから、
裸足じゃないとそれが伝わりにくいのかなとか、
単に邪魔くさいのかなとか、足に汗かくのが嫌なのかなとか、
色々考えたが、最終的には「面白いなあ」に至る。
どうせすぐ脱ぐから、彼女はスニーカーのかかとを踏んでいたのだ。
眼鏡を外した小出くんは、切れ長の目が印象的だ。
彼には何かとポロシャツという言葉がついて回るが(笑)、
この日もポロシャツ(紺色ね)、下はチノパンかなー。


「ベースボールベアですっ」

みたいな挨拶に続いて、演奏開始。
最新アルバム『ハイカラタイムス』より、“極彩色イマジネイション”
演奏はかなり鋭角的で、
音源から感じていたどこかスカした空気はまるでない。
若いのに(っていうと失礼だけど)演奏しっかりしてます。
足の裏でペッタペッタとリズムを取りながら
淡々とベースを弾く関根ちゃんに対して、
ギターの湯浅くんは動く動く、
あごのラインくらいまで伸びたワンレンの髪(パーマかかってる?)が、
右へ左へステップを踏むごとに面白いくらいに揺れる。
小出くんの声はやっぱり二十歳に聴こえない。
音源で聴くと、セクシーさえ漂わすような声&歌い方なのだが、
ライヴになると、やっぱ熱い。
ギターを小刻みに弾きながら、
顔を歪めて紅潮させ、声をあげるその姿、
初期衝動満載な感じです。

しかし何と言うか、
「演奏したい」、「歌いたい」という欲求は
ものすごいビリビリ伝わってくるのだが、
「聴かせたい」、「届けたい」という方向には
まだあまり気が回っていない印象も受ける。

しかし聞けば堀之内くんが先日まで
「地味に盲腸で入院していた」(by 小出)そうで、
この日は2ヶ月ぶりのライヴだというではないか。
4人で合わせるのも久しぶりで、
「今日は8時起きで11時から(?)
練習してました」
(by 小出)だそうだ。

MC中、言葉に妙に間が空いたりと、
「グダグダな感じ」(by 小出)が漂っていたのは、
「久々のライヴで、息があがってしまいまして」(by 小出)、
といった理由があるようだ。
だから先に書いた僕の印象も、
そこに帰因しているのかもしれない。

小出くんはどこか遠くを見ながら、
語彙が豊富なせいなんだろうか、
言葉を選びながら喋っている印象を受けた。

「あっ」

と言った後、急に、今日のライヴに呼んでくれた
スカーレットに礼を言ったりして、
話しているところ目の前で見ても、
人柄がなかなか把握できない、不思議な空気を持っている。

「カッコイイことではないんですが」(by 小出)と言った後に、
忘れずに1stアルバムの宣伝を行い、
サラッと次の演奏曲を告げる――

「彼氏彼女の関係っ」

堀之内くんのダンサブルなドラムに
湯浅くんのチュクチュクしたギターが絡む。
全部が全部ではないんだろうけれど、
ベースボールベアーのリズムはこんな感じのが多いように思う。
乗りやすいビートだ。
“彼氏彼女の関係”は僕の好きな曲なのだけれど、
音源を持っていないので、歌詞をよく知らない。
だから歌詞を聴きたかったのであるが、
これがいまいち聴こえてこないのが、ちょっと残念だった。

音はソリッドでカッコいいし、
メロディのPOPさだって抜群で、
聴いたらすぐ口ずさめるレベルなのだが、
ライヴは少し力入りすぎで損をしているような気もする。
勢いはそのままに、もっと丁寧に聴かせてくれるようになったら、
もっともっと良いライヴになるように思う。
と、別に僕がここでアレコレ言っても言わなくても、
つまり僕の言葉は関係なく、
間違いなくベースボールベアーは人気出ていくでしょう!
なんつっても曲がPOPですし。
楽曲が比較対象になる先輩バンドは今のシーンには沢山いるかもしれないけれど、
まだまだ若いしこれからグングン伸びていって欲しいです。
若さ溢れる熱いライヴでした。拍手。

あ、どこだか忘れたけれど、
曲間に関根ちゃんが水を飲もうとしたのに、
他のメンバーが次の曲に入っちゃったもんだから、
彼女が水を飲めずにペットボトルを床に戻した光景を僕は覚えている(笑)。
みんな気にしてあげてくださいよ!

*** *** ***

3番手は、きましたHi-5!
僕は割りと前方にいて、
ここまでは、周りの人影はそれほど多くなく、
むしろ少し人が少ないくらいに思っていたのだが、
Hi-5の機材準備が始まる頃には、
いつの間にか僕の周りの客数が明らかに増えていた。
これぞリアルな人気バロメータ。さすがです。

ステージに準備された楽器といえば、
ギターとドラムとシンセサイザー。少ない。
シンセの横にはノートパソコンが置いてあるが、
これがいくつもの楽器の役割を果すのであろう。

お客さんが増えてきたことで、僕の体内の熱もあがる。
いったいHi-5さんはどんなライヴをやるのだろう。
知らず、鼓動が速くなる。ドキドキする。

登場したメンバー3人は、これまでの2組とは何か違う。
僕が勝手にそう見ているだけかもしれないが、
慣れた空気とでも言おうか、ライヴを楽しもうとする余裕と言おうか、
緊張感の中にどこかFunな空気を滲ませている。
ドラムのオダさんはブラウン地のHi-5Tシャツ着用で、
袖に余裕をなくさせる程の屈強な二の腕が印象的だ。
ギターのノグチさんは短い髪にキャップを被って、
アゴに無精ヒゲ生やした普通の兄ちゃん。
なお、笑顔がハートウォーミング(なんじゃこの表現)。
タケダさんは2人と違ってゴツさがない。
顔もシュッとしてるし、好青年な印象。

PCから鳴らされてると思しき、
メロウなシンセ音でライヴがスタートする…、
そしてキーボード前に立つタケダさんの前には2本のマイク。
タケダさんは腰の後ろで両手を組むと、
軽く体を前に倒し、マイクに向かって歌い始める。

これは僕も知っている曲、たぶん“TOKYO LIFE”だ。
シンセ音とヴォーカルだけの冒頭から、
ドラムとギター(あとベースもね)が入ると、
一気にフロアが動き始める。
ドラムのオダさんはヘッドフォン着用だが、
一体何の音を拾っているのだろうか。
笑顔を浮かべ、恍惚とも取れる表情(目、閉じてないですか?)で、
キレイなフォームでドラムを叩くその姿、
均整のとれた彫像のごとき。かっこいい。

タケダさんもキーボードを弾き始めると、
その熱の入り方が一段とよく分る。
喉の筋がビンビンに浮くほど声を張り上げながら、
指がしなるような形で以って、鍵盤を叩いていく。
時おりキーボードから手を離し、
胸元をつかんで、目を閉じて歌う。
またあるいは、キーボードから離れ、
頭と足でリズムに乗って、踊りだす。
汗を流しながら、歌い、踊る。
熱い。真摯。

2曲目の終わり際、タケダさんが大きな声で、
フロアに向けて言葉を発する、
顔は汗だく笑顔、すごく楽しそうだ――

「2曲で、2曲であったまったかなあ!?」

そして、

「踊る準備は…、できたかなあぁ!?」

フロアから歓声があがる。
流れるキラキラシンセ音。
これまた僕の知っている曲だ!
一際POPなあの曲だ!
“DISCO-SOUND-FEEDBACK-OK”
うまい!盛り上げ方が!組み立て方が!
さすがとしか言いようがない。
キラキラでHAPPYな空気が会場を支配する。
みんなリズムに乗って体を動かすか、
さもなくば笑顔か、
またあるいはそれらの両方か、
そんな状態にならずにはいられない。

MCに入るとタケダさんの訛りが印象的。
意識せずに出てくるものなのだろうか。
フロアの後ろの方の人たちにも、
Hi-5のよさがちょっとでも伝わるように

「僕らは歌い、踊るわけですよ」

とタケダさん。

「もちろん、ただ歌い踊るわけではなくてですね…、
そりゃあもう、高校球児のごとく精一杯、
歌い、踊るわけですよ、ええ」


と息を継ぎながら言う。
ユーモアを交えながらも、真摯さが伝わる発言じゃないですかコレは。

そして、3日間ツアーに同行させてもらったスカーレットに
礼を言い、再び熱い演奏を続ける。
ラストナンバーは印象的だった。
POPな曲ばかりで組み立ててきたから、
その流れで締めるのかと思ったら、
全然アグレッシヴなナンバーを演奏してくれた。
破壊的なギターに跳ね回るドラム。
まるで呪文のように唱えられ歌われる言葉とメロディ。
圧巻のプレイでした
(オダさんは途中でドラムスティック折れてましたね。
もちろんすぐ取り替えました)。
上り詰めてって、終わると見せかけて、ブレイクを繰り返す、
ラストの引っぱり方もうまい。
最後の最後には、オダさんは立ってドラム叩き始めるし、
ノグチさんは立ちヒザ状態になるし、
タケダさんはキーボードを台からはみ出させて、
本体まるごと台に押し付けるように鍵盤を、叩く叩く。

演奏が終了し、
拍手を浴びながら3人がステージから去った後には、
PCからだろうか、シンセ音がリフレインされていた。
数秒後、小粋なエフェクトと共にそのリフレインが止まると、
そこで本当にHi-5の演奏は完結した。

かっこいい。圧倒されました。
これでHi-5のこと嫌いになる人がいたら、
その人は音楽嫌いなんじゃないかって思いたくなるほど、
素敵なライヴでした。
演奏前にお客さんが増え始めたのも納得。拍手。

*** *** ***

Hi-5のライヴがあまりに素敵だったので、
トリを務めるスカーレットはやりにくかったりしないのだろうかとか、
余計な心配をしていた僕ですが、
楽器の準備を始めたメンバーを見ると、
やはり期待の方が大きくなった。

ベースの束紗嬢は黒で統一されたファッション。
しかしあのベースはやたらキラキラしてますなー(笑)。
色んな飾りに混じってスピッツステッカーが貼ってあったりして、
スピッツ好きなのが伝わってきます。

ドラムの宗村くんはライヴでもニット帽被るんだなあ。
しかも何か少し大きめではないですかアレは(そんなことないかな:笑)。
そしてドラマーさんにしては細い印象を受ける。

橋本くんは…いやあ確かに坊主頭だった。
坊主としか言いようがない。
美容室で話し掛けられるのが嫌だからという理由は
すごくよく分りますが、もちっと長い方が似合う気もいたします。
そして黒ぶち眼鏡にTシャツ・ジーンズというその姿、
ああ、醸し出す空気が…なんて…素朴なんだろう橋本くん。
いつかこの空気も消えてしまうのかなあなんて思い、
1人勝手に寂しくなる僕。

3人が定位置についたところで、
ついにスカーレットのライヴが幕開け。
1曲目にやってきたのは、“E”
静かなイントロに続いて爆発する
音源以上に硬質で金属的なギター。
橋本くんのヴォーカルが入り始めると、
やっぱその異質さが初めは耳につく。
自然とああいう歌い方になるのか、
それとも自身で目指す歌い方が、
モデルのようなものがあるのか。
とにかく独特だ。
ささやくような、それでいてまとわりつくような、
粘着的な歌い方なのだが、声量はでかい。

しかしこの“E”、僕も好きな曲なのですが、
ベースの音がちとでかすぎに思えて残念。
束紗嬢はおしとやかにベース弾きそうな印象があったのだが、
意外や意外アクションを交えながらロングの髪をバサバサさせる。
しかし彼女は声を張り上げると泣き顔になるので、
正視するのがどこかはばかられるような気もしてしまった(笑)。

2曲目にやってきたのは
最新EP「Starlight EP」より、“そら、キラ星”
アップテンポなリズムとドライヴ感のあるギター。
橋本くんのヴォーカルがどこかドリーミィなのに対して、
サウンドが意外に「溜めて爆発」系だったり、
硬質だったりするのがスカーレットの面白いところだ。
橋本くんがヴォーカルだから聴きやすい、ということもあるんだろうなあ。
このサウンドで違うヴォーカリストだったら、きっと全然印象が違ってくるだろう。
後半の疾走するギターとドカドカしたリズムの絡みもかっこいい。
ドラムの宗村くんは妙にパキパキとした動きでドラムを叩いていく。
だからなのか、リズムもパキパキした印象を受け、
それはそれで良いのだが、力加減が常にパワー全開な気がして、
もっと緩急つければ、もっと良くなるんじゃないかと思う。
出るべきでないところで前に出ている、そんな気がしてしまった。

演奏中は3人が3人とも中心になっているのだが、
MCに入ると、途端にバンドの役割分担がハッキリする(笑)。
音作りに関しては、
きっと橋本くんがブレーンなんだろうなと僕は思っているのだが、
対外的な部分になると、束砂嬢がバンドを引っ張り始める。

「ただいまぁ。スカーレットです」

と嬉しそうに一番に言葉を発したのも束紗嬢だったし、
他の2人に話を振ったり、曲紹介をしたりするのも彼女。
しかし彼女が話している最中も、チューニングなのか
演奏イメージなのか、ギターの弦を見ながらチョコチョコと
熱心に手を動かしている橋本くん。話聞いてるのか(笑)。

きっと3人ともガンガン自分から話す人ではないんだろうなあと思う。
ただ他の2人よりも束紗嬢が少しだけ積極的だから、
こうやって主なMC担当になった…のかもしれない。

3人が3人とも今日でツアーが終わることを何回も繰り返す。
きっと、他に話題がないとかそういうことではなくて、
やっぱりなんと言っても初めてのツアーだし、感慨深いんだろうなあ…。

ライヴ仕様なのかもしれないが、
キラキラ感抑え目の“starfruits”も良かったが、
僕としてはCDのあの浮遊感・透明感が発揮されると嬉しかったなあ。
彼らの楽曲の中ではおそらく1番認知度の高いと思われる、
“青い月”“sheepsleep”ももちろん演奏されたのだが、
ちょっとテンポが音源よりも緩くなかったかな?
僕の気のせいかなー。
しかし“青い月”の、リズムが一気に走り始めた瞬間、
なあんだこの曲って踊れる曲だったのねーってことに僕は気づいたりした。
“sheepsleep”は束紗嬢のヴォーカルが中心になっていて、
ライヴ前半では声量が足りないかと思ってたんですが、
ここに来てガンガン出てきましたね声。
ちょっとサウンドのドライヴ感が物足りない気もしてしまいましたが、
メインヴォーカル2人がガッツリ絡むこの楽曲、
磨けばもっともっと素敵なものになるかと思います。
ちなみに僕は以前このHP内のコンテンツでスカーレットを取り上げた際、
キッチリ感がライヴでも再現されているかどうかという点を気にしてましたが、
“sheepsleep”間奏部分のドラム、宗村くんキッチリ仕事されてました!
かっこよかったです。

このツアーで得たものすべてを注ぎ込みます、
という言葉に続いて演奏されたのが本編ラストの“Noah”
平坦な道から山道へと入っていくような、
この曲展開。テンポチェンジもなんのその。
ラスト近くのギターが走り始める前の箇所では、
橋本くん、ドラムの方を向いて、
ギターをギュワンギュワン鳴らす。
いきなりだもんでギョッとするくらいにノイジーです。
これはCDにはなかった、ライヴ独自の演奏だ。
こうやって楽曲がライヴ仕様に変化していく、
その様を見聞きすることができるのも、ライヴの醍醐味だろう。


「僕をもっと 本当 僕をもっと壊してよ
僕をもっと 本当 僕をもっと壊してよ
壊れた僕と 壊れた君と 壊れた僕と 手を繋いでさ」



そう叫び歌う橋本くん。
“Noah”の中には僕の好きなフレーズが多い。ここもその1つだ。
スカーレットの歌詞は曖昧なものが多いのだが、
いったいこの歌詞にはどんな思いを込めているのだろう。
アンコール(“Highway”と“ニジムセカイ”)まで含めても、
この曲が僕の中でハイライトとなっている。1番ライヴ映えしていたように思う。

しかし演奏以外の部分からイメージされる
スカーレットというバンドは、
とてもピースフルでフレッシュだった。
ファンからの呼びかけに

「オウッ」

と笑顔で可愛く応える束紗譲といい、
ツアーについての感想文(笑)を
述べている最中に多分本気で涙ぐんでしまった(?)
宗村くんといい、

「自分はすごい人見知りで
きっと営業なんかできないんだろうけれど、
だけど今こうやって音楽を通じてみなさんと関われているのは、
すごいことだと思う」


と、
照れくさいことを惜しみなく言ってしまう橋本くんといい、
みんながみんな瑞々しい(青いとは言いたくない)。
今こうやってステージ立って演奏して、
お客さんがそれを観に来てくれている、
そのことがたまらなく嬉しくて、
でもそれをどうやって伝えたらいいか分らないような、
そんなもどかしさを、彼らの「喋り」には感じる。
今この瞬間がすごく満ち足りているということは、
彼らの、自然と出てきてしまっているような笑顔からも察しがつく。
何か確かな手応えを得たかのような笑顔でもある。
この辺の空気が先のHi-5と似ているような気がして、
ツアーを一緒に回ってきたのも妙に納得してしまった僕でした。

ライヴに関して言えば、まだ何か平面的な印象があったので、
難しいことかもしれないけれど、
曲ごとに異なった空気感を放つことができれば、
オーディエンスの受け取り方・盛り上がり方も違ったものになるだろうし、
もっと全体がグッと引き締まると思う。
しかし何はともあれ、作品ごとに確実に楽曲の幅を
広げてきてらっしゃるスカーレット、
早くも次のアルバムが楽しみになりました。
いったいどんな音を届けてくれるのか。
そしてこれからのライヴでそれらの音を、
もちろん今までの音も、どう鳴らしてくれるのか。
きっとまだまだ変化していくのだろう。バンドも音も。
そんな未来への期待を抱かせてくれた、
新鮮なライヴだった。拍手。

*** *** ***

全ライヴ終了後には、
物販で自分たちの作品を
各アーティストが自分たちで売っていた
(Hi-5なんか声張り上げて営業してた)。
もちろんそこではファンとの交流が生まれる。
これが「これからのバンド」を
応援する醍醐味なのかもしれないが、
直にアーティストと話すというその光景が
とても…僕には印象的だった。
アポジーの内垣さんなんか、
誰にかは分らないけれど、
頭にペットボトル乗せられて
おどけたりしてましたもんね(笑)。
あんな光景、今のうちしか見れんのかもしれんなあ。
しかしファンのみなさんはあそこへ言って、
いったい何を話すのだろう。
僕には話せることが何もなくて、
そこへ行くことができなかった。
そんな僕は人見知り。アハハ。
チクショー。なんて。

今度こういう機会があったら、
迷わず突っ込もう、何だって話せばいい、
そう思いながら歩く、春が近づく帰り道でした。

2005/04/04
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