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■シルバー事件 再想(再走)− シルバー事件25区
□placebo−*02:TIGIRI -------------------- story *01, *03,


冒頭、ブログへの
エントリが行われている。
誰のブログかって?
おそらくトキオの。
だから書いているのも
おそらくトキオ。
エントリのタイトルはこうだ――

 『ベナンの夜』

書かれているのは、
トキオの幼少期の記憶。
もしくは記憶と思しきもの。

薄暗い空間。
たくさんの子供たち。
単調な作業の反復。
白い服を着た男たち。

前作をプレイした人なら、
ここでトキオが何を書いているか、
分かるだろう。

おそらくシェルターでの記憶。

トキオはシェルターで
育った人間である。
カムイとなるべく。
たくさんの子供たちと一緒に、
決められたカリキュラムを
途中まで、
優秀にこなしていたのである。
しかしトキオは途中で脱落。
そして現実世界へ放たれたのである。
いわばバグ。オチこぼれであった。
トキオは前作の最終部で
自分がシェルターキッズであることを
知るのだが、
今作では、どうやらそのときの
記憶もまた失われているようだ。
だからこのブログも
記憶を綴るというよりは、
頭に浮かんだイメージを
ただ記しているのだろう。

あるいは、
記憶が蘇えりつつあるのかもしれない。

*** *** ***

エントリを終え、
ペットのアカミミが映し出された
デスクトップを見てみると、
スラッシュからのメッセージが
届いている。

ドレドレ・・・。
話してみるか(PCでね)

ネットばかりやっているトキオを
ネット界の情報屋スラッシュが
からかうという
奇妙なやりとりを経て、
スラッシュが本題を切り出す。

彼は件のクォーターで
面白いものを手に入れたという。

「呪いのファイル」

・・・・・・。

うさんくせー。

トキオは無視するが、
スラッシュの泣きに
仕方なく話を聞くトキオ(笑)。

まずどうやってスラッシュが
それを入手したかであるが、
彼はクォーターでエロチャ女から
それをもらったという。
エロチャ女というのは素人。
パフォーマーではない。
エロチャ女
=エロいチャットをする女。

そのエロチャ女もまた、
別の人間から、そのファイルを
もらったという。

誰かって?

GLG
グッドルッキングガイ。
ここまで順繰りにテキストを
読んでいる方には説明不要だ。
分からない人は
#02:GOOD LOOKING GUYを参照。

もともとはGLGが持っていた
そのファイルは、
彼が別のエロチャ女に渡したそうだ。
で、その女がチャットで知り合った
男に渡して、
そいつがまた別の女に渡して、
最終的には21人もの間を
渡り歩いてきた、そのファイル。

それが今、スラッシュのPCに
保存されているのだそうだ。
スラッシュの言葉を借りれば、

 『ボクのPCに内蔵された
 HD内にリザーブされているわけなんだ』


ファイルの一番の特徴は、
コピー不可能なところ。
コピーをするとオリジナルが
自動的に消えるらしい。
移動しか出来ない。
そしてまた、ファイルのデリートも不可。

スラッシュ:
 『だから常にそのファイルは
 この世に一つしか存在しなくて
 必ず一つだけ存在するんだ』


しかしファイル自体が呪われているわけではない。
元の持ち主のGLGが派手な自殺を
やってのけたことから、
「呪いの」という枕詞が
つけられているらしい。

スラッシュから話を聞いて、
トキオもカミジョウの自殺を思い出す。

トキオ:
 『思い出した
 公園通りの喫茶店のアレか
 窓際の席で
 中年男が自殺したヤツだな』


しかも民間レベル、
いやネットレベルでは、
監視カメラの捉えたカミジョウの
死に様が出回っているらしい。
血を吐き出して死ぬ光景
(ホント前作の
バイアン・サヤカが被ってくるね)。

しかしトキオの言葉から、
この時点でまだカミジョウが死んでから
三時間と経っていないということが分かる。
ということは時間的には、
このシナリオがカミジョウの
死からもっとも経過時間が
短いモノ、ということが分かる。
その短い時間に21人もの間を
ファイルは渡ってきたことになる。

ということはおそらく、
カミジョウは自殺を計画してから、
ファイルを流したことになる。
そこに何らかの意図が感じられる。
どんな意図か。

GLGは昨晩、最初に
ファイルを渡した女の子に
こう云ったらしい――

 『笑わない人を信じろ』

これってアレじゃん、
マチコさんに云ったのと同じ言葉。
でも、じゃあマチコさんが
一番最初にファイルを受け取った子なの?
よく分からない。

どうやらスラッシュは
このファイルの謎を
解き明かしたいらしい。
なんの意味があるのか。
ただのお荷物ファイルなのか。

とりあえず送るから
ファイルを確認しろという
自分勝手なスラッシュ。

present for you.
ってなメールが届く。

* ダウンロード *

ファイル名は『契』。
コレって木偏をつければ
楔(クサビ)になるね。
余計なことだけど。

ファイルを開こうとしても
開くアプリケーションが
見つからないと云われる。
とりあえず再びスラッシュと会話する。
PCで。メッセンジャー。

「契」という
ファイル名の意味を図りかねるトキオ。
文字化けじゃないのかと疑う。
疑問だらけのファイルについて、
スラッシュが解説を始める。

まずこのファイルの正体、
というか別に本質ではないのだが、
とりあえず表面的な構造については、
アショカエンジニアリングワークス社製の
セキュリティキーである。
スラッシュは自分だからこそ
分かったのだと自負する。
他のやつは誰一人分かっていないと。

スラッシュってこんなキャラだったかな。
どこか僕は疑問を感じ始めている。

セキュリティキーというのは、
本物のカギに限りなく近い、
鍵ソフトウェアであるとスラッシュは云う。
コピーが作れないことを
考えると、本物以上に
安全性は高いのだと述べる。
ちなみに値段はベンツ一台くらいだそうだ!

スラッシュ:
 『要するに
 ネット上の鍵のかかった
 どこかに存在するはずの
 扉を開く超高級な鍵だよ』

スラッシュはこのカギが
何を開くものなのか、知りたいようだ。
トキオはその要求を拒む。
デリートできないなら
CD-ROMに焼いて捨てちまおうと云う。
しかしスラッシュは反論する。
中枢以外のデバイスには
移動できない、と。
トキオも負けじと別のアイデアを出す。
適当なメアド拾ってきて、
誰かに送りつければいいと考える。
しかしスラッシュは云う、
相手が受信許可しなきゃ送れないと。
しかしトキオのPCは受信したよね?

スラッシュ:
 『アンタのPCは
 ボクが手なずけてるからね』


そういうことか。
なぜそこまでするスラッシュ。
これは物語を円滑に進めるための
設定に過ぎないのだろうか。
そうじゃなきゃ話が
進まない部分は多々ある。
しかし・・・。

最終的に「放っておく」という
考えにいきついたトキオに、
スラッシュは執拗に食い下がる。
なぜそこまでする?

スラッシュ:
 『決まってんじゃん
 ヤバそうだからさ
 このファイルはマジヤバイって』


本当にそうなんだろうか?
トキオにこれを調べさせたい、
別の理由がスラッシュにはあるのかもしれない。
その可能性も捨てきれない。
前作でトキオは元上司のS.INOHANAという
男からメールで依頼を受けて、
カムイを調べ始めたのだが、
このINOHANA、実はまったくの別人であった。
そういう前例もあるのだ。
INOHANAの名を語った人間からの
依頼を受けて、トキオは動いていたのだ。
それと気付かずに。
だから本作でも、トキオが接している
スラッシュがスラッシュでない可能性は
もう充分にある。
なんてたって顔の見えない付き合いだもの。
本人かどうかなんて確かめようがない。
スラッシュ・・・・・・。
この後の展開を見ると、
どうもなんか胡散臭い。
気のせいかもしれないけれど。

一度はログオフして、
スラッシュとの交信を
終了するトキオだが、
カミジョウの死を収めた
ムービーが、
頭の中を回る。

コーヒーカップを口に運び、
その直後、
口から派手に血を吹き出す、
その姿。

そこでトキオは何かを感じた。
何か以前に似たようなものを
見た気がしているようだ。
何のことだろう?
「死」と云えば、
トキオは以前に目の前で
人が死ぬところを見ている。
エンザワ・カイジという男が、
カムイ復活を阻止しようとする側の
人間から狙撃されて、
目の前で絶命するところを見ている
(ってかエンザワも本来は
そっち側の人間だと思う)。
それはトキオの目の前で起きたことだ。
そのときに感じたような感覚、
あるいは見た光景、
それがオーバーラップしたのかもしれない。

GLGの死に様が、何かを呼び起こす。
あるいは失われた記憶に関する
潜在的な発掘願望。

それがトキオを突き動かす。
そしてトキオは再びログイン。
スラッシュと話し始める。
PCで。

トキオ:
 『あの死に様は普通じゃない。
 違和感がある。
 普通じゃ分からんだろう。
 だが感じるんだ。
 そういうことだけには
 俺は敏感なんだ』

スラッシュはどうやらGLGと
チャットで会話をしたことがあるようだ。
チャット仲間。
そしてGLGの性癖をトキオに告げる。
アレね、
チャットしながら相手の女の子に
覗かれて、でも気づいていない振りをされて、
自分も気づいてない振りをする、プレイ。

変態。

トキオはともかく、
GLGの死に様に突き動かされ、
GLGの残したものを調べ始める。
とりあえずは、
スラッシュからのメールが頼りだ。
・・・・・・。
しかしスラッシュ、
どこまで知っているんだろう。
なぜ、いろいろ知っていながら、
自分でやらない?

*** *** ***

メールに貼られていたリンク。
それをクリックすると、
やってきたのは、とあるサイト。
ってかコンビニのサイト。
出た、コンビニ。
『あいててヨカッタ』と
でかい文字が躍る。
そしてアツアツ鍋の映像。
そのすぐ下に

 『ご注文はコチラ』

というボタンがある。
訝るトキオに、スラッシュは
ここがカギの鑑定所であることを
告げる。
・・・・・・。
鑑定所ってあれっしょ?
やっぱりオカモトさんでしょ?
ネットでもやってるのかよ(笑)。
ネットでカギ鑑定してくれなんて人、
ホント滅多にいないと思うけどね。

スラッシュに云われるまま
ボタンをクリックすると、
妙にアニメ調の女の子がお出迎え。
大きなおメメにオサゲ髪。

 『いらっっしゃいませ
 こんにちは
 何をお探しですか?』


合言葉はもちろん、
「WC貸してください」だ。
そしてクソ長い説明が続き、
WCへ案内される。
というかWCへ続く通路に
案内される。
おっと、忘れちゃいけないけど、
これはネット内での行動だ。
だからシロヤブやツキが通った
通路とはちょっと趣が違う。
レンガの壁で作られた
ダンジョンである。
これを通ってWCへ向かう。
もちろんスンナリは行けなくて、
カギが、というか
暗証番号が必要なんだけど、
これもスラッシュが教えてくれる。


WCにたどり着くと、
便器の中からフキダシが!
なんてセンスだ。

 『お待たせしました
 次の方 どうぞ』


ネット上でのオカモトさんは、
モアイ像をボウズ頭にしたような、
無機質な顔つきをしている。
漫画チックだけど。
システムの説明を面倒くさがって、
とにかくカギをくれというオカモトさん。
なんて投げやりな業務だよ(笑)。
システム説明しねーのかよ。
大人の事情ってやつか。

ということで
ファイル『契』をアップロード。
オカモトさんに鑑定してもらう。

・・・・・・。

オカモトさんはカギの使い場所と言うよりも、
カギを使うためには、次に
どこへ行けばいいかを教えてくれたようだ。
画面には表示されないから
分からないけどね。
さあ行きましょう。

ネットの海をさまようトキオである。

*** *** ***

やってきたのはカムイネットだった。
カムイネット・・・。
ここで珍しく、
トキオがカムイについて、というか
カムイに関係した一言を云っているので、
抜粋。

 『どのみち
 カムイの名前を騙る連中には
 昔からロクなのはいないよ』


トキオはどこまで覚えているのだろう?
前作の事件を・・・・・・。
カムイのことを。
まあいいか。
スラッシュに云われるまま、
隠しリンクを捜す。
とりあえず適当にクリックすると、
ユーザー名とパスワードを入力する
ログイン画面が現われる。
しかしなんとスラッシュはすでに
ユーザー登録をしているという。

ということでログイン。

 『You are child of 神 威』

次にメニューを選ぶ。
なんかもったいぶっているが、
とりあえずどれでもいいらしい。
じゃあ、ってことで
「gig」を選ぼうか。

 『deepthroat・・・・・・』

画面が開くと、
おっと・・・、女性が出ている。
名前は・・・・・・美流。
クォーターの美流がカムイネットにいるね。
どういうことさ?
そしてここは何するとこ?
何か美流は誰かとおしゃべりしている。
誰か、っていうか
不特定多数の人と。
チャット・・・か。
しかし話題はあってないようなもの。
出た途端に過ぎ去る話題もあれば、
妙に議論される話題もあり、
みんなの会話にはまとまりがない。
好き勝手に話しているようだな。
そして美流と話題を共有しているのは、
その内のごく少数だけ。
チャットってこんなもんか。

まずトキオは美流の出現を訝る。
スラッシュはコピーかもしれないと告げる。
*01:NAGARE”においては、
もともと美流はプログラムという話だった、
ということはココにいるのは
コピーのコピー・・・?
誰がコピーしてんだよ。
まあ誰でもいいけど。
そういうアンダーグランドなマニアな輩は
どこの世界にでもいるものだ。

とにかくここでカギの使い場所を
聞こうというスラッシュ。
てことはさ、オカモトさんは
カギの使い場所を教えてくれてないんだよね。
ちょっと腑に落ちないよな。
鑑定してねえじゃん。
・・・・・・。
とにかくこのチャットの流れにのって、
ここで情報を得なければならないらしい。
やってトライ。
そう、ここでトキオがスラッシュに
疑問をぶつける。

 『これ お前がやったらどうなんだ』

けれどスラッシュは
妙におどけて言い返す。

 『おぉ我が弟子よ!
 試練の道をくぐるのは
 己自身でなくてはならぬのじゃ
 ワシは見守るだけじゃよ』


よくわかんねーな。
続けてスラッシュは云う、

 『ホントはわかってるでしょ?
 ボクはみずから主体的に
 動くことはできない
 だからアンタが動くんだよ
 最初っからそういう契約だろ』


契約?
そんなものしたかい?
まだトキオの知らないことがあるのか?
それともスラッシュが臭い(怪しい)のか?

スラッシュ:
 『いざ突き止めよ
 “緋色猫”の居所を』


って云ってトキオに
チャットさせようとするスラッシュだけど、
“緋色猫”なんて名前どこから出てきた?
これまでに出てないんだけど・・・・・。
オカモトさんに聞いたのかな?
カムイネットで緋色猫の居所を聞けって。
そこがカギの使い場所だって。
あーでもこのシナリオ、
俺の携帯が悪いのか、
それともプログラム側が悪いのか、
ちょっと文字の表示が怪しい場所があってね、
だから表示されてないところに
もしかしたら緋色猫の名前は出た
可能性もある。
・・・・・・まあいいよ。
とにかく緋色猫のことを調べよう。
流れに乗るのだ。レッツ・トライ。

■■ ride on・・・・・・ ■■

うまいこと流れに乗って
情報をおびき寄せた結果、
得られた情報はコレだ。

「緋色猫はアイテム屋にいる。」
「“hero”という言葉で呼び出せ。」

サンクス。
では参る。
なんか混沌としてきたよ。

*** *** ***

ネット上の『アイテム屋』は
妙に小奇麗なサイトだ。
白い壁紙にやわらかい文字がある。
早速“hero”という言葉で呼び出そう。
「緋色猫」を“hero”で呼ぶのだ。

ポチッとな。

来た!
真っ赤な着ぐるみを着ているぞ。
だから顔は見えない。
二本足で立つ赤いネコ。
そのまんま。ただそれだけ。
っつってもこれはネット上の
画像だもんな。
実際に着ぐるみ着ているわけじゃない。
まあこの“緋色猫”って何?って話だけど、
なんかアレらしいよ、
ネットワークゲーム
“ザ・ヴァリスコード4”(多分架空)で
七色の秘石をすべて集めたプレイヤーがね、
この“緋色猫の着ぐるみ”を手にできるんだって。
いわば熱心なゲーマーたちの憧れの的。
ということでこの緋色猫は
自身が蒐集したゲームアイテムを
ご納得・ご安心のお手ごろ価格で
販売しているってことらしい。
だから「アイテム屋」。

・・・で、ここで何するの?
と思ったらメニューが出てきた。
・・・・・・。
なるほど欲しいアイテムを捜すわけだ。
石。球。盤。香。鏡。薬。
どれか選べと。
ほう。
スラッシュが云うには、
どれでもいいってことらしい。
じゃあ「球」にしちゃおうかな!

ポチッとな。

すると、

 『ユーザーパスポートを
 提示してください。』


ってなメッセージ。
ココであれを使うらしい。
『契』
タイミングが分からんよ普通。
いや考えれば分かるか。
これについて調べに来てるんだからな。
ということで
ファイルをアップロード。

・・・・・・。

緋色猫:
 『来たんだ・・・来たんだね』

やったなトキオ。
辿りついた。
緋色猫はどうやら、GLGに
ついての話をしてくれるようだ。
ここで得られるGLGことカミジョウに
ついての情報は特に新しいものではない。
トキオにとっては新鮮でも、
ここまでのシナリオを追ってきた
プレイヤーにとっては特に新しくはない。
しかしいくつか新たに得られた情報がある。

まずカミジョウと緋色猫は
もともと机を並べて働いていたらしい。
つまり同僚か。
そしてカミジョウは緋色猫に
話をしていたらしい。
自分が死んだら、誰かがファイルを持って
緋色猫のところにやってくると、
そしたらそのカギをヴァージョンアップ
してやって欲しいと。
つまりGLGは死を回りの人間に告げていた?
そして実際、今、トキオは
こうしてファイルを持ってやってきた。
緋色猫のところに。
緋色猫とカミジョウは特に
仲が良かったわけではないらしい。
もともとカミジョウが持っていた
“緋色猫の着ぐるみ”。
それを借りた緋色猫。
そしてその代わりに、彼は
カギのヴァージョンアップを引き受けた。
そういう契約だったらしい。3年位前。
ビジネスライクな契約だと彼は云う。
自分はこうして緋色猫として商売を行えているし、
カミジョウはカミジョウで自らの遺志を全うできる。

しかしさすがの緋色猫も、
カミジョウの正体については
口を割らない。
それをこんなところ(ネット)で
云ってしまったら、
自分は消されてしまうという。
必ずログが残るから。
しかし、カミジョウが
ずっと前にヤバイ仕事をやっていたこと、
そしてそれを辞めて前の会社に
入ってから、すべてをリセット
しようとしていたこと、
こういった話をしてくれる。
ある意味リセットは成功していたが、
けれどカミジョウはかのヤバイ仕事の
残響で、いろんな奇行を
やらかすようになってしまっていたと・・・。

どんな奇行かって?
ここまでを受けて、真っ当に考えれば、
チャットを覗かれて興奮する、みたいなこと。
でも緋色猫の云う、

 『猫の着ぐるみを着て
 アイテム売ったりするようなことですよ
 これはたとえですよ 私の場合のね』


という言葉を考慮して、
さらにこの後の展開も知った上で、
頭をひねると・・・・・・ねえ。
この緋色猫が誰なのかってところまで
考えが及んでしまう。
そして上記の緋色猫の言葉、
これはそのままカミジョウのこと、
なのかもしれないね・・・。
ネットってホント顔が見えないから、
自分以外に成りすますのは、
思いの他、簡単なのかもしれない。

緋色猫はマチコさんの話まで
聞かせてくれる。
カミジョウが入れ込んでいた女性。
契約同居人。
そして彼女はシェルター出身。
トキオは「シェルター」という
言葉にも何も反応しない。
何なのか分からない様子だ。
悲しいことに、自分がシェルター出身だという
記憶は失われているらしい。

GLGが残したファイル。
緋色猫はそれを契約どおり、
ヴァージョンアップしてくれる。
ファイル名――

『契契』

契契?
てっきり『契約』かと思ったら、『契契』?
バグってんのか?
まあいいや。
つーかこのファイル(カギ)の使い場所は、
カミジョウしか知らないようです。
ということで、緋色猫からも、
ヴァージョンアップはできても、
使い道は知らないと、そう云われます。
鑑定士を使っても、もうこのファイルは
鑑定できないそうです。
スゲーファイルだ。
でも緋色猫はヒントをくれます。
さりげなく・・・・・・。
GLG、根は純粋だったと。
だから、どこかにヒントが
隠されているかも、しれないと・・・・・・。

どこか、って?
・・・・・・どこだ?

二度とココには来ないでください、
緋色猫にそう云われ、
トキオはアイテム屋を離れる。

*** *** ***

デスクトップ前で
思案に暮れるトキオ。
すべては振り出しだ。
ファイルはヴァージョンアップしたものの、
使い場所はわからない。
いや鑑定士が使えないことを考えると、
前より事態は悪化した。
万事休すか?

そしてトキオは苛つく。
自分とスラッシュの契約とは何か?と
スラッシュに質問する。
なぜオマエは自分で動かないのかと、
再度質問を浴びせる。
けれどスラッシュは、
別のことが疑問だという。

 『シェルターのこと
 ほんとに忘れちゃってるのかい?
 だとしたら先は長いね』


ってかスラッシュは、
トキオがシェルター出身だって
なぜ知っている?
いやシェルター出身だと知らなくても
上の発言はできるか。
シェルターという言葉に
トキオがなぜ反応しないのかということだ。
トキオが24区でかつてあの事件を追っていたのなら、
間違いなくシェルターを知っているはずだ。
だからここでシェルターについて
何も知らない素振りなのはおかしいと、
スラッシュはそう云いたいのかもしれない。
・・・・・・。
けれど、そうだ、
「だとしたら先は長いね」の意味が分からない。
スラッシュ、何を知っている?
この「先」がどこか知っているのか?
君がその「先」へトキオを導こうとしているのか?
だとしたら君は何者だ?
ってかスラッシュ、トキオの質問に答えてねーよ!
はぐらかされた。回避された。やられた。
チクショー。臭いぜスラッシュ。
問い詰めてやる。
って、おおっと、
スラッシュを追究するいいチャンスなのに、
どうやらタイミングよく事件が
動き出してしまう。大人の事情だ。

カミジョウの専用ルームから
クォーターにログインしているヤツがいるらしい。
例の漫画喫茶のチャットルームだ。
ってことは、プレイヤーには分かるけれど、
これはおそらくクロヤナギだろう。
捜査で漫画喫茶にやってきたときに、
ログインしてたもんね。
しかし今トキオには、
相手が誰か分からんわけだし、
しかもGLG絡みだし、これは調べねば!

ということで、
トキオも急遽ログイン。

すると異常にテンションの高い
クロヤナギがお出迎え。
イエイイエイうるさいよあの女(笑)。
会話の中で簡単に
自分が刑事であることを明かすクロヤナギ。
まあクロエってハンドルネームだけどね。
でも、トキオがどこの課かと尋ねると、
凶犯課ってことも教えてくれる。

トキオ:
 『凶犯課なんてもんが
 まだ存在してたとはな』


おおトキオ!
凶犯課を覚えているのか。
なぜか嬉しいよ。
そしてクロヤナギも何か閃くようだ。
トキオの亀男というハンドルネーム。
そして偉そうな口調。
凶犯課を知ったような口ぶり。
・・・・・・。

クロエ:
 『あんた 元ブンヤだろ』

なんで知っているのだ?
トキオのことを?
誰から聞いたのか?
いや24区での事件でトキオの名前も
凶犯課の人間には知られるように
なったのかもしれないな。
うん、不思議ではない。
しかし面白いことになっている。

カミジョウについて調べていると言うと、
2つだけ質問を許可されるトキオ。

1.カミジョウは何者か?

 クロエ:
 『恐らくは古い兵士ってとこ』

この時点でそこまで分かってるのか。
すごい読みだな。クロさん。
詳しく知りたきゃ郵事連を洗えという。
しかしそれをやったら
アンタ(トキオ)も調整対象だけどな、
と、クロさんは釘を刺す。

2.カミジョウがネットに秘密の遺言を
 残すとしたらどこか?


これはカギの使い場所を記すとしたら
どこか?ということだろう。

 クロエ:
 『今ピンと来たのは
 なじみのチャット相手だな』


チャット相手。
でもカミジョウのチャット相手なんて
確定できないぜ?
どっかの誰かさんじゃないか?
と思ったらクロエは妙に優しい。
マスターにカミジョウのことを聞いてくれる。
そして判明するのは、
カミジョウの主なチャット相手が
“女神”だったということ。
未琉。
でも未琉はもう死んでしまった。
万事休す(二回目)か。
(プチ情報として、
クロエは、未琉がストーカーに髪を
食われていたことを教えてくれる。
彼女はどんな変態的な要望にも
耐えることができたのだそうだ。
しかし、“髪を食う”って・・・・・・
どこかで聞いた話だね。
管理人クルミザワ・コウスケとされる
死体が見つかったときに、
サカキとシロヤブがそんな話をしている。
ってことはストーカーって・・・・・・?
まあクルミザワについては
あとで「ドでかい」話が出てくるので、
そこで気がついたらまた書こう)。
けれどトキオは
何か見えてきたようである。
調子こいて、
クロエにさりげなく3つめの質問を
しようとするが、
あえなくあしらわれる(笑)。
しかしさすがクロさん、
チャット相手に遺言を残す可能性を
示唆してくれるとは、恩にきるぜ。

*** *** ***

トキオが閃いたのはこういうことだ。
GLGが女神とチャットしていたとすれば、
女神以外のパフォ、
つまり美流や実瑠とも
チャットをしていたのではないか、
ということだ。
だとしたらそこに何か手がかりが?
カギの使い場所が分かるかもしれない。
気がつけばこのシナリオでも
またカギを追っている。
カギに動かされている。
さすがカミジョウ。
ルール作りの達人だ。
スラッシュに、カミジョウが
実瑠や美流と関係あったかどうかを
調べて欲しいと依頼した直後、
トキオの携帯電話が鳴る。

誰だ?

男:
 『モリシマトキオさん?
 僕はヤブカワっていう者です』

ヤブカワ!
地域調整課の人間が
なぜトキオにコンタクト?
けれど彼はトキオに身分は明かさない。
さすがにそこまではしないようだが、
自分がカミジョウの知り合いであることと、
トキオと直接会って話したいということを
言ってくる。
さらに、電話番号をどうやって
知ったのかというトキオの問いに、
ヤブカワは「うまく話せない」という。
? 妙な話だ。
教えられない、ではなくて、
うまく話せない、とは。
まるでよほど奇妙な方法で
番号を知ったような言いぶりではないか。
結局、今夜9時、26区造成予定地の近く、
小さな公園で落ち合う約束をして、
ヤブカワとの通話は終わる。
話・・・・・・いったいなんだろう?

通話後、トキオは
奇妙な感覚に襲われていることに気づく。
いや、正確に言えば、
ヤブカワとの通話に奇妙な
感覚があったのだろう。
前にも似たような感覚を
味わったことがあるような気がする。

・・・・・・。
これについては後ほど記す。

とにかく今は、カギの使い場所だ。
そこに何かがあるはずだから。

*** *** ***

スラッシュの調べによると、
どうやらカミジョウは実瑠と
関係があったようだ。
カミジョウは彼女とチャットをしていた、
もしくはプログラムである
実瑠を作ったのは・・・・・・。

必ずそこに何かがある。

カミジョウのPCを
オンラインスキャニングした結果、
いとも簡単に入手できたという
実瑠との専用ファストパスを使って、
実瑠とコンタクトするトキオ。

「クォーター」へダイヴ。

トキオを「ご主人様」と呼ぶ実瑠。
専用ファストパスを使ってるからか。
名前もGLGになっているしな。
「2日と17時間14分待った」と云う実瑠。
これはどういうことだ?
カミジョウが最後に実瑠と会ってから
それだけしか経っていないということ?
まだ3日経っていない、
という言葉を受ければ、
なるほど、分からないでもないが、
時間感覚が難しいよな。この作品は。

トキオは実瑠に尋ねる。
「君は今幸せかい?」と。
実瑠はもちろんだと言う。

 『ご主人様が私を作ってくださったから』

なるほど。GLGが実瑠をね。
ご主人様が可愛がってくだされば、
私はとてもとても幸せですと、実瑠は言う。

と、ここで何がきっかけか分からないが、
カミジョウが死んだことに実瑠は気づく。
何かがカミジョウとは違ったのかもしれない。
そのようにプログラムされていたのかもしれない。
異変があったときはカミジョウが死んだときだと。
そして彼女は悲しみを見せる。
嘆き悲しむ。
そしてトキオに「あなた誰?」と尋ねる。
トキオは云う、

 『前にお前と話したことのある男だ』

データチェックを始める実瑠。
そしてついに来た、やはりココだった、

 『セキュリティキーをアップロードしてください』

すかさず、
ファイル『契契』をアップロードする。

・・・・・・。
すると・・・・・・、
実瑠の顔が変わる・・・・・・!
なんとGLGの顔である。
そしてトキオのハンドルネームが
亀男に戻っている。
画面に現われたGLGは、
自分を会話プログラムだという。
トキオが辿りついたということは、
自分は死んだということだと、
カミジョウは云う。
彼は、後悔はないが、
気がかりがあるという。
女のこと。

1人はプロの女。
これは女神のことだろう。
彼女はもう死んだ。

もう1人は虚構の女。
これは実瑠だろう。
彼女は解放されるという。
役目を終えたということか。
ここまで仕組むとは、
カミジョウ、たいした男だよ。

最後の1人は、
契りを結んだ女。
シェルターにいた子だという。
マチコさんだな。
彼女のことがとても心配だと
カミジョウはいう。
彼女と話すことをカミジョウは望む。
そしてトキオに依頼する。
謝礼ははずむから、
彼女へここへ来るように
伝えて欲しいと。
それだけが望みだと。
死んだ男が自分の女と
チャットで話すのかと、
トキオはからかうが、結局、

 『死人からの依頼か
 俺にはふさわしい仕事だ
 どうすればいい?』


と依頼を受ける。

以降、作品中では
何も表現されないが、
トキオは無事にマチコさんと
カミジョウを引き合わせたのだろう、
そう思う。
次に一気に場面は切り替わる。
そう、ヤブカワとの約束の場所へ――

*** *** ***

薄暗い公園だ。
すべり台とブランコが見える。
9時半になってもヤブカワは現われない。
すっぽかされたと思うのも束の間、
トキオの携帯が鳴る。

開口一番、ヤブカワは謝る。
申し訳ないと。
そこには行けないと。
察しのよい人は分かるだろうけれど、
もうおそらくこの時点で
ヤブカワは・・・・・・殺られている。
会話を続けると、
ヤブカワはトキオに
自分とカミジョウの関係を明かす。

彼を人殺しの機械に育て上げたこと。
そしてトキオはカミジョウが
元殺し屋であったことを悟る。
潜水夫という名前は使われないが。
感のよいトキオは、
「だったらアンタも人殺しってことだね」、
とヤブカワに言ってのける。
そしてヤブカワがカミジョウを
殺そうとしていたことも言い当てる。
鋭い読みだ。
ジャーナリストとしての
経験がそれを可能にしているのだろうか。
あるいは他の能力かもしれないが。

話が逸れた。
そう、ヤブカワたちは
カミジョウを調整しようとしたけれど、
ヤブカワが思い巡らし、
躊躇している間に、
カミジョウは自殺した。衆人環視の下。

ヤブカワ:
 『カミジョウは
 当局を出し抜いた
 完膚無きまでに』

カミジョウの自殺後、
カミジョウの生前の足取りを
追っていたヤブカワは、
同じようにカミジョウの周辺を探る
凶犯課の刑事たちと、
それからマチコさんを見つけた。
そしてカミジョウにつながる線は
すべて断つということで、
この刑事たちとマチコさんを
調整しようとしていた。
ところが・・・・・・、

ヤブカワ:
 『実際には 
 躊躇う間もなく
 こっちがやられたんだ』

誰にだ?
あいつの側の人間だろう?
トランスレーター
違うかい?

ヤブカワ:
 『カミジョウとも
 凶犯課ともつながらない
 ある組織の人間だが
 そのことは詳しく説明できない』

説明できないのはなぜか、
ってことはこの際置いておこうや。
最終的にヤブカワは
トキオに本当に話したかったことを
云ってくれる。

 『君に言いたかったのは
 カミジョウヤスシは
 死んでいないということだ』

驚くトキオ。
当然だ。
ムービーまで出回っているのに。

カミジョウの自殺が狂言であることを
誰かに伝えたかったというヤブカワ。

だったら喫茶店で死んだのは誰なのだ?

ヤブカワ:
 『“緋色猫”と呼ばれていた男だ
 カミジョウはその男を
 自分そっくりに仕立てて
 自分が自殺したように
 見せかけて殺したんだ
 洗脳と整形だ
 全部 僕が昔
 彼に教えたことだ』

しかし疑問はある。
ヤブカワはどうやってそれを
知ったのだ?
知りつつなぜカミジョウを
放っておいた?
ああ・・・話がミステリアスに
なってきたけれど、
ヤブカワは地面に倒れたときに、
そのことを知ったらしい。
カミジョウが生きているということを。
そして他ならぬトキオに
電話をしたという。
地面に倒れた瞬間、
ヤブカワの中ですべてが
クリアになったのだという。
カミジョウが死んでいないこと。
彼とマチコさんが
2人で逃げたこと。
2人で逃げるために
すべてカミジョウが周到に用意した
ということ。

 『よかったと思っているよ
 僕は心からね・・・』

ヤブさん、あんた根はいい人だ。
絶対そうだよ。
だからカミジョウを殺せなかったし、
すべてクリアにできたし、
トキオに電話もできたんだと思う。
逆にいえば、だからこそ
殺られてしまったのかもしれないが。

最後にトキオは、ヤブカワ自身が、
すでに死んでいることを告げる。
トキオにはそれが分かるのだろう。
そういう力が彼にはあるのだ。
納得し、安心するヤブカワ。
彼は「ありがとう」と言って
電話を切る。

おそらく、トキオがヤブカワから
一回目の電話を受けたときに感じた奇妙な感覚、
あれは死者に特有の「何か」なのだろう。
トキオはそれを感じることができる人間だから、
その感覚に襲われ、
奇妙さと懐かしさを感じたのだ。
懐かしいのは、
前にもそれを感じたことがあるから。
前作の中でね。
だから、あの一回目の電話のとき、
ヤブカワはすでに死んでいたか、
もしくはもうじき死ぬところだったのだろう。

*** *** ***

スラッシュと
メッセンジャーで会話するトキオ。
自分が死者と話せることを
真面目に話して聞かせるが、 スラッシュはちっとも驚かない。
それどころか注釈を加えるように、

 『死んだばかりの人間
 それに もうすぐ死ぬ人間と
 話せるんだよ』

と言ってくる。
なぜスラッシュがそこまで知っているかは
現段階では分からないし、
知っていることを考えると、
スラッシュはいったいどういう
人物なのかとひどく気になってくるが、
トキオのこの能力は
すでに前作の中で発生しているので、
熱心なプレイヤーには難解ではない。
前作のバビロンショッピングセンターで
「カムイ」に触れて以降、
トキオは死者の思念に感応できるように
なったのである。
前作ではその思念に動かされ、
女言葉で文字を綴っていたりもしたのである。
だから、ここで起きた、
ひどくミステリアスな現象、
「ヤブカワからの電話」という形での
事件の解明は、
そういう前提を踏まえなければならない。
でなければ、
ひどく素っ頓狂に感じられるだろう。
しかし、いずれにしろ、
死者の思念というものが
出始めてきたあたり、
事件はいよいよ混沌として複雑に、
そしてミステリアスになってきた。
ついていけるかな。

スラッシュに云われて、
トキオはどうやら自分に
その能力があったことを思い出したようである。
ひいては、自分の使命を。
これを「思い出した」ということは
かなり重要なことであると思う。
何かが起こりそうでもある。

*** *** ***

ブログへの投稿、
タイトルは『モルディブの夜明け前』。
海沿いの小さな一軒屋を訪れた
ときのことが書かれている。
家具がいくつかあったこと。
けれど生活感のなかったこと。
その空虚感にシェルターを思い出して
悲しくなったこと。
本当に彼が生きていて
それで彼女を連れて行ったのか、
それとも彼女が1人で
出て行ったのか、
真相は分からないこと。
けれど、約束は
果されたのだ、そうに違いないと、
ブログには記されている。
そうでなければ誰も救われないから、
この世に生きていることに
何の意味も見出せないから、って。

僕もそう思うよ。
GLG=カミジョウヤスシはきっと、
マチコさんと逃げたのさ。

きっと・・・・・・。


 『なあ、そうだろ?
 違うかい?』


*03:YOGOREへ続く・・・


2006/06/02
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