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2007.06.03‐「Syrup16g at 日比谷野外大音楽堂」 Home Set List

 § highline records 10th anniversary syrup16g one man concert at HIBIYA YAGAIONGAKUDO  "DEAD CAN DANCE" § …

野外大音楽堂は、NO SMOKING.
とりあえず、平気でタバコ喫ってた奴らは■■ばいい。
禁煙の字が貴様らの腐った目には見えかったようだな。
一度■■で、ゾンビになって蘇って来い。
そしたら俺が撃ち殺してやるから。
そしたら許してやる。だから一度■■。
そういう誤ったノリの人たちに、
観にこられてしまったバンドはどうなの。
楽しきゃいいんか。何でもいいんか。

……。

……。

おっと、話が出だしから逸れてしまった。

*** *** ***

結論から言うと、僕は満足している。
今回のシロップの野音ライヴ。
いや、それはアレだよ、
前回の日比谷と比べてどっちがいいよ?
って訊かれたら、躊躇なく「前回」と答えますが。
そこは甘いこと言いませんよ、ええ。
しかしながら、そもそも前回の野音の記憶にしても、
それはDVD『遅死10.10』を観た後で、
たぶんに再構成(or美化)されている可能性があるので、
純粋に前回と今回を比べられていないかも、しれませんが。

でも、それを差し引いても、やっぱり正直、
「前回を超えた」とは言うことは出来ない。
まあ比べるのが、ナンセンスとか、
言われてしまえば、それまでですが、
なぜ「超えられない」のかを考えてみると、
単純にこれはもう、慣れが大きいと思う。
前回の日比谷は2004年の10月10日。
それから2年と半年ほど経過したのが、この日。
ファンの方ならご存知のように、
その間に彼らは定期的な―4ヵ月に一度くらいの―
ライヴ活動はすれども、新音源はいっさいリリースしていない。
前回の日比谷以降、2005年4月〜年末位までは
ライヴごとに異常な数の新曲を披露してもいたが、
そのやり方もいつしか変わり、
悲しいかな、最近では2〜4曲の披露となっている。
ライヴ映えする既発曲に、ソロリと新曲を挿入するライヴ、
最近はこれが定番化しており、セットリストに動きが見られなくなっている。
足しげく通うファンには、新鮮味が徐々に失われつつある。

つまり、シロップのように、都内中心で活動し、
各ライヴに毎回参加するような熱心なファンが多いバンドの場合、
そういったファンにとっては、
もう「慣れ」が生じてしまっているのだ。
そして、それは僕にも当てはまる。
だから、あくまで僕にとっては、
「前回の方がよし」とされる理由は、
その「慣れ」にあるんだと思う。
前回はライヴで演奏されるのは初っての、
たくさんあったしね、主に『delayedead』の曲は。
新鮮だった。

演奏については、僕みたいなド素人が、
無責任にもグチグチ言ってしまうと、ドラムの中畑さん、
この日は要所要所でハイパーなテイストを放っていたのだが、
そしてそれはたまらなくグッときたのだが、
全体的に、どうも、パワー不足な感が否めなかった。
前は、というか、クるときは、あの人のドラムは、
すごいクるのだけど、今日はいまいちそれがなかったんだなー。
なんなんだろうなー、あの「アリ」と「ナシ」の違いは。
VOLA & THE ORIENTAL MACHINEでの活動が
まさか悪い方向に影響しているとは思いたくないが、
どうもアレが始まって以降、ハイパーなドラムが少なくなった、
と感じるのは、僕だけ、僕の思い過ごしでしょうか。

でもね、こうやって、僕も含めたファンが、
彼らのライヴ、活動状況に、グチグチ言ってしまいながらも、
それでも、なぜまた、凝りもせずにライヴを観に行くのかっていうこと。

そこにこそ、すべての答えが隠されている。
そう思う。

*** *** ***

長いイベント名だ。
highline records 10th anniversary
syrup16g one man concert at HIBIYA YAGAIONGAKUDO
“DEAD CAN DANCE”。
要するに“DEAD CAN DANCE”。
Wikipediaで調べるとコレ。関係有る?
ハイラインレコーズ10周年記念ということだが、
僕は別にハイラインに何の思い入れもないんですね(笑)。
ってか、行ったことないですしね(笑)。
そんな人でも参加できてしまうのがナイスですね。

天気は奇しくも曇り。
天気予報もこの日は当たった。
大音楽堂の前で、立ち見の列に並びながら、
僕は前回もそうしたように、木の葉の間から、
灰色の空を見上げていた。
会場の中からは、クラシックだかオペラだか、
よく分からないけれど、クラシカルな音楽が漏れ聞こえてくる。
今までこんなの流したことあったかしら。
まあ気まぐれ?なのかしらね。

会場に入っても、立ち見では見えないかと思いきや、
意外に見えることが判明。あら不思議。
まあ会場の構造からして普通のライヴハウスとは違うわけで、
当然といえば、当然ですが。

今回はあまりもったいぶって書くのは止めましょう。
そういうムードでもなかったしね。
17:30という早い開演時間をやや過ぎたとき、
僕の眼前に広がる、野音指定席の客がいっせいに立ち上がる。
青木さん、中畑さん、キタダさんの後に、
五十嵐さんが現れるわけだが、髪の毛を切ったのだろうか。
そして遠目にもパーマがかかっているように見えるが?
相変わらず黒シャツ黒パンツでヒョロヒョロの五十嵐さんは、
マイクスタンドの前で、かったるそうに、
顔をワシャワシャとこすったようだった。
本当に、なんというか、気合入ってるのか、
入ってないのか、ちょっと分かりかねるポーズ。
その瞬間だけ傍目にみると、
「ちょっとライヴやってくっかぁ」的な、
そんな姿勢に見えてしまう。
中畑さんは白シャツに黒く細いタイを締めて、
髪の毛はほぼ白というか銀というか、
きわめて明度が高い色だった。
立ててはなかったね、髪。普通だった。
そしてキタダさんも青木さんも、
顔を覆うくらいの長めの髪であったが、
そんな華のない4人がなぜかしっくりくる、
この不思議なバンド。シロップ16g。

*** *** ***

目だった挨拶もないままに、
1曲目の演奏が開始されるが、
これは新曲であった。
おそらく春のツアーでもやったもの。
通称“にせもの”。
情念を垂れ流すような、
重苦しいギターイントロに、

 「そう 夢見てきた いいだろう
 途中までいい感じだった
 破滅の美学を利用して
 いざとなりゃ死ぬつもりだった」


という頭からガツンと来る歌詞。
相変わらず(もちろんいい意味で)、
シロップらしい、五十嵐さんらしい。
自身のことを歌にしているのだろうが、
どこまで実際を反映しているのだろう。
「死」なんて、口にして欲しくないもんだが。
なぜ“にせもの”かというと、
サビでそういう歌詞が出てくるからなのだが、
どうも、やっぱり、聞き取りがたくて、
したがって、ここにそれを記すことは出来ない。
この曲は、僕は好きだなあ。
舞台の上で滑るように動きまくっていた
青木さんも印象的。ホント、アグレッシヴなギター。
この曲、パッと聴いた印象、イントロの部分が、
“希望”とか“夢”を連想させて、
僕はどっちかっていうと、あれらの曲が苦手だから、
そういう感じなのかなと思ったら、
分かりやすい転換というか、溜めと爆発があって、
まあ歌詞はよく聞き取れなかったからアレとしても、
曲は好きだなあ。帰りに頭の中で回ってましたからね。

うーん。

ホント、もったいない。

これまでに披露している新曲で音源出したとしても、
間違いなく、期待に違わぬセールスがあるだろうし、
ファンとバンドを取り巻く、
この迷走状態にも、間違いなく終わりがくるだろうに、
いったい何が邪魔をしているのだろう。
音源出せないなら、せめてそこを公の場で語って欲しい。
ホント、もったいない。

僕は今回のライヴ、野音という舞台設定もあるから、
わりとメロウな曲たちを演奏するかと思ったら、
2曲目がいきなり“イエロウ”でしたね。
でも出だしの歌詞を間違えたような? 違う?
「やっぱり」な感じなのだけど、
でも間違えないで欲しかった!
出鼻をくじかれたような、奇妙な苛立ち。
ライヴにパーフェクトを求めるなんて、
よっぽどの高望みなんだろうけど、
でもシロップだからこそ、という部分も有る。

“神のカルマ”あたりから、
だんだんと感じ始めてきたのだけど、
なんとなくシックリこない感じと言うか、
カッチリはまっていない感じと言うか。
どこかがズレてる感じがする。
単に僕の問題かもしれないけど。

ライヴってすごい不思議ですね。
グルーヴっていう言葉で片付けていいのか、
僕のような素人には分からないのだけど、
「何か」が発生していないのだ。
その「何か」が、たとえばグルーヴ。
それが発生していない原因がまた不明。
だからバンドって、ライヴって不思議。

そうだ―
奇しくも、先日見たNINのライヴと同じように、
この日も、バンドのフロントマン(五十嵐さん)が、
6月1日に誕生日を迎えたとあって、
それを祝う声が、会場から飛び出したのだが、
あのトレント・レズナーでさえ、
“Hurt”の前という偶然にも最悪のタイミングにも関わらず、
「ありがとう」という言葉を返したのに、
この日の五十嵐さんは、会釈したようなしないような、
予想外の事で声出なかったのか何なのか、
ちょっと身を固めたぐらいで、何も言わず、ほぼ反応ナシ。

続いての新曲(通称“来週のヒーロー”)、
これもいい曲だった!
けれどメロディを忘れてしまった…。
「仕事は辛いけど楽しいよ」という、
なんだか矛盾した歌詞が飛び出していたような気もするが、
今はこういうグルグルした心境なのだろうか。
以前にやっていた新曲たちには、
もっと優しさを感じるような曲もあったと思うのだが。

黄昏を吹き抜ける涼風の中で、
木々の揺れを感じながらの“I・N・M”を経て、
次に演奏された“不眠症”が一度目のハイライト。
個人的に好きだってのがあるかも、だけども。
五十嵐さんの声が出始めたのか、
それとも演奏がハマり出したのかは不明だが、
グッとステージが僕に近くなった感じ。
迫ってくる、あの感じ。
あの「うるせえ テメエ」の叫び、
歌い方に鬼気迫るものを感じた。
あの僕のお気に入りのギターフレーズも、
青木さんは今回ちゃんと弾いてくれていた。
「こんな気持ちはもういいよ」の前のとこ。
Goood.
余談だけど、この曲、表立っては、
「シロップといえばこの曲!」リストには入ってないかもしれないが、
けっこう、実は、ほんとのトコ、人気高いんじゃないかって、
密かに思ってるんだよね、僕は。
そういう人、多くないかな? 違う? ああそう。

イントロ不発気味の“Sonic Disorder”は、
個人的にいただけなかったので、割愛して
―五十嵐さんも首ひねっていたように見えたが(涙)―、
この後が、アコースティックパート。
五十嵐さんはエレキギターをアコギに持ち替えて、
マイクスタンド前に用意された椅子に腰掛ける。
でもこの辺のギター持ち替え&椅子のセットの間、
なんか五十嵐さんがモタモタ感を漂わせ(涙)。
「あ、これ俺が」、「あ、じゃあ俺、コッチか」、
「あ、アレ、あ、やらなくて大丈夫ですか、そうすか」的な。
そこでナンだかなーな空気を1人感じるワタクシ。

徐々に日が暮れていく、落ちていく、
そんなまさに黄昏た空気の中で、
“明日を落としても”のイントロが鳴ったときには、
やっぱりどうしても鳥肌が立ってしまったのだが、
ホントこの曲にはマジックがあるよなあ、
なんて涼しさを通り越しつつある微風を浴びながら、
黄昏れていたら、どうも、よく分からないんですが、
なんか曲の進行を間違えたようですね、五十嵐さん(涙)。
次の歌詞を歌うべきトコで、歌わずに?
直前の音を伸ばしすぎてしまったような?
だもんで慌てて歌詞を口から滑り出させたような?
何が起こったのかよく分からなかったが、
やはり間違えたのか…? 
奇妙な瞬間は「あっ」という間に過ぎたが。
この辺りだったかなあ、大音楽堂を囲む木々の間からね、
落ちていく太陽の光が、金色の弱い光が垣間見えてて、
とてもとても、それは綺麗な光景で、でもどこか切なくて、
空気は寒くはないんだけど、ピリッとした鋭さがあって、
あの空間は、シロップの世界観にぴったりのモノだったんだがなあ。
うーん…。

アコギセットが新鮮な“シーツ”は、
どこかエレキでやるよりも重々しさが増していて、
「死」を連想させる歌詞が、心に波紋を生む。
中畑さんのコーラスも久々にドカーンきた。
欠かせないですね。あの素晴らしきコーラス。
“明日を落としても”のときに思ったんだけど、
1回全部アコギ1本でやってみるのも、
ありなんじゃないかって思いますよ。
まあ…ギターが…アレかもしれませんが…。
ギター1本だと、ホント、声の良さが、
尋常じゃなく、浮き立つんですよ。
真似しようと思ってもできないだろう、あの声。
1回全編アコギって聴いてみたい。
イメージ的にはミドリカワ書房の『増刊ミドリカワ』。
したら、間違いなく、僕は泣いてしまうだろう
(いや別に泣きたくて観覧するわけじゃないけど)。

“My Song”で締められた、このアコースティックパートは、
どことなく不完全燃焼感が拭えない。
そしてまたもや若干のモタつきを経て、
再びエレキパートが始まるのだが、このエレキパート再開後に、
この日のピークがあったとする意見が、多くある様子。
僕もそう思っているからして、
やっぱりこの瞬間に、何かが有ったのだろう。
“ex.人間”を経て、曲は“正常”
僕はここ数日なぜか“正常”を繰り返し聴いていたので、
イントロが来たときに、1人盛り上がったのだった。
でもこの曲って、表面的には落ち着いているじゃないですか。
しかしながら、イントロ明けに、五十嵐さんは叫んだ。
アコースティックパートのあの空気を消し去るかのように。
妙に熱い“正常”が幕を開けたのだが、
最終的に予想外のエネルギーが発生した。
どことなく足元がフラフラしている五十嵐さんの後ろで、
前かがみになって、頭を伏せ、渾身の力でドラムを叩く中畑さん、
珍しくキタダさんまで頭と腰を落として、大きなモーションで、
肘を上げるようにして、ベースの弦をアグレッシヴに弾いている。
青木さんは言わずもがな。ギターの弦を掻きまくる。
そのまま曲の後半の、あの陶酔的な世界に突入したもんだから、
そりゃあもう、ビンビンこないわけがない。やばい。グルグル。
完全に、そこまでの空気を塗り替えた瞬間。
「あ」と思ったら皮膚が剥けて血が出てました的な。
気がついたら水が沸騰してケトルがピーピー言ってました的な。
そんな切り替わり。
惜しいのは、確かこのときはまだ若干陽が残っていた点。
完全に陽が落ちて、サイケデリックな照明の中で、
この曲を、この日のこの曲を聴きたかった。

沸点を維持したまま“正常”が終了すると、
そのエネルギーのまま、“パープルムカデ”に突入。
イントロのドラムからして重さが何か違う。
すんげー響く。言葉がないのがもどかしいんだけど。
この“パープルムカデ”の後かなあ、
何回目かの「ありがとう」を五十嵐さんは口にしたんだけど、
妙にここだけ、声が大きかったと記憶している。
満足できた、ってことなのかなあ。違う?
違ってたらすいませんね。

でもここで出し切ってしまったのか、
このあとの“翌日”は妙に粗い印象で、ちょっと残念。
あの曲の持っている澄んだイメージがなかった。
僕は「daimasの日記スペシャル」で演奏された
“翌日”がこれまででは、一番好きだなあ。

そして割と久々に思われる、
“Your eyes closed”で、本編は終了。
僕は大好きな曲。
初めて聴いたときは、新生シロップを予感したものだった。
以前はぜんぜん演奏してなくて、
てっきりライヴでやらない曲かと思ってたんで、
ポツポツやってくれて、嬉しいですね。素直に。
「愛」を扱ったこの曲で本編を閉じるところに、
何か意味は込められているのだろうか。
「ありがとうございました」と言って、
ギターを下ろし、袖にはけていく五十嵐さん。

なんでシロップの本編てこんなに短く感じるのだろう。

予定調和的な会場全体からの手拍子。
立ち見から眺めるその景色はまさに壮観。

*** *** ***

再び現れたメンバーは特に衣装チェンジもしておらず、
一息入れて、再び現れました的な様子。
ここに“もったいない”を持ってくる辺り、
やはり今日は、deepな方向で行くのかと思ったら、
このあとが!!
なんかヤケクソ的にアグレッシヴ。
“天才”“ソドシラソ”“落堕”の連打。
“天才”のイントロのツインギターは
やはりいつ聴いてもゾワゾワする。
青木さんと五十嵐さんが向かい合って、
弦を鳴らし、それが明けたところに訪れる爆発。
実にエキサイティング。
この辺からいよいよ照明が機能し始めたのだが、
若干ズレ気味にも感じたのはきっと僕の気のせいだろう。
基本的にストロボ系の光か、
あとは普通に照射するパターンで、
リズムに合わせてセットしている感があったけど、
必ずしもハマっているとは言えなかったなあ…。
“落堕”ってよくよく調べたら、
けっこうやるの久々だったりする。
前回やったのは年末の“UP TO THE WORLD #3”。
あの前回の野音で一際印象に残っている、長いイントロ。
即興ではないと思うが、アレをまたやってくれた。
前回より短かったけど。
もっと引っ張っちゃっても良かったんじゃないですか。
五十嵐さんは終盤、膝でリズムを取りながら、
ギターを弾きながら、断続的なシャウトを繰り返していた。
これでもかってくらいに。
この辺、曲が終わるたびに拍手がでかくなっていたことからして、
大いに盛り上がっていたのだろうし、もちろん僕も、
興奮させてもらったし、大きな拍手を送ったけれど、
でもこの日のピークは過ぎてしまった感じが否めなかった。
あの“正常”が…ってそんな気持ちが心にずっとあるまま。
ああ…。
あ、でも―
アンコール1回目を締めた“汚れたいだけ”には、
どうやら賛否両論があるようだが、僕はよかったな。
やわらかいギターがどうこうという意見もあったみたいだけど、
十分にやわらかい音を出していませんでしたかね、イントロ?
僕、素直にあのイントロ、体に染みてきましたよ。
青木さんと1音1音確認するように鳴らす、丁寧なイントロ。
照明もね、緑色の脳ミソを思わせるような、
ヒダヒダ的なモノがステージバックにドーンと出てきてね、
「脳が思考の停止を」の部分から来ているのかなあ、
なんて思ったけど、あの画は好きです。正面から見たかったけど。
僕、ちょっと斜めって見てたもので。

本編の“Your eyes closed”とは正反対の印象を残す、
この“汚れたいだけ”でもって、アンコール#1は終了。
五十嵐さんは、ギターを下ろし、
客席に手を合わせ、また袖に消えていく。
ホントに、まったく、話さない。
「ありがとう」以外、口にしない。
何を思っているのか、分からない。

まだ終わらないだろう、っていう、
安易な予想がファンの中にはあるんだろう、
当たり前のように、手拍子が再び。

すっかり暗くなった野音に、
鳥の羽ばたきのように、拍手が響く―

*** *** ***

颯爽と現れた中畑さんが、
ドラムセットにつき、1人ドカドカと叩き始める。
途中、若干声を発したようだが、アレはアドリブか。
客席から歓声が飛ぶ中、リズムパターンが代わり、
ロッキンなリズムが飛び出してくる。
なんかアレ、プライマルスクリームのアレみたいな、
タイトル忘れてしまったのだが、
あるいは江角マキコのシングルと同じみたいな(笑)。
って何言ってんだ!! ガガッ。
まあノリやすいリズムです。
このあと、なんか珍しく、青木さんが
頭上でハンドクラップ煽るようにして登場。
最後に現れた五十嵐さんも、ハンドクラップ煽る。
振り切れてはいない様子だったけど。
まあこの曲も春のツアーでやったみたいだけど、
これまでになかったタイプの曲ですよね。
歌詞に「ありがとう」って言葉が含まれていると思うんだけど、
これを途中で大声で歌うもんだから、
客席に「ありがとう」って言ってるみたいで、変な気分。
これはこの日聞いた中でもダントツで歌詞が聞き取りにくいので、
おそらくサビが「シャウト・トゥ・ザ・スカイ」であるということ、
「救いのない世界で 愛を歌うのが仕事」という
どこか皮肉めいた歌詞があること、そのくらいしか、分かりません。
もう。
曲調はノリがいいものの、他と違って「開け」ているので、
ライヴでは入れ所が難しいやも知れませぬな。

この後は珍しく“coup d'Etat”抜きで、
いきなり入った“空をなくす”。これは新鮮。
ディストーションギターの中で歌われる、

 「“もっと上へ”だって
 上なんて何も無いけど―」


って歌詞は、今のシロップに歌われると重いなあ。
だって上にいって欲しいもんさ。
空をなくしてしまった、わけじゃないでしょう?
まだ飛べるでしょう?
“イマジン”にもあると思うんだけど、
上に行ったって何もない、というその感覚。
それは負け犬的な心情かもしれないし、
どうせ獲ったって、あの葡萄は酸っぱいんだ、
だから俺は獲らないんだ、っていうイソップ童話にある、
ある種の言い訳、負け惜しみ(負けているのか?)、
その類なのかもしれないけど、
シロップが本質的にそういうバンドだとは思いたくない。
上を目指さない、っていうね。諦めてるっていうね。
そういうバンドではないでしょう。
売れたいという気持ちは少なからずあるようであるし、
しかしメジャーは下りてしまっているし…、
でも音楽は“一生懸命”続けていくと、
あの日、五十嵐さんは言ってくれたわけだし…、
それは、つまり、どういう意味なんだろうか…、
細々とやっていくっていうことか? それとも…。
ああ!! 分からん!! どうなっているんだ!!
ガガッ。

中畑さん渾身の―

 「ロックンロオオゥル!!!!」

がいつになく響き渡った“真空”でもって、
このアンコールは終了。
って気づけば、俺の好きな曲ベスト3に入るであろう、
“生活”が、演奏されていないなあ。あらまあ。
あらまあ! 無念。

しかしながら、前回野音のシロップは
アンコールを沢山やってくれた。
だから今回も、まだ諦めるわけには―

*** *** ***

再び再び現れたメンバー。
中畑さんはドラムセットに登り、
目の上に手をかざし、会場を眺め回す。
そんな中で、五十嵐さんは、アコギを手にして、
マイクスタンドの前で、椅子に腰掛ける。

ああ、終わってしまう。

五十嵐さんは、どこか遠慮がちに首を伸ばして、
マイクに口を近づけて、「ありがとう」以外の言葉を、
この瞬間に、ようやく発した―

 「野音の最後は…決まってますんで…」

って。かすれ気味の声で。
湧き上がる歓声。
ああ。“Reborn”。久しぶり。
これは文句ないです。
照明の色すら覚えてませんが。
でもやっぱり“Reborn”はいいです。

“Reborn”の前か後か忘れたが、
五十嵐さんは客に何回か礼を言った。
繰り返して。

「ありがとうございます」って。

アコギを丁重に椅子の上に置いて、
客席に手を合わせると、五十嵐さんは去っていった。
中畑さんは、最後に、客席に向かって、
大きく両手で手を振ってくれた。

もう終わりだと分かっているのに、
なんで客席は動かなかったのだろう。
なにかあると思っていたのだろうか。

何か。

結局、何もなかったけれど。
何もってのは、バンドを取り巻くこの状況に。
ライヴ終了のアナウンスと共に、ようやく、
三々五々、散らばり始める。

*** *** ***

もっと話して欲しかったなあ。
何かしらね、話すこと無くてもだ、
何でもいい、言ってほしかった。
アソコにいるのには、五十嵐さんの口から、
何かしらの話が聞きたいって理由もあるのだ。
今後の活動について。
しかし何か話したそうな感じがあったような、
いや、なかったような、
いや、やっぱりあったと僕は思っているんだけど、
だとしたら、何かが邪魔をしたんだろうか。
いや、勝手な推測にしか過ぎない。

不完全燃焼感はあったけど、
でも先にも書いたように、僕は満足している。
ビリビリときた瞬間も幾度もあったし、
五十嵐さんの声もよく出ていたし、
やっぱりいい声だなって、毎度のごとく、
堪能(って変な表現)させてもらえたし。
ってか、僕らは勝手に自分で自分の中の
ハードルを上げてしまっているのかな?
シロップはすごいライヴをするバンドだって?
こんなもんじゃないはずだって?
でも前例があるから、そう思ってるわけで。
根拠の無い設定ではない…はずだ。

まだイケるってそう思ってる。
今は活動が不定期だから、
ライヴ感が培われていないっていうのが
大きいんだって、僕はそう思ってる。

*** *** ***

いつもそうだ。
ライヴが終わると、帰り際の出口付近で、
次回のシロップの動きが告知されている。

大音楽堂の門に貼られた、簡素なビラ。

次回の924(まず9月24日だろう)。
これまでは9月24日といえば、
「daimasの日記スペシャル」、
「live924」と、
daimasさんを主軸にした?イベントが
催されてきたのだが、
どうやら次回の924は、
シロップの自主企画イベント―
「UP TO THE WORLD」、これのFINALであるらしい。
FINAL? #3で終わりって話を聞いていたが?
FINALねえ。FINAL
何かしらのケジメがつくのかな。
この状況に。

まあ2年半ぽっちでガタガタ言うなってね(笑)。
新譜出さないだけで、ライヴは年に数回、
行ってくれているわけだし、
たとえグダグダなときがあるにしても、だ。
「活動」はしてくれておるわけで、
それはファンには嬉しいことです。
ハイ。

でも、そろそろ、ねえ(笑)。

 「めい想してる暇ないや
 何か悟ってそうな事を言え」


「めい想」⇒「迷走」でも可です。
そんな心持で、いかがかな。


Set List
01.新曲
02.イエロウ
03.神のカルマ
04.新曲
05.I・N・M
06.不眠症
07.Sonic Disorder
08.明日を落としても
09.シーツ
10.My Song
11.ex.人間
12.正常
13.パープルムカデ
14.翌日
15.Your eyes closed
16.もったいない
17.天才
18.ソドシラソ
19.落堕
20.汚れたいだけ
21.新曲
22.空をなくす
23.真空
24.Reborn

2007/06/05
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welcome to my world.