ある日、歯が欠けた。
きっかけは何だったのか。
飴玉もらって食べたとき。
前歯でかじったとき。
歯が欠けた。
別にどうってことないと、僕は思ってた。
そんなに大きく欠けたわけじゃないし、
食物を噛むのにゼンゼン支障はなかったから。
だけれども。
今度はある日奥歯がおかしくなった。
どうも、欠けているような気がするんである。
まあ舌先が敏感だから、
小さな傷を大きく感じているだけだろうと、僕はたかをくくった。
だけど。
だけどある日、奥歯にモノがつまりだした。
何か食べるたびに引っかかるんである。
ちょうど、穴に米粒が入り込むような感じ。
舌がつりそうになるくらい思い切り動かして、僕は状況を探ってみた。
「穴が空いてるんじゃないのか・・・?」、そんな思いが頭をよぎった。
ここでようやく、僕は重い腰をあげた。
どこへ行ったかといえば、もちろん歯医者。
おそらく中学か高校以来の「歯医者」である。
いきなり余談だけど、僕の行った歯医者さん、
先生が何か「豪傑」な感じであったりする。
本宮ひろ志先生の漫画に出てきそうな、
荒くれモノな雰囲気である(チョット言い過ぎ)。
っていうか待合室にも、ちゃんと置いてありました。本宮先生の漫画(笑)。
さてさて、話は本題に戻りまする。
「あの〜、奥歯が何か欠けてる気がするんですけど…」と、
診察室の椅子で僕は先生に告げた。
「ふ〜ん」と先生は、無防備な僕の口を覗き込む。
ついで「ありゃりゃ」と先生。
「な、何だ?」と僕の心拍はわずかにあがった。
そしたら先生、「ダメだコリャ」ときた。
な、な、な、ナニィ……!? 「ダメだコリャ」って……いったい……何?
そんなこと言われたら落ち着いてられないってのが人間ってもんだ。
もういったい何が起きているのか、
椅子に寝そべった僕の頭はてんやわんや。
で、先生の話を聞いてみると、
どうやら僕の奥歯は欠けているのではなく、
虫歯菌に侵食されているらしいのである。
しかもその歯は「親知らず」!
しかもしかも、もう手におえないほど
ボロボロのケチョンケチョンにやられているらしい…!
要するに先生の出した結論は「抜歯」!
即行で抜くに限るぜ!と、そういうことらしい……。
っていうか、そんな展開は誰も予想してないよう……(泣)。
と、ここで、
友人やその他もろもろのトコロで耳にした話が、僕の頭を回る。
「親知らず」を抜いた後数日は、
ほっぺたが腫れて腫れてどうしようもなかったとか――
ろくに噛めないもんだから、数日間ヨーグルト生活を強いられたとか――
抜いたところからバイキンが入って、入院したとか――
・・・・・・
自分もそんなことになるのか……。
心配性な僕は、顔には出さないで、密かに怯えた。
まあそんなわけで、
その診断の数日後に再び来院した僕は、
まず親知らず周辺に2、3発麻酔注射をかまされた。
そして麻酔がまわるまで、しばらく放っておかれた。
まあ「歯を抜く」ってこと自体は初めてではなかったので、
この間、自分では割と落ち着いてたつもりである。
そしてそして、
いよいよ先生の取り出したペンチが僕の親知らずをガッチリとキャッチ…。
そこからはもうアッという間の出来事。
「この間0.1秒」みたいな感じ(←よく分らないな)。
メキメキ、あるいはバキバキという、
「砕けてんじゃないの?」みたいな音を立てて、僕の歯が…。
抜けた〜。
と思って安心したら、先生、その歯を僕に見せないで下さい。
「ホラ、こんなに虫食ってる」って、見せないで下さい。
でも確かにボロボロでしたけど。
しかも先生、その歯を床に落とさないで下さい。
コロコロと転がるその様子が、
さっきまでの緊張感を打ち砕くようで、
何かこっけいで、少し笑ってしまいました。
でもって、僕は奥歯に脱脂綿を噛まされ、
「〇時まで何も食べないように」とか、
「唾は飲み込まずに全部吐き出すように」とか、色々な指示を受けた。
次に処方箋を渡され、「隣の薬局でこれもらってね」と言われた。
でもぉ、薬局に着いたは良いが、いまだ麻酔は効いてるし、
奥歯で脱脂綿は噛んでるし、これは上手く喋れませんよ。
処方箋を渡して「あの、これお願いします」とか言うときも、
口をほとんど開けずに喋るという、
まるで「いっこく堂」のような有様でした。
まあその後の経過は良好で、僕が不安がっていたような事態は起こらず
アッという間に普通の生活が送れるようになった。
ホント、歯は大切にしなきゃいかんなあ…と、シミジミと感慨にふける――
ってなことをできるのは、まだまだ先のことになりそう。
それは何故か?
ここまで読んだ皆さん、
僕が「前歯が欠けた」と書いたことを覚えてますか?
そう。
そっちの方はこの時点ではゼンゼン解決していないのである。
親知らずに関わる一連の治療の最中、
歯医者さんは僕の前歯のかけっぷりに気づいた。
やにわに先の尖った器具で、僕の前歯を齧りだしたりした。
そしたら崩れる崩れる。
骨の中でも一番硬いといわれる「歯」が、
アレヨアレヨと崩れるんである。
どうやらこれまた「ボロボロ」らしい…。
アア、何てコッタイ!!!
もはや虫歯の部分だけを削って…という治療は不可能な模様…。
神経を抜きましょうという話になる――
そして僕は、「歯の神経を抜く」という、
未体験ゾーンに踏み込んでいくことになる。
*この続きは「歯は大切に:�◆廚砲董�
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