□Comment …
number girl(ナンバーガール)の解散から約1年を経て発表された、向井秀徳(むかい・しゅうとく)さん率いるzazen boys(ザゼンボーイズ)の1stアルバム。2004年発表。ザゼンボーイズのメンバーは、向井秀徳(Vo/G)、アヒトイナザワ(Dr)、日向秀和(ひなた・ひでかず:B)、ヨシカネソウ(G)の4人。
メタリックなギターで祭囃子(まつりばやし)を、というような思いが向井さんにはあったようだけれど、思ったほどには浮かれていなかった(笑)。ひょっとしたらburahman(ブラフマン)の初期の作品みたいな雰囲気かと思ったのだけれど、これまた全然違っていた。素っ頓狂なリズムにうねるベース、疾走したかと思ったら、急に「ポローン」と弛緩するギター。そして何より印象的なのは、向井さんの言葉の発し方。本人は「ラップではなく、念仏」とかおっしゃりますが、ラップのスタイルに影響を受けていることは明らか。時折歌声が聴けるものの、全編に渡ってメロディは抑えられていて、放たれる言葉はほとんど向井さんの「語り」に近い。その言葉(歌詞)は、頻発する“くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動”という言葉に集約されるのだと思う。聴いていると、何か繁華街というか、歓楽街というか、そういう街に特有の(って言えるほどには知らんのだが)ドライな世界観と、エロチシズムが僕の頭には漂ってくる。ハードボイルド小説とでも言うか。
向井さんはひたすらに「ビリビリ」くる感じを追い求めているようだけれど、いつからこういうスタイルにビリビリくるようになったのか。しかしあくまで自分の気持ちよさを追及しながらも、完全な独り善がりではなく、聴き手をびっくりさせてやろうというか笑かしてやろうというエンターテイメントな(?)意識も相変わらずで、冒頭ではいきなり裏声をかましてくれたりするし、他にも真に受けてよいのか、笑ったらよいのか分らない思い切った歌詞も飛び出す、
“線香消えたら 大変だ!/線香消えたら先祖が盆に帰れない!”とか、“ああ そこらに転がる五合ビン(五合ビン〜♪)/ああ 味も忘れて酔っぱらい(酔っぱらい〜♪)”みたいな。僕は声をあげて笑ってしまったけれど…良かったのでしょうか。しかし一方で、“開戦前夜”のドラムソロや、“自問自答”で行われる止め処ない思考の放出には鳥肌が立ったりもするのだった…。
この音楽は、もはや「かっこいい」とかそういう次元は飛び越えているし、その在り様には格闘技界デビュー直後のボブ・サップに対する「なんか分らんけどすげーんじゃねえの!?」的なイメージも当てはまる。やりたいことが100%形にできていなさそうで、しかしそれでもとにかくやってしまうという部分もまたボブ・サップに繋がりはしないだろうか(←明らかにこだわりすぎ)。
なんだかんだ言っても、やはり後期ナンバーガールの延長線上なのだと思う、この作品は。ただし、一見何でもありに思えたナンバーガールにもやはり枠が存在していたのだと、教えてもくれる。そのくらいに「何でもあり」なのだ。全人類、いやさそこらの犬や猫にまで放たれているというこの音楽、この言葉、正座して聴きましょう。
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