□Comment …
2001年に英国はWARP(ワープ)よりリリースされたthe other people placeの(1st)アルバム。僕はワープのHPで本作を試聴して気に入り、購入したわけですが、実際手にとって見ると、ジャケット写真も僕好みだったりする。緑溢れる木立の中に置かれた黒いボディーのPowerBook、開かれたディスプレイにはTVモニターが写っており、オレンジ色のブラウン管の中には「THE OTHER PEOPLE PLACE」文字が。裏面を見ると、ブラウン管内の文字はアルバムタイトルに変わっている。この「自然」の中にある「人工」物のPCという、一見ミスマッチを思わせる組み合わせを、見事に合体させたジャケット写真、僕は大好きです。
ところでこのthe other people place、ユニットなのかソロなのか、何と言う名前の人物が行っている活動なのか、ジャケット内を見る限りでは一切が謎。作曲とプロデュースとパフォーマンスを“the other people place”が行っているということしか書かれていない。ネットで情報収集をしてもなかなか正体が知れなかったのですが、何回か調べてようやくdrexciyaというユニット(?)と関係あるらしいことが分り、それをたどって行き着いたのが、このthe other people placeはdrexciyaのメンバーであるjames stinsonという人物のソロプロジェクトであるという答え。…って、まあこんな情報に大した価値はないのかもしれないけれど、せっかく得た情報なのでここに掲載しておくことに。
肝心の音はと言うと、「デトロイトテクノ」にカテゴライズされているみたいですね。僕には馴染みのないジャンルですが、有名どころを挙げるなら誰ですか、デリック・メイですか。この盤は単調なリズム音に、時折エフェクトのかかったヴォーカルが重なったり、ノスタルジックなシンセ音がポロポロ挿入されたりする、そんな構成。一言で感想を言うと「チープ」なのだけれど、デトロイトテクノってみんなこんななのかな。じゃあそんな単調でチープな音のどこがいいのかって言われると、この匿名性と言うか、押し付けがましくない音像と言うか、フラットな感じが、すごく良いんですね。
テクノって言ったらみんなフラットかって言うとそんなこともないわけで(実際攻撃的なテクノも存在するし、ダンスミュージックとしてのテクノなんか高揚感満点だ)、ということはこの音はやはり非凡なのだと思う。それにこの単調なリズムに霧のように不透明なモヤモヤしたシンセが重なると、夢の中のような浮世離れした感覚が頭を包むのだけれど、それがすごく気持ちよく感じられるときがある。ということでこの作品は、喜怒哀楽を催させない、つまり押し付けがましくない、そんな夢を見ているような感覚を与えてくれる不思議な作品。夢のためのBGM。
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