□Comment …
最近はギターバンドブームなどとも言われておりますが、確かに雑誌をめくれば毎月毎月新しいバンドさんの名前を目にしている気がします。そしてそんな状況についていけていない僕がいるわけですが、
そんな僕の耳にも、インパクトを与えてくださったのがこのSCARLET(スカーレット)。結成は2001年で、アルバム作成時のメンバーは、橋本洋介(はしもと・ようすけ:G,Vo)、林束紗(はやし・たばさ:B,Vo)、宗村つとむ(むねむら・つとむ:Dr)の3人。2004年6月に4曲入りEP「scarlet EP」でデビュー。そして本作が1stフルアルバム。2004年リリース。
初めに聴いたのは“青い月”で、そのときは「何かスマパン(スマッシング・パンプキンズ)みたいだなー」なんて漠然と思ったりもしたんです。それはなぜか、本作を聴いていくと、どうにか説明がつけられそうなくらいには、原因がはっきりしてきました。まずメインヴォーカルの1人でもある橋本さんの歌い方、かなりクセをお持ちです。「ら」行の音に他の音が繋がる場合に、その間が明確に切れていない(故意かどうか分りませんが)。まるで2つの溶けた蝋(ろう)が混ざり合うように、トロッとした感じで繋がっている。そんな舌足らず(って表現も的確でないか)な歌い方がビリー・コーガンを連想させたというのが、まず1つ。そして2つ目は、曲の構造。スカーレットの曲は、1曲の中でテンポが大きく変化することが多い。そしてテンポがダウンしたときに、ディレイがかかったりして、一気にサイケデリックな色が濃くなる。この辺の粘っこい感じが、スマパンの長尺な曲を彷彿とさせる。だから僕は“青い月”を聴いたときに、スマパンをイメージしたのだと思う。
なんて、他のバンドを引き合いに出してばかりいるのも失礼なので、スカーレットの何が良いかっていうと、曲がいいんですよ。歌詞はどことなく曖昧な感じで歌われているので(決して陽性ではないですが)、あまり重要視されていないのかなあとも思うのですが、曲は非常にPOPで、時にはディストーションギターを爆発させながら、時には独特の幻惑感・粘っこさをまき散らしながら、そしてどちらの場合においても透明感を保ちながら、甘美かつドリーミィなムードを絶やさない。また、もう1人のメインヴォーカル束紗さん(なぜか名前で呼ぶ:笑)と橋本さんのツインヴォーカルも気持ちよい。ハモったりしているわけではないし、マッチしてるとも思わないんだけれど、独特の絡み方をしていて印象的。聴いていると、ふと、初期のスーパーカーを思い出したりもした。
気になることを書かせてもらえるならば、音がキッチリしすぎているところ、ですか。スカーレットの曲は、このキッチリ感で気持ちよさを与えている部分も少なからずあると思う。ドラムやギターの絶妙な「間」だったり、テンポの急な変化だったり、そういった部分だ。音源ではこういった部分がすごくキッチリ作られているので、ライヴでどう演奏されるのかも気になったりした。ライヴ専用のアレンジで行くのか、それともこのまま演奏されるのか…。というわけでライヴも観てみたいバンドさん。まあなんだかんだ書いても、僕が本作を買った理由は、“sheepsleep”のPVで、ヘッドフォンをつけてフンフン乗りながら歌う束紗嬢に魅了されたからなのであった…。
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