□Comment …
Long Fin Killieのギタリスト・ヴォーカリストを経て、BOWS(ボウズ)名義でソロ活動、そして小説家としても高い評価を得、MOGWAIのレコーディングにはヴァイオリニストとして参加し、ツアーにも参加するというLuke Sutherland(ルーク・サザーランド)。彼と、ドイツのエレクトロニカ・アーティストVolker Bertelmannで始まったのがこのMUSIC A.M.。2人で曲を作るうちに「何か足りん」と思い、「そうかベースだ!」となったときに、そこに加わったのがTo Rococo Rot(トゥ・ロココ・ロット)のStefan Schneider(シュテファン・シュナイダー)。で、彼を加えて3人体制で作られたのがこの1stアルバム。2004年リリース。
僕はボウズがわりと好きで、2001年の『キャシディ』以来、音沙汰がないなあ活動してんのかなあと思ってたら、こんなとこにルークの名前を発見して、本作を手にとった次第です(で、結局ボウズはどうなってんのよ)。音の方は、公式ホームページ(http://music-am.de/)では、それこそいろんなジャンルが引き合いに出されて表現されてますが(“data pop”という言葉は印象的)、基本的には電子的なバックトラックに生楽器の音色を乗せた(あるいはその逆な)サウンドです。プログラミングされたと思しきリズムやアンビエントな持続音、ささやかなホワイトノイズ、グリッチ音(ブチッブチッという音)の中を浮遊する暖かい音色。この絶妙なバランス。この種の音楽を作る人ってホントすごいセンスしてるなあっていつも思うんだけど、どういう感覚でさまざまな音を混ぜていくのだろう。リズムだけだと機械的で冷たい印象があるんだけど、ベルやホルン、鉄琴や木琴のような音色、ゆるやかなギターが重なったとたんに、目の前にはとてもドリーミィな光景が広がる。各楽器が奏でるのがはっきりしたメロディではないから、それはとてもアイマイで、乳白色の夢のような風景なのだけれど、たまらなく心地が良い。M-1で、アンビエントなうねる音の中に、まるでリズムをずらすかのごとくルークの声が乗ったとき、これはいい曲だなと思った。ヴォーカルはどれもルークがとっているのだが、彼の歌声はボウズ時と変わらずウィスパーで妙に艶っぽく、けれど楽曲に溶け込んでいて、歌というよりも音として機能している感が強い。僕が1番好きなM-4は、好天の昼下がり、散歩中にふいのそよ風を浴びたような心地よさ(!)があってたまらないし、M-7ではエイフェックス・ツインのようなノスタルジックな旋律(あのフィィィー……ンフォォンて感じですよ)さえ顔をのぞかせる。ううむ、こ、心地よくて思わず目を閉じてしまう…。
ハッピーというよりも幸福という言葉が似合うのだが、しかしどこかに冷たさも滲ませている、そしてその甘すぎない印象がとても僕には好ましい。夜中に部屋を真っ暗にしてテレビ(「試験電波放射中」なら、なお結構)を見ながら聴くと、見たこともない景色が見えてくる(かもしれない)。ちなみに2005年に入って、彼らはミニ・アルバム「My city glittered like a breaking wave」をリリースしたので、気になる方はそちらもいかがでしょうか。
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