
L'ALTRA(ラルトラ)、初来日。
私が彼らの来日を知ったのは、
たまたま―ホントにたまたま、
彼らのMySpaceを何気なくチェックしたから(!)。
一応フレンドにはなっていたのだけど、
3rdアルバム『Different Days』以降、中心メンバーの、
Joseph Costa(ジョセフ・コスタ)と、
Lindsay Anderson(リンゼィ・アンダーソン)、
2人ともソロ活動にいそしんでいるようで、
新作の話もなかなか動かないし、
つまり、活動があやふやだったので、
ぜんぜんマメに情報を追っていなかったんですね。
それが、偶然チェックしたらあなた…、
来日公演情報が出てて、そりゃあビビリましたね。
前に確か2nd『In The Afternoon』を出したときに、
来日の話はあったかと思ったのですが、結局なくなり。
で、今回が初来日。
Josephは多分来日経験あると思う。ソロで。
サッド・コアとかスロウ・コアとか、
そんな形容されますけど、
よく分かりませんよね(笑)。なんだそれっていう。
1st『Music of a Sinking Occasion』にある、
耽美的な、メランコリィな、そしてアコースティックな音像、
そして交じり合う男女のヴォーカル、その見事な枯れぶり、
これらは私の度肝を抜いた。何だコレはと。
その1stの1曲目が、流水の音から始まり、
Aphex Twinばりのブレイクビーツに、
ピアノやホーンが絡むという楽曲で、電子音が嫌いでない私は、
これまた気になってしまったのだった。
アルバムのジャケットに使われている写真の美しさも、
まったく彼らのイメージを損なっていない。
つまり、素敵だった。
というわけで、待望の、来日だったのです。
そして今回の来日公演は、なんと
新潟、京都、名古屋、東京という4箇所。
京都では今をときめくOGRE YOU ASSHOLEが競演したという。
私が訪れた東京公演では、
miaou(ミアオウ)とaus(アウス)が競演。
…なんかL'ALTRAにしろ、
miaouにしろ、ausにしろ、
名前が記号めいてますね…(笑)。
パッと見、何ですのコレっていう。
はてはて場所はSHIBUYA O-NEST。
私が訪れるのは、去年行われた、
audio safariのアルバムリリースパーティ以来。
開演は19:30。遅めな方ですよね。
入り口になる6階フロアはバーになっているので、
そちらのお客さんなのか、
入場待ちのお客さんなのか、
よく分からないんだけど、人が大勢おりました。
物販もそこで展開してて、
ラルトラのアナログ盤とか見ると、いい感じなのな。
写真がGOODだから、あの大きさになると、
ジャケットがとても、ひとつのアートとして成り立つ。
Tシャツもいい感じだったし、
シングル盤とか、あとはジョセフのソロも置いてあったかなあ、
でも金欠の私は、眺めるだけで、買いはせず・・・。
パーカーとかあったら間違いなく買っていたんですが(笑)。
+ + +
と、入場時間になったので、入場。
わりかしお客さん多いなあ・・・
と思いながらも、私前の方へ・・・。
でも正直、入場待ってるときから、
ラルトラの人気を感じてましたね。
あー待ってた人、沢山いたんだなって思えた。
あのガヤガヤ感。久々に味わった。
まあどっからが“沢山”なんだって話だけど(笑)。
でも私の予想を上回っていた。
彼らの人気は。
そしてNESTの床ってあんなにブヨブヨでしたかね(笑)。
なんか歪んでんのかと思って、
1歩目はギョッとしちゃいましたね。
+ + +
1組目はミアオウ。
もともとは長谷川姉妹(Hiromi Hasegawa、
Mayumi Hasegawa)が結成したらしいけれど。
今は、ライヴメンバーも含めると、
5人という、決して少なくはない人数。
核になるのは3人で、
Tatsuki Hamasaki(G/Prog./Vo)に、先の長谷川姉妹―
Mayumi Hasegawa(B/Synth, Rhodes, Glockenspiel)、
Hiromi Hasegawa(Dr)。
ライヴメンバーとして、この時点では、
Naruki Kurokawa(Synthesizer,G/B)
Yoichiro Hashimoto(G)の2名が参加。
と、ご覧の通り、
楽器をかけもちしているメンバーが多いんですね。
曲によってシンセからベースに持ち替えたり、
あるいはベースからギターに持ち替えたり、
ギターしょったまま、シンセ弾いたりとか、
なんかめまぐるしかったですね。
でもそれもライヴの醍醐味っていうか、
見所になっていて(そう思えて)、面白かったです。
私は正直この手のポストロック、
あるいはインストロック(?)には明るくない。
最近もてはやされ気味なのは流石に分かるが。
なんで明るくないかっていうと、
音源聴いてもピンとこないからなんですね。
いやそれはみんながみんなではないですが。
「おおぅ」って思うバンドさんもいますけど。
でもほとんどいない。だから聴かない。
だから明るくない。っていう寸法。
でも!
このミアオウは、
ラルトラ東京公演に競演ということで、
MySpace[コチラ]でチェックしたら、あらこれが!
すんごく素敵だったので。
一発でファンになりましたね。
キーボードが曲者なのかも。
私の琴線をくすぐってやみません。
ライヴを観て思うのは、
バンドとしてのダイナミズムがあるということ。
愁いを帯びた旋律と冷めたリズムで、
淡々と聴かせていくのかと思ったら、
途中でトリプルギターが煌きながら、
なおかつバーストする箇所があったりで、
すんげえビリビリきましたね。
どこか連れて行かれそうでした。
個人的にはあの煌きの洪水に
もっとドップリ押し流されたかった。かも。
アコギを導入したヴォーカル曲もあったりで、
曲のヴァリエーションと言うか、
ライヴにおけるメリハリもきちんとあって、
すごく好印象でした。
って、もう人気は確立してらっしゃると思いますが。
すごいですねー。みなさんどこで知るのでしょうか。
まったくついていけません。
で、私が1番聴きたかった曲は、
最後に演奏してくれました。
“Hello World”!!
エレクトロなイントロから、
淡々としたリズムが始まり、
そこに舞うシンセが漂わす哀愁。
ミニマルな陶酔感が螺旋を描いてどこまでも伸びていく。
何時間でも聴いていられそう。
間違いなく白眉。
でもただ演奏してるだけじゃなくて、
そこに間違いなく熱が宿っているのが、
とても私は好きです。とても。
観ていて、聴いていて、身体が熱くなりました。
特に“ものすごい”アクションしてるとか、
そういうわけではないのですが、
音と演奏風景が一体化しているというか、
ドンドン高みに上り詰めていく感覚というか、
ステージの熱がこっち側に染み出してくるみたいな、
久々にああいう感覚を味わったので、
すんごくミアオウというバンドさんが、
好きになってしまった―
でもこの日を記したブログを読むと、
しばらくライヴはお休みとのことで、
あら残念。
バンドを見つめなおしたいという言葉もあって、
ドッキリしますが、私は素敵だったと思いますよ、
この日のライヴ。
動き出す日をのんびり待ちながら、
それまでは、音源を楽しみに過ごすといたします。
拍手。拍手。
この日のライヴではないですが、
YouTubeにはミアオウさんのチャンネルがありまして、
そこからライヴ映像を1曲。
NESTでのライヴです。
§ scene of the sunrise §
+ + +
続いてが、アウス。
こちらは基本的には、
Fukuzono Yasuhiko氏のソロプロジェクト。
詳しくは、
HP、MySpace、もしくは「はてな」で。
ラップトップ、シンセをFukuzono氏が担当、
加えてギター、ベース、
ドラムというセット。
音はかなりエクスペリメンタル―
実験的な要素が強いですね。
スペーシーでアブストラクトな音像に、
キーボードがそこはかとなく旋律を鳴らす。
打ち込みのリズムに、
ドラム(Kobayakawa氏)がさらに音を足していく。
Kobayakawa氏、かなりアグレッシヴですね。
ブレイクビーツみたいな細かいリズムも、
身体動かしながら叩くから、一際目立ってました。
というか、バンドセットでライヴをするのが、
この日がなんと2回目!ということで、
いささか、こなれてない感じは否めませんでした…。
ギターさんもベースさんも椅子に座って、
譜面台を眺めている感じだったので、
特に1組目のミアオウのライヴ感との対比もあって、
どうしても熱量の乏しさが目立ってしまった。
演奏会、みたいな。
Kobayakawa氏が1人で“ライヴ”感を出していた。
ステージ後方に移る映像とか、
凝った感じで好きだったんですがねえ。
黄金色の草原を歩いている人物の後姿とか、
空を横切る飛行機の小さい影とか。
曲を演出するにはマッチしていたんですけど。
普段はどういうライヴなんでしょうね。
気になりますね。
ヴォーカル曲(といっても、歌詞を届けるものじゃないです)は、
静謐ながらかなり強い力を持っていて、
引き込まれましたが。
最後の曲は、
これから出る新作からということで、
ラルトラのリンゼィが参加した“waltz”という曲。
当然リンゼィも裏から出てきて、
ヴォーカルとして参加するのですが、
曲の途中でkobayakawa氏が!ミスった!
けっこうどっぷりとアブストラクトで、
難解な曲調が多いのですが、
こういうのライヴでやるのってすげえなあ。
と、私は思ったのですが。
もう一度トライってことで、頭から演奏するのですが、
でもやっぱり途中でモワーンとした、
なんかこれって…?どっかズレてる?
みたいな怪しい空気が流れてもいたような。
ゆ、ゆるい(笑)。
なんとなく尻すぼみで終わってしまって残念。
このメンバーでもっとライヴを積んで、
私の好きなライヴ感が出るのであれば、
それはもうヤバいことになりそうですが。
それが本望ではない、のかなあ。
んー。拍手。
+ + +
そしてラルトラ。
機材セットをするメンバーを繁々。
ジョセフは何気に男前。
長いブロンドの前髪に、無精ひげ。
体格はちょっと丸いけど(笑)。
でもさり気なくお洒落なのな。
パステルイエローのトレーナーに、
ブルージーンズ、白黒ボーダーの細身のマフラーって、
なかなかこれを違和感なく着れる人はいないでしょう。
靴はライトブラウンの革靴?かしらね。
リンゼィも、濃いグリーンのワンピースにストール巻いて、
どこかエスニックな印象もありました。
長いブロンドの髪がとても美しくて、印象的。
そしてこの日は、
元レーベルメイトにして、初期ラルトラのメンバー、
pulseprogrammingのMarc Hellnerがギターで参加。
そしてシカゴの4人組バンドcolorlistのドラマー、
Charles Rumbackがドラムで参加。
と、ここまではフライヤーにクレジットされているのだが、
当日はベーシストとして、もう1人、女性が参加。
ということで、総勢5名がステージ上に。
セットリストを入手できた人もいると思いますが、
私はできていないので、
演奏されたと思しき曲を、とりあえず列挙。
他の地で行われたライヴのレポートを見ると、
1作目からはあまりやっていないとのことだったのですが、
そうでもなかったような。まあとりあえず―
“Sleepless Night”、“Movement”、“Room Becomes Thick”、
“Different Days”、“Morning Disaster”、
“Better Than Bleeding”、“There Is No”、
“Say Wrong”、“Soft Connection”、“Ways Out”。
このくらい。
ちょっと“Ways Out”は自信がないけど…。
あと他にもあったような気がするけど。
“Certainty”もやったのかなあ。
アコーディオンが入ったのは何だったか。
一言で言うと、「バンドだったなあ」と。
そう思います。
音源聞いていると、
どうしてもやっぱりデュオとか、
アコースティックとか、
そういう“おとなしい”イメージが先行するのですが。
実にバンド、でした。
傑作アルバム『Different Days』で大胆に取り入れた、
エレクトロニクスな要素はほぼ皆無。
1発目が“Sleepless Night”で、
これは途中から豪快にギターかシンセか分からんのですが、
音源だと音が急に膨らむんですよ、波がやってくるのですが、
ライヴではどうなるのかと思って、当然そこに注意を払ったわけですが、
来るぞくるぞと待ち構えたわけですが、
その豪快な波は、ギターに差し替えられてました。
でも違和感なく。ライヴ仕様。バンド仕様。
今思えばその1曲目で、
「今日はアナログだぜ」って意思表明したのかも。
アナログといえば、そう、
小品的な楽曲“Different Days”では、トイ感覚満載。
冒頭にぜんまい仕掛け?の玩具をジョセフが
キリキリ回して、ギーコギーコと音を出したり、
ジャラジャラ小さい鈴をギター弾きながら鳴らしたり、
リンゼィ以外のメンバーでハンドクラップしたり(リズムやや複雑)、
幽霊の登場場面に使うような、奇妙な音が出る笛を、
わざわざ1回の演出のためにだけ吹いてみたり。
なーんか非常にホッコリでしたね。曲調もまろやかだし。
1番和んだ瞬間でした。
ラルトラファンには何でもない話ですが、
そしてワイドショー的なネタで、嫌う人もいるでしょうが、
かつてジョセフとリンゼィは恋人同士だったわけで。
それが1st製作中に別離。
ゲストを多数招いて2ndも作ったものの、何かシックリ来ない、
ラルトラは自然消滅してもおかしくなかったのですが、
今一度、恋愛感情ではなく、音楽で結びついた2人が、
テレフォン・テル・アヴィヴのジョシュアを
プロデューサーに招いて作り上げたのが、3rdだったわけです。
そして新作の話も動き出しているのです。
いったい今2人の間にある気持ちはなんなのだろうと、
邪推してしまったりもするのですが、それは何故かと言うと、
この日のステージ、センターにはギター・ヴォーカルのジョセフ、
その隣にキーボード・シンセのリンゼィがいるのですが、
演奏orコーラスのタイミングを計るためなのか何なのか、
リンゼィはたびたび演奏中のジョセフをじっと見るわけですよ。
んー、ちょっとだけ笑顔っていうか、嬉しそうっていうか。
んー、何なのでしょうね(笑)。
でもやっぱり長いことパートナーだっただけあって、
そりゃあもう息はぴったり完璧でしたね。
けっこうヴォーカルの重ね具合とか、入り方とか、
難しいと思うんですよ。キッチリしてない曲が多いので。
それでもぜんぜんぶれることなく、2人の声が重なる。
そしてジョセフの、愁いを帯びた、ザラついたトーンの低い声と、
リンゼィの気品のある伸びやかな歌声、高音は、実に相性がいい。
ライヴでもそれはまったく変わらなかった。
加えて演奏も、バランスがいい。
ジョセフ、リンゼィを中心に据えながら、
決して前に出ることはなく、
それでもラルトラの優美でどこか悲しげな、
そんな世界観をビルドアップすることに成功していた。
ギターが焦燥的に掻き鳴らされるわけでもないし、
激しいシャウトがあるわけでもない、
どこまでも漂い、舞い、時に沈み込むような、
おとなしい音なんだけれど、実にライヴ感がある。
電子的な要素が引かれた代わりに、
そういった熱量が加味されていて、実に好感。
素晴らしかった。
ライヴ中ずっとステージ後方に垂れ流されていた
粒子の粗い抽象的な映像も、とってもナイス。
あと私、1stの“Little Chair”と、
“Room Becomes Thick”が大好きなんですが、
どっちもやってくれた!!でしょ?
後者はフルコーラスで演奏、
そして前者はおそらく本編ラストの、“Soft Connection”、
このラスト部分―アウトロと言ってもいいかなあ―に、
リンゼィが同曲のメロディでヴォーカルを入れてきたんですねえ。
記憶に間違いがなければ。
いやあ、粋な計らいでした。
アンコールラストは、
キーボードの転がる音に導かれて、“Morning Disaster”。
2人で対話するかのようなヴォーカルのやりとりから始まり、
そしてやがて声が重なっていく―
何ていうんでしょう、私の思い込みですけど、
ラルトラというユニットの再始動を告げているように思われて、
ふいに目が潤んでしまいました(勝手に:笑)。
最後はフロアからの大喝采を浴びて、
メンバーもみんな笑顔で去っていきました。
ジョセフとリンゼィも、
「Thank you」と「アリガトウ」を連発してました。
いやあ、本当に大成功!でしたね。
ライヴも素晴らしかった。本当に。
正直こんないいライヴだと思わなかった(笑)。
ごめんなさい。
次見れるのはいつか分かりませんが、
必ずまた行きますよ。
拍手。拍手。大拍手。
あとこれはネタかもしれませんが、
“Say Wrong”を、リンゼィが
「これはとっても昔の曲なのよ。
タイトルは―」
って言って、名前を間違えたんですね(笑)。
したらジョセフが、ギターチューニングしながら、
んでニヤニヤしながら、
「違う、“Say Wrong”だ」
って。
リンゼィもキーボード前で、座ったまま、
しばし無言で目をぱちくり、
「あら、私間違っちゃった(wrong)。
でも曲は覚えてるから大丈夫よ。フフフ」
みたいなやりとりがあって。面白かったです。
“wrong”に引っ掛けたネタなのかなあ。
どうなんですかね(笑)。
フフフ。
あ、っと、
ミアオウさんのブログで、
この日のラルトラの演奏が、若干見れますので、是非。
コチラ。もしかして重いかも。
追加で、この日のライヴ映像を
L'altraのMySpaceにて発見したので、
ご紹介しておきます。
§ Black Arrow@Tokyo shibuya o-nest §
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