2008.11.29‐「Some Get Town Tour in LIQUIDROOM EBISU」




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行ってきました。
サムゲタンツアー・イン・トーキョー。

まさか五十嵐氏がこんなに早く、
音楽活動を再開するとは思わなかったし、
よもやライヴメンバーに女性が入るとは思わなかったし、
なんでte’の河野さんが入ってるのよとビックリだし、
the telephones(テレフォンズ)、
スパルタローカルズと、
東名阪ツアーまわるなんて、思わなかったしで、
いろいろ驚き尽くしです。

まあそんなこんなで、
東京会場は、恵比寿はリキッドルーム。
私はあんまり好きじゃないんですが(笑)、
上って降りて、みたいな構造が。

+ + +

1発目のテレフォンズは、
いやあ、予想していたよりも、
幻惑的だった!!
音源だと音が乾いている印象が強いんだけど、
だから、もっとパッキパキでビコビコかと思ってた。
つまり、思ったよりもサイケでロックだった。
つまり、スーパーに並んでいる魚を買って調理、というよりも、
船上で吊り上げられたばかりの魚をその場で食らう、とでもいうような。
つまりワイルド。

長髪+ヒゲ+サングラス(序盤で外すが)のVoさんが
着ていたAC/DCのTシャツに象徴されるような、
ヘヴィメタリックな印象も多分にあり、
もちろん躍らせる要素も多分にあり、
古いんだか新しいんだか分かりませんが、
とにかくぶっ飛ばしてましたね。
キーボード・コーラス担当の彼(ほっそい!)の、
踊りの素養があるんだかないんだか
よく分からない踊りがまた凄くて(笑)、
ずっと音(主にドラム)にあわせて動きまくり、
ウネウネ、にょろにょろしまくり、ときにダイヴありで、
視覚的興奮を促す要素を一手に引き受けておりました。

照明も使いまくりで、
バックで縦に並んだ照明が、
バッキバッキにギラギラしだすとコレがすげえ。
アメリカン・ロック(適当)みたいな。
密かにおかれたミラーボールが、
密かにキラメキを振りまくことで、クラブ的イメージを助長し、
フロア最前線の踊り(というかモッシュ)に拍車をかける。

会場の熱量を1番上げたのはテレフォンズじゃないですかね。

ということで、
間違いなく、「音源よりもライヴ」なバンドさん。
私は“Love & Disco”がやっぱり(笑)、1番好きで。
最後にやってくれましたね。だんとつPOP。
締め用に作られたんじゃないかという様な出来っぷり。
もっとこういう曲を…って思っちゃうのは素人のダメなトコかね。
フフフ。

でも面白いバンドさんでした。
ファンも、もうちゃんとついておられるようだし、
コール&レスポンスもバッチリ決まってたし(笑)、
やっぱりライヴが決め手になってるのかなあ、
って思いました。
意外に喋りは普通でそこもまた(笑)。

拍手拍手。

最後に、“Love & Disco”


- the telephones : Love & Disco -

+ + +

スパルタローカルズは、
先のテレフォンズの勢いを引き継いだかのような、
アグレッシヴなパフォーマンス。
でも、私は初見であったので、
正直今まで見聞きしたレポートから、
もっとキレキレなものを予想してました。
グワングワンっていうか。
そこはテレフォンズとは逆で、
実に演奏はカッチリとしており、
アンサンブルも決まっていて、
とてもとても、カッコイイものでした。
歌詞はちょっと聞き取りづらくて、
作品を聞き込んでいない私には届きませんでしたが。

でもコウセイ氏の白目気味な痙攣的ギタープレイや、
積極的に客をあおる動きであったり、
途中で床にぶったおれてケツだけモソモソ動いていたり、
攻撃的、ロックの暴力的な部分を感じさせるパフォーマンスは、
面白い、と同時にカッコよかったですね。

ギターチューニングしながら、
間が気になってしまったのか、
なぜかマッキーの“もう恋なんてしない”を、
尋常じゃなく良い声で歌い上げるコウセイ氏。
フロアも拍手喝采でした(笑)。
私も、「あー歌うめーなっ!」て(笑)。

でも絶対もっとキレキレなときありますよね?
演奏時間が短かったこともあり―
多分3〜40分―なんとなく消化不良。
いや腹八分目で丁度いいと言えばそうだけど。

おそらくスパルタローカルズは
まだまだこんなもんではないと思うので、
また観させていただく機会があれば、そのときに期待。

+ + +

そしてトリは“犬が吠える”。
さすがにフロアの空気変わりましたね(笑)。
見事にこれまでの流れをぶった切る緊張感。

* * *

楽曲のタイプは、
大きく分けて2つ。
テンポの速いビートに、
細かいギターリフが炸裂する、
いわば、“イエロウ”の流れを汲むようなタイプ。
そして、もう一方が素晴らしかったのだが、
ダブルギターの力を発揮した、
90年代的な“溜めて爆発”的な構成を持つ、
大袈裟、もしくはドラマチックな、
きわめてメロディアスな楽曲。
これが、本当に素晴らしくて、
決して最新型ではないけれど、
そう、どちらかといえば、
奇妙な安心感を持って聴けてさえしまうのだけれど、
ところどころで聞き取れる歌詞を拾いながら、
私は涙を流してしまった。

 「独りぼっちは怖くないよ
 愛されることよりも」


歌詞の世界観は、
やはりsyrup第一期終了時に、
五十嵐氏自身が予見していたように、
普遍的な事柄を歌っているように思える―

 「うん。自分がもう思春期じゃないっていうのは
 どうしようもないから。
 そこは否定しないで。
 でもなんか、歌になるものを探していって、
 今までみたいに……ものすごい傷付いたりとかね、
 初恋の時の喜びとかね、そういう感情のリミットを
 音楽に閉じ込めたりとか、そういうことは
 多分難しいけど、本当の日常の中にあるものを、
 なんか音楽にしていく、のかな」

 ―そうだね。

 「また新たに定義自体を書き直して、
 これがロックンロールです、って言いながら続けていけば、
 きっと俺は幸せなままでいられると思うんですよ。
 人はそれによって感動したりしないかもしれないけど。
 でもそうじゃなくて……なんか、
 より、人間……そういうのを描けたらいい。
 汚いとかキレイとか、
 そういう分かりやすい価値観じゃないところで、
 ニュアンスが出せるようになったら。
 今、それを話せるようになれたらなって思いますけど」

(『音楽と人』,vol.126,p.170)

+も−もあるけれど、
けれど、ひっくるめて、
それが生とでも言うような。
前にも他のテキストで書いたけれど、
それは、その萌芽は『Mouth to Mouse』で、
すでにあったと私は思っているし、
だから決してsyrup16gと、新しいバンドとの間で、
「歌うことが変わった」とは思わないし、
明るくなった、とも思わない。

ただ、サウンドは変わったと思う。
常時ギターが2本あるということが、
1番大きい要因かもしれない。
te'の河野氏(まさかの人選ですよね)のギターも、
決して流麗な旋律を奏でているわけではなくて、
やはり空間を埋める、埋めているという印象が強い。
シューゲイズ的、という言葉は言い過ぎだと思うけれど。
あと、ポストロック的な、そういう要素も私は感じない。
もちろん空間の埋め方にも色々あるわけで、
ときにはノスタルジックな響きを出すこともあれば、
攻撃的なリフが飛び出すこともあり、
それらは決して楽曲のイメージを損なうものではなかった。
そして思った以上に、ドラムの音がでかい。
バスドラムとか、久々にジンジン身体に響きました。
全体的に楽器の音が大きめで、そのためか、全体像は極めて骨太。
見事にバンドサウンドなんだけど、
でもどうしても“バンド”とは思えなくて、
やはり“集められた人々がライヴのために演奏している”
という、さびしいイメージがチラチラと頭をかすめること多し。
でも、ところどころで声は埋もれてしまうものの、
先に書いた“溜めて爆発”系の楽曲では、
珍しく(笑)妙に聴き取りやすい調子で歌を届けてくれて、
骨太なバンドサウンド+聴き取りやすい明瞭な歌いっぷりに、
実に攻めの姿勢を感じ取りました。
でも聴き取りにくい曲はやっぱり聴き取りにくくて(どっちだよ:笑)、
もう何を歌っているのか、分からない楽曲もありましたね。
歌詞が定まっていないのか、それとも演奏の関係か、
あるいは、音のバランスの関係か。

まさかのTシャツにジーンズという身軽な服装。
syrupにあった“黒”は、そこにはなかった。
パーマがほとんど解けて、伸びかけた長い髪を、
演奏中、時折鬱陶しそうに掻き分ける仕草が、どこか微笑ましい。
相変わらずくたびれた印象だし、
見た目は昔の方が格好良かった気がするけれど(?)、
肩の荷が下りたような、フラットな感覚が漂っていた。
syrupの最期にあったような、清清しさとはまた違う。

スタートラインに立つ者の、期待と不安。

 「歩き出そうぜ 薄目開けて」

でも大丈夫。
私は、やっぱりあなたの作る曲は素晴らしいって、
そう思えたから。難しいこと考えずに。素直に。

この“犬が吠える”ってのが、
正式に五十嵐隆の活動の場になるのか、
それとも一時的なものなのか、
私は後者だと思っているのだけれど、
なぜってなんとなく、なんとなくですよ、
しっくりこないんですよ、
“犬が吠える”って名前が。
ただそれだけ(笑)。

でも本当に、どうなっていくのか、
楽しみだなあ。
音源化が、待ち遠しい。

言葉らしい言葉は発せずに、
冒頭の登場に飛ぶ「五十嵐〜」の声援に、
ギターを肩にかけながら、ニヤニヤ笑いながら、
マイクの前で横に手を振り、

 「いやいや、そういうんじゃないから」

って、優しい声で笑いながら。
フロアをちょいと指差して、

 「おかしいからっ」

って笑いながら。

とりあえず、元気そうでよかったです(笑)。
これからも、この人の歌が聴けるんだなあって思えて、
ただ素直に、嬉しいです。


追記:
しかし誠に残念なことに、
犬が吠えるは、2009年4月、突如解散しました…。
原因は不明。
残念でなりません。
ホントの本当に、やめてしまうのか・・・。

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引用文献

金光浩史. 2004. 終わりと始まり.
 音楽と人, No.126, 170. シンコーミュージック・エンタテイメント


2008/12/02(最終修正日:2009/08/03)
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