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シルバー事件を追想(追走)する。[3/4] ---------------→ page#1#2#4


三角塔に入った「デカチン」の話を書こう。
三角塔の中には「シェルター・キッズ政策」および
「アヤメ・マスプロ」に関する資料が現存している様子だ。
主人公(デカチン)は10本の三角塔を回りながら、
それらの資料に目を通していくことになる。
ここで目にすることができるのは単なる文書であり、
これを信じる理由はどこにもないのも確かだ。
それに、およそ20年前の資料(おそらく極秘)がそのまんま、
というのも腑に落ちない。
しかしこれらの資料を読むことで、
やはりこの2つの計画――「シェルター・キッズ政策」、
「アヤメ・マスプロ」――は、
派閥を超えたものだったと確信ができるのだ。
これから、点在する資料の内容を僕なりにまとめてみようと思う――

まず、「シェルター・キッズ政策」は
「カムイ・マスプロ」、略してK・Mと呼ばれ、
「アヤメ・マスプロ」はA・Mと呼ばれている。
以下でもそう表記する。
三角塔から得られる情報から推察する限り、
これら2つのプロジェクトの目的は、
眼球白銀化現象の発現プロセスの解析」であるということになる。
いきなり何のこっちゃという感じだが、
この時点ですでに、「K・M」が
「FSOの権力奪回ための兵士作り」であるという話が、
揺らいでくる。
単刀直入に書くと、
伝説のヒットマンことウエハラカムイは、
どうやら“銀の眼”を持っていたようだ。
彼は2歳の頃に生体移植実験に参加し、
そのときに左眼を移植、
これが霊長類のものではなかったのではないかと、資料にはある。
しかも具体的な提供生体は不明…。
この移植後に何らかの作用でカムイの眼球が白銀化したのでは、と
「K・M」、「A・M」の計画を執行した側は踏んでいるようだ。
しかしなぜ“銀の眼”にこだわるのか、
その疑問を解く次のような記述がある、

 『白銀化現象の発現メカニズムが解明されることは、
 人類の長年の夢である不老不死の実現に向けて大きく前進するものである』


これはシェルター・キッズ政策執行管理統制局の、
主席統制管理官の言葉だ。
つまり「K・M」、「A・M」における
眼球白銀化現象の再現は、
不老不死実現の為に行われようとしていたのだ。
そう考えられる。
まず初めに事前研究に基づいて
「K・M」が1440人の4歳男児に行われたようだが、
ここでは発現プロセスを確認できたものの、
結局白銀化までには至らず、
その後「男児で駄目なら女児」ということなんだろうか、
「A・M」が開始されたようだ。
ここでも表記は1440名の女児となっているし、
実験結果も「1440名うち○○名が○○」、
という表記をしている。
しかし先にも言ったように、これは偽りで、
実際は100人の女児が用いられたのだ。
資料を信じるならば、この「A・M」も
また失敗に終わったことになる。

このプロジェクトの徹底ぶり、
そしてそれゆえの冷酷さも資料からは読み取れる。
プロジェクトの終了と共に関係書類はすべて破棄、
そして階級の低い職員は処分されたようだ。
処分役は公安部(管理統制局か)。
この公安部が行政監査警察局のそれと同一かは分らない。
検査において「白銀化の兆候あり」と
間違った判断をした職員もただちに処分。
また計画に用いられた子供たちはグループに分けられ、
各グループに設置された管理官によって教育されたが、
成績不良者が25%を上回ったグループの管理官も処分されたようだ。
この処分の執行役は管理統制局公安部。
さらに教育不適格対象児も同様に処分。
かなりの冷徹ぶりだ。
関係書類がすべて破棄されたのなら、
主人公が読んでいるこの書類は何なのだということになるが、
どう説明がつくのだろうか?
「誰か」が主人公に読ませるために、予め置いておいたのだろうか。

三角塔の中でクサビと再会した主人公は、
彼から自分が改めてカムイだと確信させられる。
主人公は次のカムイとなるべく
この場所を訪れたのだと、クサビは言う。
ここでカムイの人生についての
膨大な情報を送り込むはずだと。
そう考えると、
主人公をこの場所へと導いた事件なり人物なりは、
すべて計算づくだったということになるのだろうか。
大元をたどれば、
まず三角塔へ至る地下へ主人公を導いたのはキンジョウだ。
そして地下通路を三角塔へ導いたのはサクラ。
しかしその2過程の間、地下に入ってからサクラに会うまでに、
主人公は列車に乗っている。
列車は経路の途中でレールを切り替えられ、
この三角塔の手前に着いたのだ。
そう考えると主人公をここへ導いたのは、
そのレールをいじった人間だ。
その人物については後で考えようと思う。

ここで一旦クサビたちの話は中断し、
そのころモリシマ・トキオが何をしていたかを書くことにする。
幸か不幸か、僕はここまでの文章で
ほとんど「トランスミッター」の側にしか触れてきていない。
せっかくなので「プラシーボ」、
つまりモリシマ・トキオの側のシナリオには
このまま極力触れずにいようと思う。
正直に言うと単にまとめきれないだけなんだけど(笑)。
とにかく、ここから先、文章中で触れる
「プラシーボ」側からの情報は
「シルバー事件」の真相を推理するために
最低限必要なものにとどめておく。

クサビたちが三角塔にいる頃、もしかするとそれより前、
トキオはある場所である人物
(おそらく■■の■■■■■■■)と対面していた。
この対面がトキオの内側、
つまり精神世界(睡眠時の夢のような)で行われている
との解釈もできるようだが、
僕は少なくとも一度実際に会ってきているのだと思う。
「プラシーボ」の最終シナリオ、
『report*5:hikari(光)』中では
その対面時の会話を
内的世界で追体験しているだけなのだと思う。
トキオはその対面で、
自分がシェルター・キッズであることを確信し、
自分が計画における「バグ」であったことを知る。
欠陥品のため、記憶を消され「日常」に戻されたのだと。
(この一つ前のシナリオ『report*4:ai(愛)』の中で、
トキオが養子であること、
そして幼少期の記憶がはっきりしないこと、
これらのエピソードがさり気なく
伏線として盛り込まれているのはお見事だ。)
またトキオは、その人物から「アキラ(主人公)を殺せ」と言われる。
なぜ「欠陥品」であるトキオが
生きていられたのかは確かではないが、
もしかすると三角塔内の資料が誤り
というか偽りだったという可能性もある。
実は不適格対象児は処分されなかったのかもしれない。
またあるいは、トキオは途中まで
優秀にプログラムをこなしていたようなので、
完全に不適格とも言えず、
一旦「日常」に戻され観察されることになった…とか。
また、もうひとつ別の可能性も考えられるが、これはまた後で。

次に、トキオが「アキラを殺せ」と
命令される理由について、考えてみる。
トキオと話している人物は、トキオに対して
お前はカムイと接触して生きていた人間だ」と言う。
これは何を意味するのだろう。
この「カムイ」と言うのは誰をさすのか。
トキオは『デコイマン』の中で、カムイらしき存在と接触し、
意識をなくしたところをアキラ(主人公)に助けられている。
確かにトキオは生きていた。
ただ、トキオは実際にカムイに会ったのではないだろう。
なぜなら『デコイマン』で
殺人を行っていたのはアヤメであり、
心神喪失状態のカムイは彼女に監禁されていたのだから。
会えるはずがない。
とするとトキオが
バビロン・ショッピングセンターで直に接触したのは、
アヤメ、もしくはアヤメに
殺害された女、ということにならないだろうか。
アヤメや彼女の被害者は、
先に書いたように「A・M」における「アヤメ」である。
彼女たちは「カムイ」と同じような環境で育ち、
なぜかしらカムイに惹かれている
(事実彼女たちはカムイの子を宿している)。
そしてトキオは欠陥品ながらも「カムイ」のストック
(「K・M」の目的が兵士育成であろうと
眼球白銀化現象の発現だろうと)である。
そう考えると、トキオが触れたのは、
「アヤメ」たちの中にある「カムイ」への思い、
なのかも知れない。
あるいは彼女たちの中に潜在する
「カムイ」の因子であったかもしれない。
またあるいは自身の中に眠る「カムイ」だったのかもしれない。
これらの3つのどれであろうと、
それは他ならぬトキオがシェルター・キッズだから、
さらに言えば彼がある種「カムイ」だからだと、僕は思う。
つまりトキオは「カムイと接触して生きていた」と言うよりも、
「カムイと(間接的にも関わらず)接触できた」のである。
考えが飛躍しすぎかもしれないが、
これは欠陥品だったトキオが
実は「カムイ」になる資格を持っている
ということを意味しないだろうか。
そうすると「カムイになろうとしているアキラ」に勝てるのは、
これまた「カムイになれるトキオ」
ということにならないだろうか。
だからトキオは
アキラを殺すことはおまえ自身が背負った業なのだ
と言われたのではないだろうか。あくまでも僕の考えだが…。

まあそれはともかく、
トキオはアキラを殺すか、逃げるか、選択を迫られる。
トキオはバビロンでの一件以来、
死者の思念、残留思念とでもいうべきものを
受信できる(してしまう)ようになり、
事件に関わる様々な人物たちの
思念が頭の中で鳴り響く状況に頭を痛めることになる。
(この辺の霊媒的能力は田口ランディの
『コンセント』に通じるものを感じる。)
トキオがなぜそんな能力を持つようになったのかは、
やはりバビロンでの一件で、彼の中に眠る
「カムイ」が目覚めたからであろう。
なぜなら主人公(=次のカムイ)もまた、
『ルナティクス』の中で
死者の巨大な思念を感じているからだ。
とてもサイコな思念だが。
(余談だが、トキオが『光』の中で
シモヒラ・アヤメの思念にも
感応していることを考えると、
もしかすると『デコイマン』の最後で
コダイ・スミオに逮捕された後、
アヤメは死んでしまったのかもしれない。
もしくはトキオが生者の思念にも感応できるのかもしれないが。)
そしてトキオは、アキラを殺すことで、
その残留思念たちの絶え間ない話し声も止むのだと、
男から言われる。
逆にアキラを殺さず逃げることは、
その残留思念たちを引き連れて生きることを意味する。

話をクサビたちに戻すが、
彼らは三角塔内のエレベータからTV塔へと上る。
その過程でクサビは、自分は「シルバー事件」で
カムイを逮捕したのではなく、撃ち殺したと言う。
真相を知るのは自分とムナカタとコトブキだけだと。
ここで、大分前に書いた疑問、
「『シルバー事件』で逮捕されたカムイはどうなったのか」
が解決する。
そのカムイは死んでいたのだ。すでに。事件発生直後に。
そして新たな謎が発生もする。
クサビが言うように、
コトブキは事件の真相を知っていたのなら、
なぜ彼はモリカワに「シルバー事件」を
調べさせたのだろう?
すべてを知っていたわけではなく、
あるレベルまでしか知らなかったのかもしれない。
だからさらなる調査を求めてしまった…そういうことだろうか。
ここは少しはっきりせず、僕の中ではモヤモヤした感じだ。

さて、主人公たちは、
TV塔の最上階で1人の少年じみた男と対面する。
この時点でこの男の正体は分らないが、
眼鏡をかけて坊ちゃん刈りの男は回転椅子に腰かけ、
膨大な量のコンピュータに囲まれている。
主人公たちが近づいたとき、
なぜか彼はニヤリと笑ったように見える。
クサビは彼を撃ち殺せば、
主人公の呪縛、すなわち
「次のカムイとなって人生を生きる」必要はなくなると言う。
その言葉は、「次のカムイとなる人物への情報の注入」、
それを目の前の小男がやっているのであろうことを、
暗に示している。
今や、主人公は彼を生かすも殺すも
自由にできる状況にある――
そして、
クサビが主人公を鼓舞する中、
一発の銃声が響く……。

この後、クサビとムナカタの会話があり、
続いてクサビからアキラへの
(それは須田さんから僕らへの、かもしれない)
あるメッセージが送られる。
クサビとムナカタの会話から、
主人公の存在というのは、「K・M」において育成され、
世に放たれた何人もの「カムイ」の人格を一括りにしたような、
とんでもない存在だとの推測ができる。
つまり主人公の中にはそれまでの
「カムイ」が全部入っている、
あるいは「次のカムイ」となることで
入ってくるのではないかと…。
さらに言えば、ムナカタの
「アキラは噂どおりフォーマット・カムイの…?」
という言葉も気になるが、これは一体何なのだろう?
もしやフォーマット・カムイの子供?
まさかそんなことはないだろうか…。
・・・・・・。
それはさておき、
そんな主人公がどんな選択肢を選んだのか、
それは最終ページで触れることにする。

一方でトキオは、先と同じ男から、
この24区の裏の仕組みについても説明を受けていた。
それによると、この社会(24区)をコントロールしているのは、
「ネヅ」という名前を持つ天才プログラマーだという。
彼は現区長のハチスカ・カオルが初選挙戦のときに掲げた
24区の改革案、都市計画を作り上げた、いわばブレーンであり、
そこからこの社会に関わり始めたようだ。
野心はないが、とにかくプログラムは天才的で、
彼がキーボードを叩けば文字通り世界が変わり、
なんと派閥間のバランスさえ彼が操作していると言う(!)。
それができるような基本構造を整えたと言うが、
そんな途方もない――それこそ途方もないことが、
社会の裏で行われているという事実、怖すぎる。
今「裏」という表現を使ったが、
男との会話中にトキオが驚いていることからして、
「ネヅ」が24区をコントロールしていることは、
公にされていないようだ。
当たり前か。
ということはネヅが作った都市計画、
その真の姿はきっと区民には
明らかにされていないのだろう。
彼が作り上げた都市計画、
それがどのような形で選挙戦の際に
公表されたのかは分らないが、
シェルター・キッズ政策もその中には含まれていたようだ。
ただし実行したのは、
トキオと話した男に言わせれば、「TRO」とのこと(!)。
やはり「K・M」は
「FSOの権力奪回のための兵士作り」ではなかったようだ。
しかし何故TROが? 何のために?
もはやここまで来ると
「K・M」、「A・M」の真の目的が何なのか、
それがさっぱりわけわからん状況になってくるが、
絞り込むことはできる。

1)眼球白銀化現象発現プロセスの解明。
2)パーフェクトな都市構築のための従順な区民作り。
3)やっぱり実は「K・M」は、
 FSOの権力奪回のための兵士「カムイ」作り、
 そして「A・M」は「カムイ」に対抗するためのTROの「アヤメ」作り。

3)はいかんせん弱い気がするが、
別にまるで可能性がないわけでない。
得られた情報をすべて真実とすると、
弱くなってくるだけなのだ。
しかし僕自身は1)2)
合わさったような目的ではないかと踏んでいる。
白銀化現象の仕組みが解明できれば、
それはつまり不老不死の区民を生み出せるということだ。
しかも彼らシェルター・キッズはその教育行程で、
(おそらく)管理側の言うことを
よく聞くように育成されてきているはずだから、
計画が成功すれば、不老不死+従順という
これ以上ないほどパーフェクト(?)な区民による、
パーフェクトな区が作れることになる。
まあ不老不死がパーフェクトかどうかは
この現実世界での高齢化社会のデメリットを考えると
簡単には肯定できないが、
なにぶん育成に成功したシェルター・キッズは
きっと従順な区民になるので、
子供を作らせようと思えば
ガンガン作らせられるのかもしれない。
だから今の日本のような
高齢者だらけな区にはならない…のかもしれない。
まあ都市計画すべてが「ネヅ」の考えで動くとすれば、
どんな問題も万事丸くおさまるのだろう
(身もふたもない丸投げです:汗)。
(さて、ここまで読んだ人は、
おそらく僕と同じ推測をしてるだろうけど、
TV塔の最上階にいた人物こそがきっと「ネヅ」でしょう。)

ということで、僕なりには「K・M」、「A・M」は
白銀化現象の解析+従順な区民の育成といった
二重の目的があったのではないか、
そう考えているわけです…
ここに至るまでが長かったですが…。
しかし従順な区民を作るならば、
なぜカムイなどという犯罪者を
そのモデル、フォーマットとして用いたのか?
トキオと同じく、僕にもそんな疑問が出る。
この疑問については、
トキオと会話している男は、
「カムイは従順だった」からだと言う。
これは、暗殺者としてクライアントの意思に忠実だった、
ということだろうか。
男はカムイから犯罪力を削除できれば最高だったと言う。
確かに“銀の眼”を持ち不老不死、
そして従順であれば言うことはない。
しかし、計画で作られた「カムイ」は
そうはならなかったようだ。
先に書いたように、1999年の「カムイ」は
国家重要人物7人を殺害している。
これが誰の思惑も関係なく、
どこからの依頼でもないならば、
まさにカムイは「従順」を大きく逸脱、
「暴走」したことになる。
また、クサビが言うように「シルバー事件」発生後に
オリジナルのウエハラカムイが射殺されているのであれば、
「K・M」における
「ウエハラカムイ」をモデルとした人格形成など
不可能になって来はしないか。
ウエハラカムイを、死後徹底的に調べ上げ、
彼が育ったのと同じような環境をもって、
シェルター・キッズたちの育成にあたったということか。
しかしいずれにせよ、
「カムイ」の育成は、従順どころか、
極めて危険な存在を作り上げることになってしまった。
男の言に依れば、
『人為的なプログラムを超えたプログラムが作動』したのだ。
しかも“銀の眼”も発現させることができなかった。
「ネヅ」の都市計画は失敗したということだろうか?
「カムイ」にならなかった「シェルター・キッズ」たちは
24区のどこかで従順に生きているのだろうか?
だとすると、従順さにおいては
まあ一応の成功を見ていることになる。
しかし、それではなぜ危険な「カムイ」は
継承され続けていくのか?
従順でないカムイなど役に立たないはずだ。
暴走する区民などいらない。
もしかすると、「カムイ」が継承され続けていくのは、
「カムイ」に“銀の眼”が発現する可能性が
未だ捨てられていないからだろうか?
だから繰り返し危険な「カムイ」を継承しつづけていく…?
しかし、だ。
だったらなぜ男は「カムイを殺せ」と言うのか?
危険だから殺せと言うなら、
初めから継承させなければいい。
ここで、「継承」には、
政治的な思惑は関係していない、そう考えてみよう。
「次なるカムイ」は「カムイ」故に継承の為にTV塔を訪れる。
そこで何か政府と絡んでいない独自のプロセスで継承を行う――
いや…だとすると、
「ネヅ」を殺すことで主人公が解放されるという、
その論理が破綻してしまう。
やはり「カムイ」の継承は、オートメーションにせよ、
ネヅが管理しているコンピュータで行われる、
その考えが妥当に思える。
とすると、そう、「ネヅ」が政治とは関係のない部分で
「カムイ」継承の操作を行っているのだと考えると、
つじつまが合わないだろうか。
『光』の中でトキオの中のある思念が書き記す言葉に、
ネヅがカムイの存在を面白がっている、
興味を持っているのだと、そんな記述が出てくる。
ヤツ(ネヅ)は自らの都市計画に
「カムイ」がどんな影響を及ぼすか見てみたいのだと。
一方で、トキオと対話している男はどうやら、
区にとって「カムイ」は危険だから、
継承はして欲しくないようだ。
しかし「ネヅ」はやってみたい。というかやり続けている。
かといって男はネヅを殺すことはできないのだろう。
なぜならネヅは、24区の都市計画そのものであるからだ。
彼がいなくなったら、
24区は今よりさらに混乱に落ち込むかもしれない。
だからネヅは殺せない。
だったら、「カムイ」を殺す。
そう考えるのが、一番しっくり来る、僕としては。
主人公がネヅを殺すことで解放されるという論理にも、
この考えで説明がつけられるだろう。
さらにおそらく主人公を見えない力で
地下〜三角塔〜TV塔へ導いてきたのも
ネヅなのではないだろうか、僕はそう考える。
まあなんでもかんでも謎な部分は
「ネヅがやった」ことにすると、
確かに都合は良いが、それはそれでつまらないかもしれない。
面白いのは、ネヅと対面するときの画面下に
“ブラックボックス”という表記が出てくることだ。
ブラックボックスとは、機能は分っているが、
中で何が行われているのか、その構造が分らない装置をさす。
つまり「ネヅ」の部屋は
『シルバー事件』という複雑な物語の「謎」を、
すべて引き受けて消化してくれてしまう
ある種の装置なのだ、
というのは穿った思考をしすぎかもしれないな。
単に「ここは24区を支配しているけど
何やってるかは不明な部屋」的な意味かも。

さて、ここまでを整理すると、あと書くことは、
a)主人公はネヅを殺したのか?
b)トキオは主人公を殺したのか?
という部分が中心だろう。

しかし、まだ大きな謎があることを忘れてはいけない。
ここまで投げ出さずに読んでくれた、
素晴らしい方々に問いかけたい。
もしオリジナルのカムイ(シルバー事件を起こしたカムイ)が
“銀の眼”を持っていたならば、
そして“銀の眼”が本当に不老不死であるならば、

「なぜクサビはカムイを射殺できたのか?」

これについては、
物語のエピローグ『case#!:談話室タムラ』で、
その謎が明かされる――


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2003/12/27(最終修正日:2006/10/25)
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