2005.08.25「SYRUP16g vs. VOLA & THE ORIENTAL MACHINE in LIQUIDROOM ebisu」


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2005.08.25−「Syrup16g vs. Vola & The Oriental Machine in LIQUIDROOM ebisu」 Home ◆Set List

シロップ16gと
ボラ・アンド・ジ・オリエンタル・マシン(以下ボラ)の
スプリットツアー。

まず初めに言うと、
えー、うーん、
演奏された曲が、まったく分りません! もうまったく分らん!
まったくもって知らん!
ボラは音源のリリース自体がないし、
シロップもこれまた新曲連発、
たぶん今までにもやってない曲?かな?
少なくとも僕が思い出せる曲は演奏していなかったので、
初披露にしろ、そうでないにしろ、
僕には「初聴き」という言葉がよく似合う。
シロップの曲は最後の“リアル”しか分らんもう。
たぶんボラが8〜9曲で、シロップが11〜12曲だから、
演奏されたのは合わせて20数曲というところか。

スプリットツアーってものが
僕は初体験だったのであるが、
どうなんだろう、
互いのバンドが同数程度の曲を披露するのが
この手のツアーの常なのだろうか。
そう考えないと、シロップの演奏曲数が少ないことの
説明がつきにくいのですよ、僕の中では。
いや、そうか、シロップのドラマー中畑大樹氏が
ボラのドラムも兼任しているが故に曲数がセーブされたのか、
そんな考え方もある。

僕は前回観た2005年5月7日のライヴレポート(→click!)において、
「アンコールで旧曲連打をした」シロップについて、
どちらかというと否定的な意見を述べ、挙句の果てには
「新曲だけで終わってもそれはそれでよかった」、
などという旨の記述をしたが、今回がまさにほぼそうであった。
先にも書いたように“リアル”しか旧曲は演奏されず、
あとはすべて未発表曲であった。
だがどうだろう、気が付けば僕は、
やはり心のどこかで旧曲を求めていた(笑)。
いやーすいませんほんと。
やはり知ってる曲を聴けなきゃ聴けないで、
なんかこう不可全燃焼感が募ってしまい・・・、
ほぼ新曲だけで終わるのはそれはそれで面白いのですが、
やっぱり、もうちょっとだけ、知ってる曲も、聴きたかった・・・かな(笑)。
なんて〜ワガママで〜すいません〜と思う。

■□■ ■□■ ■□■

開演時間の7時を過ぎた頃、
怪しいSEと共に、暗い紫の光の中に現われた、
ボラのメンバー。
どこかオドロオドロしいイメージ。
そしてサイケデリックなにおい。
初めて生で見る、ボラの核イナザワ・アヒト氏は
なんとなく分ってはいたが、やはり小柄であった。
飾り気のないボタンシャツを、肘元までまくり上げ、
グレイに見えるパンツを履いている。
その左隣についたベーシスト有江嘉典(ありえ・よしのり)氏は、
打って変わってワイルドな風貌だった。
エリのでかいジャケットのようなものをきて、
顎鬚(あごひげ)を生やし、
倒れたら起こせないくらい大きなバイクが似合いそう(勝手)。
ついでに勝手なイメージですいませんが、
イメージ的には俳優の高知ノボル(←漢字分らん)さんであった(笑)。
アヒトさんの右にはギターの青木裕(あおき・ゆたか)さん。
ボーダーシャツに普通のパンツだった。髪が目元まで垂れ下がってきている。
後ろについたのはパッション溢れるドラマー中畑氏。
前回と同様半そでシャツにタイを占め、
さりげなくお洒落な空気をまとっていた。
5月にはつるつるスキンヘッドだった彼の髪は
もう普通に加工できるまでの長さになっており、
色は金髪、形は全方位拡散型のツンツンヘアーになっていた。
ってか伸びるの早くねっすか?(笑)。

まったくボラの音を聴いたことがなかったし、
事前に頼りにできる情報もなかったので、
僕は興味津々でボラの第1音目を待った・・・
と思ったらいきなりベースの有江さんの
コーラスから入ったっしょ?(笑)

ボラの音は何というか、
リズムは隙間があって凸凹なようでいて
しかし平板なときもあって、
ギターはメロディというよりも
リフを多用しているように思える。
僕はどちらかというと旋律を奏でるギターが好きなので、
ところどころで入る青木さんのギターソロに燃える。
カッコいい。
アヒトさんの歌声は聞くところによると
元ナンバーガール〜現ザゼンボーイズの向井氏と
似るところがあるという噂であった。
また、ナンバーガールのラストスタジオアルバム
『ナム-ヘヴィメタリック』の中で披露されている
アヒトさんの歌声を聴いて、
僕も「ああ確かに似ているかもしれん、そうかもしれん」、
と思っていた。
しかし今回聴いてみるとどうだろう、
向井秀徳、という感じではない。
ところどころしゃくりあげる感じは似ていなくもないが、
声の調子は、僕はむしろ
AIR(エアー)の車谷さんに近いんじゃないかとも思った。
あちらほど「繊細さ&ほのかなクールさ」は感じなかったが、
もうちょっとどうかすると耳障りなキーンとした
金属的な響きを持ってしまいそうなところが似ているように思う。
またそんな調子なのに、どこか丸みがあって、
粘着的なところも似ているように思う・・・、って
他のアーティストとの類似点を挙げるなど、失礼ですな。
どうでもいいかっ。おしまい。

また、中畑さんのドラムの音が、
音質が今回は良かったのだろうか、
僕の耳にはとても気持ちよくて、痛快で、
聴いているうちにヤバイヤバイ身体がドンドン熱くなった。
ッポコンッポコーン!ってスネアの音がとっても刺さってくる感じ。
熱い。熱いです。どこで叩くときも熱いのだな彼は(当たり前:笑)。
とにかく、かつてない刺さり具合であった。

4曲目あたりには、
青木さんがカキ鳴らすシュワシュワと歪んだノイジィギターに
アヒトさんが
「ピッピィッ!!」もしくは「フィ、フィッ!!」
という、変てこな合いの手を入れるという導入部を見せ、
また最終曲においては、
静かで瞑想的なイントロを放ち、
それはそこまでの爆発的演奏の勢いとの対比から
必要以上に身に染みて感じられ
「おっこのまま静かなインストで締められるのもいいかなあ」
なんて思っていたら、そこからまたもや爆裂的演奏に入るなど、
面白い音を沢山聴かせてくれた。

ところどころで和風な音色をギターが奏でたり、
リズムが変てこになったりと、そういった箇所からは
どこか「後期ナンバーガールを分りやすくしたような」
という言葉も頭に浮かんできたし、
実際ナンバーガールのことを思い出しもしたが、
UKニューウェイヴ勢のような(ってよく知らんが)
なぜかスマートにも思える退廃的な空気、
あるいはやさぐれ感と同時に
どこかB級めいたグラマラスなフレイヴァーも
振りまいており、しごく不思議なバンドであった。
まだまだ底が知れない。
そしてなるほど
「スパルタローカルズ入ってる」という言葉にも
納得できる。相通じる部分があるように思う。
演奏はたまらなくカッコよくて、ビリビリきたが、
歌詞がほとんど英詞のようなのが気になった。
何を歌っているのだろう?
1部分を除いて、アヒトさんの歌う歌詞を
日本語として聴き取ることは僕には難しかった。

前々から某所で
「今回のツアーでは2バンドで何かやるらしい」
という噂が流れていたので、
何をやるのだろうかと内心ドキドキしていたのだが、
1発目はこれであった――

6,7曲目が終わったあたりで、アヒトさんが言う、

「えー、ここで、余興をやろうと思うんですけれども・・・」

おぉ!! きた!! きた!! 
なんじゃなんじゃ!!ってなもんで、
フロアも盛り上がる。そして僕ももちろん盛り上がる。

「・・・それではっ!!カモン!!」

えぇ? カモン? カモンて!?
まーさーかー!!!!!!
まさか!?

アヒトさんは袖に手を伸ばす――

「ミスター・イガラシ!!」

おおおあああぁぁぁぁぁ!
うわあぁぁぁぁあああぁぁあぁぁ!
歓声がぁぁぁぁ、
でかああいぃぃぃぃ!
やっぱみんな五十嵐さん大好きなのねええぇぇぇ。
いやあ俺も好きだけどオォォォォ。

ま、まさかこんな形で
五十嵐さんの客演を見ることができるとは思わんかった!
赤いギターを首の後ろにかついで
ロウテンションで静かに登場したミスター五十嵐。
お、どうやら髪をようやく切ったようだ・・・
モッサモッサだったもんな・・・当然の対処・・・
でもなんか適当な切り方に見える・・・誰が切っているんだ・・・
なぜにもっとスッキリシャッキリ切らんのだ・・・
さらにミスター・イガラシは
赤色で“VINTAGE”とロゴが入った白いTシャツを着ている・・・
物販で売っているものだ・・・
これは胸元のプリントの他にも、
エリと袖口の部分が赤色なのであるが、
それを着ているミスター・イガラシを見て、
土曜深夜にフジテレビで放送されていた、
『ブログタイプ』に出てくるムラジュン氏を思い出したのは
僕だけであろうか。なんか、似てる(笑)。
あのジャージ着て出てきてたムラジュンに似てる(笑)。
要するに、あまり、あのタイプのシャツは
疲れた雰囲気のミスター・イガラシ(そしてムラジュン)には
似合わないってことだ。
ああ、どうでもいい。瑣末な事柄。

僕は楽器には詳しくないが、
ボラの青木さんのギターと五十嵐さんのギターが
同じものなのだろう、2人で並んだところを、
アヒトさんが、

「よ、ストラト(キャスター)ブラザーズ」

と、一言からかうと、
五十嵐さんは無表情に腰に手を当てて、
「俺たちブラザーズ」と言わんばかりの態度(笑)。
そんな五十嵐さんを、ドラムセットに座りながら、
下から舐めるようにジロリと見ながら、
口元でニヤリと笑っている中畑さんが
僕はなんかスンゲー面白かった。
愛を感じてしまいました(笑)。

アヒトさん曰く、ボラの曲を五十嵐さんに
弾いてもらったらどうなるかなってことで、
この余興をやることになったようだ。
曲が始まると五十嵐さんと青木さんが
頭をグリグリすりあわせてギターを弾く。
うーむこんな姿初めて見るやい。
コラボレート?輪は確実に広がってるね。
歌は孤高かもしれぬが、
バンドはきっと孤高じゃないねもう。
僕はそう思う。
もしくは、たとえ実は孤高だとしても、
そう見られるのに飽きたか疲れたかして、
こういうことをやったんだと思う。
スプリットツアーしてるのもそういうことなんだと思う。
って勝手に言ってますが。

五十嵐さんが参加した曲について
特にどうこう言えることはないが、
やっぱり一段と盛り上がっていた。
アヒトさんはギターを持たない分、
歌に専念できていたし、自在に動いていた。
五十嵐さんは曲が終わると、
まるで大リーガーみたいな
ガッツリしたシェイクハンドを
ボラのメンバーと交わして去っていった。

五十嵐さんが去った後、アヒトさんが

「ね〜、シロップの人来たね〜」

とミーハーを装った発言をすると、
客席から、

「大樹ー!」

と、もう1人のシロップメンバーに声がかかる(笑)。
そこで思い出したようにアヒトさん、

「あ、そうだ今日はビックリ中畑大樹祭りだった!」

そう、本日中畑さんは、ボラとシロップ、
2バンドでドラムを叩くのであった。
まさに中畑大樹祭り。
当の本人、中畑さんは表情を変えずに、

「“ビックリ”はいらないよ」

と言いながらも、まんざらではなさそうな。
アヒトさんは中畑さんをからかいながらも、
「頑張って」とさり気なく優しく声をかける。
そしてそのあと、

「あとで加勢するから」

と付け加える。
加勢。加勢。加勢と言ったら・・・
・・・・・・。
ハハーン、加勢ということは、
シロップの演奏に出てくるのねアヒトさん、と
誰もがしたであろう予想を、僕もさせていただきました。

んで、ボラの最終曲、
五十嵐さん登場の盛り上がりがあったからだろうか、
この最終曲(先に書いた静かなイントロ)、
1番盛り上がったように記憶している。

そしてメンバーが去った後、
シロップの機材準備・・・
ドラムセットが2つあるが、
うーむ・・・これは・・・
僕はボンヤリ2つの可能性を考える――

1.シロップが使うのは未使用の1方であるが、
もう1方は片付けるのに時間がかかるから、
今はとりあえず置いてある、
2.アヒトさんはドラムで加勢する(!)。

周知かと思うので書いてなかったが、
イナザワ・アヒトさんは、
ナンバーガール〜ザゼンボーイズで
ドラマーを務めていた。
それはそれは人気のドラマーであった。
しかし2004年末に電撃的脱退。
そして始動したのがボラ(アンド・ジ・オリエンタル・マシン)。
だから、ボラのライヴでは中畑さんがドラマーで
アヒトさんはギター/ヴォーカルなのであるが、
本来アヒトさんはドラムな人なのである!!(意味わからん)。
したがってドラムで加勢してもなんもおかしくない。
うむ、ワクワクじゃないか。
ツインドラムだとしたら、そんなん生で見たことないもんさ。

◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆

そして始まったシロップの演奏である。
初めはベースのキタダさんと
ドラムの中畑さんしか出てこない・・・。
そしてヴォーカリスト不在のまま、
ブリブリのベースラインと
ロッキンなドラムが演奏を開始する。
かっこぉいいなあ。
キタダさんのベースはやはり「職人」て言葉が似合う。
なんだこの滑らかなすべり。手の動き。
クールな佇まい。
素敵です。

たっぷりイントロを聴かせたあとに、
いよいよギターを持って五十嵐さんが登場する。
ちゃっかり服は黒シャツにチェンジされている。
ウム、やはりこれが似合う・・・ホッとする・・・
けど・・・胸をね、はだけ過ぎじゃないかな(笑)。
なぜそこまでアピールするのじゃ。
ちょっと前はそんなに開けてなかっただろう。

五十嵐さんはリズム隊に負けじと
ロックなギターフレーズを弾いていく、
おぉいつになく、指の動きがよく見える、
よく動いている。滑らかに弦の上を動く指。
どっか途中でリズムと合わなくなるんじゃないかという
僕のおせっかいな不安をよそに(笑)、
いつになくブギ(ウギ)っぽいギターを弾きこなす。
そしていきなり甲高い裏声をかます!
何歌ってるか分りませぬ!
声は、月並みだけど、ホントこのときはレディオヘッドの
トム・ヨークの声がかぶりました、頭の中で
(まあワタクシ全然レディオヘッドファンじゃないけども!)。
でも出だしのメロディがねえ、
なんかコレどっかで聴いたことあると思って、
まさかカヴァー?って思って、いやそれは違うって思い直して、
でも何かに似てるって思って、記憶を漁ったら、分りました、
この出だしのフニャフニャしたメロディ、これは――
MARILYN MANSON(マリリン・マンソン)の、
“USER FRIENDLY”!!(笑:ちなみに『MECHANICAL ANIMALS』に収録)
いや似てる・・・と思うんだけど、どうかな。
まあ他人の空似みたいなもんだと思うけどさ。
そういや“ラファータ”も、某曲に似てるって話があったな(笑)。
ああ、ああ、またも瑣末な事柄を書いてもうた。

続く2曲目?かな、“イマジン”みたいな
ズンズンズンズン!ズンズンズンズン!ズンズンズンズン!
ってドラムから入るから、てっきりもしかして“イマジン”かと
思いきや、違ったなあ。やってくれるぜ。
でもホントもうギターが激しいと歌が何言ってるかまったく不明。
目をつぶれば多少聞き取れるかと思ったが甘かった(涙)。
冒頭3曲くらい何歌ってるかまるで分らず、
歯が痒かった(つまり歯がゆかった)です。
俺のリスニング能力に難があるのだろうか。
五十嵐さんは、

「ありがとぉうぅぅシロップ16gですよぅぉわぁ」

って変な挨拶だし。第1声なのに。なんなんだ。
アコギに持ち替えて座るときには、
じっと挙動を見守る客席に向いて、

「っしずかだなあーオイッ!」

って自分から静寂をぶち破る。
だもんでお客さんから

「五十嵐〜!」

って声が飛ぶと、

「オォエェッ!」

って嗚咽みたいな声で反応するし。
キタダさんは呼びかけに対して、
肘から先だけパコッって挙げて応えてた(2回ね:笑)。
中畑さんは、声援に対して、こともあろうに横を向いて

「っるさい(うるさい)」

って言い放った(笑)!五十嵐さんもビックリ笑い。
なんかどっかサディスティックやねえ中畑さん。
前からこんなキャラでしたかいね。

4曲目あたりで、アコギを持ってマイクの前に座った五十嵐さん、
身をかがめて起き上がった途端・・・ななななんと、
マイクに後頭部ぶっつけたあぁぁぁぁぁ。
あーりゃりゃ、こーりゃりゃ。
まさか五十嵐さんに笑いの神が降りるなんて(わざとじゃないよね)。
貴重なもん見ましたよ。ええ。手を合わせたくなりました。
ナンマンダブナンマンダブ(って違うなコレは)。

「可哀想って言われちゃあお終いだ・・・っ」

みたいなことを言いながら、
頭さすって五十嵐さんは笑っていた。
でもようやくそのアコギの曲で歌詞が聴こえてきたよ。
ようやく何かこう染みてきましたよ。
“君を壊すのは”になんとなく似てるけどでも違いますよね?
関係が上手くいかなかったことを自分のせいにしつつも、
でも君には僕しかいなかったし、
僕にも君しかいなかった・・・全部さらけだせたのは君だけで、
また僕は、君のことを全部知ってて、何もかも分ってて、
でも・・・いやだからこそなのか、壊してしまった、壊れてしまった。
そして僕は君をなくした・・・。
そして誰にでも平等な雲の下で、僕はそれを憂う。
そんな歌、だと思う。違っててもいいけど。

シロップには、なんというか、こうやって
アコギ1本でも聴かせられる歌がよく似合う、と思う。
あんまゴテゴテした曲は似合わないし好きじゃない。
そんなにないけどさ。
歌詞もね、深読みしようと思えばいくらでもできるけれど、
でも単純にその言葉だけを受け取ってもインパクトがある、
心を揺さぶって、聴き手に「あ」と思わせる、
そんな歌がシロップの真骨頂に思います僕は。
ダブルミーニングもけっこう、遊びもけっこう、
だけど歌の核がしっかりしてるからこそ、
そういった遊び的な部分が生きてくるんだよねきっと。
って、このアコースティックな曲を聴きながら思う。

しかし悲しいかなこのアコースティックモードは
これ1曲で終了してしまい、この後五十嵐さんは立ち上がる。

「ボラは、どうでした?楽しかったですか?」

と言い、

「いいバンドですよねえ」

と愛情表現したりする。

「途中でなんか、勘違いしたやつが入ってきて、
場を濁していきましたけども・・・」


って笑いながら言う。ボラに加勢した自分自身のことだ。
客席から、

「カッコよかったよぉ」

って小さな声が飛ぶと、他所を見ながら、

「ありがとう」

ってボソッと返す。優しいねえ五十嵐さん。
いちいち反応してくれている。
あんまこういうやり取りがあり過ぎると、
僕は眉間にしわが寄ってしまうのだが、
この「ありがとう」は、僕は好きだったな。

浮遊感のあるイントロを持った曲や、
ギターの爆走する激しい曲、
メロディがまだ耳に馴染んでないせいか、
僕にはピカッとした光が感じられなかったが、
それでも歌詞が印象に残った曲、
いろいろな曲を聴かせてくれた。
まったくどんくらい曲を書き溜めているのか、
次のリリースはいつか、いずれも不明だが、
今までに披露した新曲中、何曲を録音するつもりなのだろうか。
披露された曲の中でも、音源化の際には
都合により省かれてしまうものが出てくるのだろうか。
やはり頭はどうしても「音源」に向かう。

「早くCD出して!」

というファン誰しもの願いを代表した客席からの一言に、
五十嵐さんは、一瞬黙った後、

「せーの」

と1人で言い、

「俺に言うなよ」

と小声で続ける。なんでヒソヒソ声。
スタッフの手前、ですか。フフ。
でも待ち遠しいなあホント。
ムズムズしてしようがないよ。

本編最後の曲では、五十嵐さん、

「えー、延々と垂れ流してきました、
即興、即興ロック、演戯大会ですけれども・・・」


と言い出し、今日の新曲まみれの本編を皮肉る。

「あんまこういうことやってるとね、
お客さん来てくれなくなっちゃうんで、
真面目に、やっていこうかなあ・・・って」


と言っているところに、

「また来るよー」

とファンの声が。
すると、

「その1票が、その1票が、ね、うん」

とギターをいじりながら頷く。
この「1票」という、
選挙を連想させる言葉を使うあたり、
五十嵐さん、時事ネタに関心ありなのだろうか。
続けて客席から、

「この日のために生きてきたんだッ」

って前にもどこかで言われたと思しき言葉が
飛び出すと、

「おっ」
「お〜」


と五十嵐&中畑コンビが感嘆の声をあげる。
そして五十嵐さんはなおも下を向いたまま、

「あとで楽屋来い、チョコやるからっ」

と子供に言うようなことを言う。
ホントにいちいち会話してくれるから、
勢いづいたフロアから、

「チョコちょうだあい」
「チョコ欲し〜」
「投げて〜」


って黄色い声が出てくる出てくる。
だがそこはさすが五十嵐氏、

「チョコぉ?」

と、自分で言い出した言葉に疑問符をつけて言い、
フッと笑ったあと、まだチューニングをしながら、

「ねえよ」

と突き放す(笑)。
アッハッハッ。天晴れ。
この後だったか、他の箇所だったか
忘れてしまったけれど、
五十嵐さんが急に

「青春パンクってあったでしょ」

と水分取りながら言い出した。

「ちょっと前に、青春パンクってさ」

って言ってから、

「あれパンクじゃないから!」

って笑う。

「俺もさ、恥ずかしいかもしんないけど、
1回、なんっも考えないで作ってみようと思って・・・、
作って、そしたら、なんか、青春もいいなあって・・・」


ええ?何を言っているのだろう。

「青春いいよね?30過ぎて青春てのも・・・
駄目かなあ・・・」


そんな問いかけに対して
なんかフロアからはブーイングに近い
「えー(ガックリ)」な声と
肯定にも取れる
「イェー(いいじゃん)」な声と、
2つの声が混じって聞こえました(笑)。
僕は「『青春』はねえだろ」派であるが、
ファンの両極端な反応は面白かった。
なんでもかんでも「イェー」じゃなくて良かった。

「そんな青春な曲を・・・」とか何とか言いかけてから、
「って、こんなウソは、そろそろお終いにして」
って、ウソかあい!!何のためのウソじゃい!!
でも実はウソじゃなかったりしてね(笑)。
青春にも色んな解釈あるもんね。
まあいいか。面白かったから。

最終曲を終えた後、メンバーは、はけていったのだが、
アンコールに応えて戻ってきたそのメンツが!!
多すぎ(笑)。
初めはアヒトさんと中畑さんが肩組んで出てきたから、
2人でなんかやるのかと思ったら、
他にもゾロゾロ人が出てくる出てくる。
気づいたらボラ+シロップ全員がステージ上に。
んーすごい。オールスター、じゃなくて何て言うのかな。
ギター2人にツインドラムまでは音のイメージ沸くのだけど、
ベース2人ってのは、どういう組み合わせ方するのだろう。
そういうバンドの数は少ないし、
僕はほとんど聴いたことないから、まるで予想がつかなかった。
ということで、アヒト氏はドラムで加勢が決定。

手始めにドラムの2人がぶっ叩き始めるが、
その気迫のすごいことすごいこと。
ただ叩くだけじゃなくて、バトルだねアレは。
アヒトさんはすごく笑顔で、楽しそうで、
「お前がそうくるなら俺はこうだ!」的な
緊張感ある身構えがたまらなくゾクゾク。
中畑氏はもはや鬼神。
楽しむというよりも、
生きとし生けるものを滅するかのごとく(言い過ぎ)、
ドラムを鬼の形相で叩きまくる。
そしてアヒト氏はその横でニコニコ(笑)。
見事な対比。
キタダさんは、ベースを肩からぶらさげたまま、
中畑さんを見て、
「ようやるのお、お前はホント」
的な苦笑いを浮かべておりました。
中畑さんもそれに気づいてちょっと笑ってたように思う。

もうドラムもどの音を誰が出しているのか、まるでわからず、
非常にドコドコした音の塊が
スピーカーから吐き出されていることしか分らぬ始末。
青木氏は縦横無尽に鋭いギターを放ち、
ベースの有江さんはどこか落ち着いて、
ブーンブーンとベースラインを奏で始める。
キタダさんは何か最初素手でベースを
ボーンボーンて叩くように弾(はじ)いてた。
五十嵐さんはしゃがみこんで何かやっている。

あのイントロのグルグルした旋律が聴こえ始めたところで
ようやくこの曲が“リアル”だと分った。
んおー、すごいなあ、6人“リアル”
しかもドラムはアヒトさん&中畑さん。
他ではきっと見れないよね。今回のツアーでしか。
まあこの曲が1番大所帯でやるには向いているような
気がしないでもないが、しかし多いように思う(笑)。
ベースのお2人が何をどう弾き分けているのか
もう僕にはまるで分りませんでした(笑)。
フロアもさすがに今日1番の興奮マックスで、
前のお客さんたちはコブシ振り上げてノリノリ。

もうここまでくるとジックリ聴く感じじゃなかった。
人は多いし、演奏もヒートアップしてるしで、
てんやわんやの大騒ぎ。もう「祭り」みたいな。
曲は何でもいいんじゃないかって具合の(いやそれはないか)。
でも、どうしても目がドラムの2人に吸い寄せられてしまって
(だってスゲーんだもん。叩きっぷりが)、
“リアル”を聴いているという実感が全然沸かなかった。
僕の耳では大して音の弁別も出来ず、
6人編成という視覚的要素以外に、
この“リアル”の新奇性を見つけ出すことはできなかった。
「本当のリアルはここにある」の箇所で、
タメを作って手を突き上げる五十嵐さんもいつもと同じであった。

しかしこの合同演奏は初の試みであろうし、
やっぱ新しいこと面白いことをやりたいんだなあ、
同じことをずっとやるのが理由はどうあれ嫌なんだなあ、って思った。
同じことやるのが簡単か難しいかは僕には分らないけれど、
でも変わっていくのを見るのは楽しいですよねやっぱり。
スリルがある。ドキドキがある。
つまり、マンネリ化したカップルの
デートにはないであろうものが、そこにはある。
そのドキドキの中で、
シロップらしくありつつも、けれど新しい何か、
それを確かに感じることができたなら、
それはそれは素晴らしい体験になるだろう。

同じアレンジでお決まりの曲やって、
アンコールにはあれやって、
みんなで歌って、って同パターンのライヴには、
それはそれで楽しさがあるでしょう。
安心感がね。同じジェットコースターに何度も乗るような。
最低これだけのものは得られるであろうって目算が立つ。
でもどうですか、それは他の誰かに任せて、
ここんとこ毎回、先の見えない、
予測のつかないアトラクションに乗せてくれる
コンダクターSyrup16gは?
まったく何をやるか分らないこの感じ。
前回に続き今回も新曲連打の、
この開けてビックリ玉手箱ライヴ。
繰り返しになるけれど、
その開けるまで分らぬスリルに、
シロップしか放ち得ない何かが
加味されたときにこそ、かつて渋谷クアトロ(→click!)で、
僕に向かって吹いた風が、また吹くような気がする。
なんてなー。
まあ新曲がリリースされていないというところに、
そのスリルを感じる主な理由があるのだろうけれど。
でもやっぱ他バンドと共演したり、
ファンと気さくにやりとりしたり、
どっか変わってきてますよね、
その「同じではいない」とこには、やはりスリルがある。

で、残念ながら今回は上記の風は僕には吹かなかったけれど、
まだまだ追っていきますよ。心が求める限り。ええ。

この6人“リアル”でライヴは終了。
まだやってくれるかなと思ったが、
あえなく終了。ブツクサ言いながら、みな帰る。
僕も上の方に書いたように
もちっとやってほしかったが仕様がないです。

最後に、1番印象に残った歌詞を書いておこう、

「全部なくしちまったから 何も怖くねえよ」

「誰かに憧れたらそこでお終い
君がどこかにいっちゃったよ」


おしまい。
また行きますぜ。

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- SET LIST [*Syrup16gのみ]-
本編全10曲 全新曲
En1.リアル (with VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)
-----------------------------------------------

2005/08/26(最終修正日:2005/12/03)
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