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■シルバー事件 再想(再走)− シルバー事件25区
□correctness−#02:good looking guy -------------------- story #0#1#3


喫茶店の窓際で、
男が青空を見上げながら、
独白している――

 『俺は オレではない

 形を失った肉の塊だ

 感情という波動は
 もう流れてこない

 静かに ただ静かに

 死にたいだけだ

 無意味に 死にたい

 漠然と 消えたい

 すべてと決別することで
 すべてと関わることになる

 俺が オレでなくても
 俺は 消えない

 時間は過ぎるんだよ

 永遠に・・・

 忘れるな

 カミジョウヤスシ』


そして男は、
コーヒーカップにカプセルを一錠浮かべ、
それを飲み干す。

吐血

血まみれのテーブルに倒れた男の
手には、一本のカギが握られていた・・・。

そのカギを使って、かどうかは
分からないが、
カミジョウの部屋を捜索する
凶犯課のクロヤナギ、シロヤブ、ウエハラの3名。
部屋にはカミジョウの遺書があった。

胃の中にカギがあるという。
隠し部屋のカギ。
庭の隅を探せという。

『シェルターは世界と直結している』

遺書にはそんな言葉がある。

シェルター・・・。シェルター?
シェルターといえば、前作で
カムイの出身がシェルターだという説もあった。
そして『シルバー事件』でシェルターといえば、
主にそれはシェルターキッズが育成された地下環境を指す。
三角塔。
そういう意味で使っているのか。
そうでなくても、この『シルバー事件』の続編で
シェルターという言葉を使うことには、
某かの意味があるはずだ。

鑑識にこの遺書の言葉を連絡して、
遺体の胃の中にカギがあることを知らせましょう
というシロヤブに対し、

 『あ?
 持ってこさせろよ鍵』


というクロヤナギ。

 『はい?
 鍵はまだ見つかってないですけど』


とシロヤブ。

クロヤナギ:
 『あのよ
 はっきりと遺言で宣言してんだ
 一世一代の死に際に下手打つと思うか?
 キッチリ 検死で見つけんだから
 後は持ってこさせりゃ
 いいんじゃねーのか?』


こええ。
確かに間違ってはないけど、
こええ。
こんな上司はどうだ?
己(オレ)は嫌いじゃない。

どうやら世間的な見方としては
カミジョウは企業をリストラ、
その結果自殺という見方が主流であるようだが、
シロヤブは
どうも嫌な雰囲気がするという。

検死のヒロオカさん
(どことなくフジオカヒロシ、に見える:笑)
から、遺体の中から見つかったカギを
25区でバイク便のバイトをするタカハシキララに
届けさせるという電話。

その間、一人で庭の隅を探るウエハラ。
花の溢れる庭だ。
カミジョウは花を愛でていたのだろうか・・・。
庭の隅に地下室への扉を発見する3人。
そこにジャストタイミングで、
制服姿にヘルメットという出で立ちで
カギを届けてくれたタカハシキララ。
しかしセーラー服にヘルメットのバイク便って、
いやはや何ともこういうセンスは
どこからやってくるのだろう。
このタカハシ、なかなか強いキャラである。
かのクロヤナギにも平気でキツイ発言をする。
悪い連中たくさん殺してるんでしょ?って(笑)。
どうもこのタカハシとクロヤナギ、
気が合うのか合わないのか、
送料を要求するタカハシを見て、
『ジャブロー、処分しろ』
と平気で云うクロヤナギ。
こええ。
もちろん、処分はしないけどね。

さて、地下室のカギを開けた先にあったのは、
数多のカギだった・・・
カギカギカギカギカギカギカギカギカギ
カギカギカギカギカギカギカギカギカギ
カギカギカギカギカギカギカギカギカギ
カギカギカギカギカギカギカギカギカギ
カギカギカギカギカギカギカギカギカギ
カギカギカギカギカギカギカギカギカギ


・・・・・・

その数なんと1000本。

クロヤナギがため息混じりに云う――

 『運が悪いな どうも
 触っちゃいけねえ事件に
 触れちまったのかもしれねぇわ』


*** *** ***

場面変わって
25区凶犯課での捜査会議。
まとめるとこんな感じ・・・

・遺留品からは薬物反応なし。
・カミジョウの職場での評判は◎。
・女性からの人気も◎、
 思いを寄せる女性も多かった。
 しかし興味なし、ゲイの噂も。
 ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
クロヤナギ;
 『くだらねぇ仕事してんじゃねーよ
 どんな聞き込みだよ』

・ということで死の理由がよく分からない。

ちなみにだが、凶犯課の捜査官には
色のつく名前が多い。
ハトバとウエハラは別だが、
シロヤブ、クロヤナギ、アカマ、アオヤマ・・・
と見事に色である。意図的か。そうだよな。
あとハトバの後ろの壁に
でっかく『処分』と書かれたパネルが
吊るされているのが笑える・・・。
大真面目に『処分』て吊るしてんだぜ?
凄すぎるぜ凶犯課。

カミジョウの正体・思惑を
議論する凶犯課の面々。
クロヤナギは背後に組織の影を見る。
それも郵便屋・・・。
ってこの時点でそこまで
読めたら読みすぎだろ!
まったく郵便屋の影なんてないよ。
どんだけ勘が鋭いんだ。
って思ったらコレはジャブローの見解らしい。
しかしまったくただの勘で、
まだ郵便屋とカミジョウのつながりは
見えていないらしい。
先日自分たちが「配達屋」の存在を
知ってから郵事連の動きが活発になり、
それにあわせるように、カミジョウが自殺した・・・。
だから郵便屋との関連を疑っている、
ということらしい。
ってことはアレ?
あのタワーマンションでの事件が起こるまで、
凶犯課は配達屋を知らなかった・・・?
そういうことになるのかな。

アオさんことアオヤマとアカマは、
カミジョウの職場で聞き込み、
そしてシロヤブ組はシェルターで
発見されたカギを追うこととなる。

このあと新人捜査官のウエハラの
紹介がハトバより行われるが、
ハトバの言葉はどこか意味深だ。

 『実はな・・・
 オマエが配属になる経緯が
 キナ臭いんだよ
 本人に聞くのもアレだけどさ・・・
 なんか背負ってるだろ?
 そんな顔してんだよな
 気配が人と違うつーかさ
 オマエ見てるとフラッシュバックするんだ
 見たこともない光景と
 懐かしい感触が湧くんだわ
 何なんだろうな
 コレって・・・』

キナ臭い経緯って、そこを教えてくれ!
そこが知りたいじゃないか!
懐かしい感触はカムイ・・・?
見たこともない光景は、
これから起こる事件・・・?
それぞれのイメージだろうか・・・。

*** *** ***

シェルターへ再び捜査に行った
シロヤブ・クロヤナギらとは別に
法医学センターへ
鑑定後のカギを取りにいくウエハラ。
ヒロオカさんと話す。
カミジョウが
カギのコレクターであったということから、
ヒロオカさんは
自分のコレクションについて語りだす。

それはスナッフフィルム・・・!

検死官でスナッフフィルムコレクターって
どうなのよ。なんだこのキャラクター設定。
ちなみにヒロオカさん、
生命への関心の強さから
昔は失神にも凝ったそうである。ひええ。
あ、スナッフフィルムって、
アレですよ・・・殺人を収めたフィルムですよ。
フィクションじゃなくて本物の殺人を・・・。
そのためだけに殺害を犯す輩がいるという・・・。
マニアから上映会の依頼が多くて困るとボヤく
ヒロオカさん・・・。
彼の所有作品はホントに質の高いものらしくて、
ネットに流れてるレギュラーものとは違うらしい。
上映したら最後、業者である暗黒業界の方々に
消されてしまうという・・・こええなあ。もう。

話が逸れた・・・
そうそうカギを取りに来たのだった。
大半のカギは古いロッカーのカギで、
もの自体がもう廃棄処分されているものが
ほとんどだという。
その中に一つだけあった最新ロッカーのカギ。
それを持ってシロヤブらと合流しに向かうウエハラ
(もちろん1000本のカギのすべてが
鑑定終了したわけではない。
鑑識は引き続き鑑定を続けるのであった)。

カギがカギを呼び、
カミジョウの遺志は、
凶犯課をどこへ導くのか・・・。

*** *** ***

ヒロオカから受けとったカギの適合場所は
25区センター駅構内のロッカー。
合流時間に遅れるシロヤブら。
なんとクロヤナギのエステ待ち!
シェルター捜索で汚れた身体を
清めるためだという・・・。
いやはや何とも・・・。
シロヤブとともに、
「ある意味感心」である。

さて肝心のカギを使って
ついにロッカーを開ける・・・

シロヤブ:
 『コインロッカーか・・・
 赤ん坊がいるのだけは勘弁してくれ』


しかし、
中から出てきたのは、またカギ。
そして、道を歩く一人の女性を
写したと思しき、一枚の写真・・・。
果たしてその意味は?

クロヤナギがいつのまに捜査したのか、
カミジョウが小さなテーブルトークサークルで
主宰を務めていたことを教えてくれる。
テーブルトーク=シンプルボードゲーム。
カミジョウはその達人だった。
つまりルール作りが得意中の得意。
ここでルールという言葉を使うと、
なんとなく分かりにくいのだが、
僕はこれを「おつかい」と同義に捉える。
ゲームには「おつかい」がつきものである。
「あっちへいってアレを取ってこい」とか、
「あそこへ行ってあいつを退治してこい」だとか、
「あそこでアレを調べてこい」だとか。
そういったルールがプレイヤーを動かしているのである
(もっと云えばそういう「おつかい」感を
感じさせない方が、やはりプレイヤーは楽しいと思う。
場合によりけりかもしれないが)。
つまりここでは凶犯課は、
カミジョウが作ったルールによって
「おつかい」をさせられているだけなのである。
アッチへコッチへと動かされているだけなのである。
カミジョウが構築したルールという迷宮の中を
ゴールがどこかも分からぬままに歩かされている。
クロヤナギの言葉はそういう意味だろう、

 『カミジョウが描いて
 いるのは物語なんだ
 ヤツは道を作り
 その道に人を歩かせる
 我々はゲームに参加するだけだ』


まさにカミジョウの思うつぼであるが、
必然的にそれがカミジョウの痕跡を追うことになる。
だったら追わないわけにはいかない。

この駅構内で見つけたカギの適合場所は、
どうやらクロヤナギが知っている所らしい。
彼女が出入りしている場所のようだ。

いざ、迷宮の渦へ――

*** *** ***

やってきたのは雑居ビル。
その中にある漫画喫茶・・・。
マスターのフカマチに
景気よく挨拶するクロヤナギ。
っていうかこのマスター・・・、
スキンヘッド?に赤い唇、
どこかいかつい顔・・・。
ゲイだな・・・。って見た目で判明。
マスターにクロエと呼ばれるクロヤナギ。
ハンドルネームらしい。
そしてここのマスターもまたコレクター。
絶版品を数多く揃えているらしい。
そしてまた、クロヤナギが
ここでバイトをしていることも判明。
エロチャットのサクラ?っていうか、
話相手をバイトとしてやっているらしい。

クロヤナギ:
 『男とエロい話をして
 ガンガン インカム稼ぐって寸法よ』


それでマスターと顔馴染みなのか・・・。
何やってんだよ、クロさん・・・。
あんた凶犯課の刑事だろうに・・・。

駅で見つけたカギをマスターに見せ、
どこの部屋のカギかを探るクロさん。
GLGの部屋だという応え。
GLG?
GOOD LOOKING GUY
どういう意味か分からないクロヤナギ(笑)。
こんなのも分からないのかと驚くシロヤブ。

クロヤナギ:
 『日本人が日本語オンリーで何が悪い?』

シロヤブ:
 『オンリーって使ってる
 じゃないですか!?』


クロヤナギ:
 『オンリーは単語だろ?
 2つ以上になると呪文だ
 もはや言葉じゃない
 私はそんな教育を
 受けた覚えはないッ!』


何言ってんだよこの人は・・・。
GOOD LOOKING GUY
=顔の良い男である。

GLGの専用個室に移動する面々。
詮索せずに捜査に協力するマスター。
その見返りに、オフ会出席を
クロヤナギに要求するちゃっかり具合である。

さてこの個室で何を捜査するのか。
いや何があるのか。
PCの電源をONして、
とりあえずGLGのPCにログイン・・・
もちろんパスワードを入力します。
このパスワードが実に分かりやすいところもまた、
カミジョウの誘い(いざない)なのだろう。

ダイヴした画面に現われたのは・・・、
どこかの部屋の映像である。
まあ相手方の部屋だね。
チャットする相手のチャットルーム。
しかしそこには今誰もいない・・・。
・・・?
よく見るとテーブルの上にカギが見える。
どこの部屋だろう?
「画像転送して、鑑識に部屋の照合を依頼しろ、
そして割り出した部屋に行って、
カギを取って、あのタカハシに持ってこさせろ」、
ってわざわざチャット画面で
シロヤブに云うクロヤナギ(笑)。

 『私はブラインドタッチの達人だ
 オマエ程度には声を出すのも無駄だ』


とクロヤナギ。
しかし、バイク便タカハシは、
自分の管轄内であれば、
空気の流れでその部屋の場所が分かるらしい(!)
ホントかよ。写真見て分かるのかよ。
だから照合よりも早くタカハシが
部屋にたどり着くかもしれないと、
ヒロオカに連絡を入れたシロヤブは云う。

カミジョウがここにきていた目的について
シロヤブは、この個室で
日常の「管理」生活から逃れたかった、
と推理するが、
対してクロヤナギは、
根底には「疲れを知らない目的」
があったはずだと見る。

と、部屋を見つけたタカハシが、そこから
なんとチャットルームに入室してきた!
タカハシとひとしきりアホなやり取りを
したあと、ようやく部屋の場所が判明する。
なんと目の前・・・。
え? 目の前?
タカハシにはクロヤナギが見えるらしい。
GLGの個室にいるクロヤナギが。
慌ててPCモニター裏に位置する窓を開けて、
そこから上を見上げてみると、
向かいのビルだろうか、
タカハシがベランダに出てこちらに手を振っている。

・・・・・・

GLGの個室はスモークガラスだった。
こちらから外は見えないが、
相手のチャットルームからこちらは
丸見えだった。
つまりカミジョウがチャットをしていた
女性側からは、カミジョウの姿は見えていた。
そこにどんな意味があるのか?
カミジョウは露出狂だった、とクロヤナギ。
見られることで興奮する、と。
死に様も見せつけた。
という解釈が成り立つ(らしい)。

しかしこの部屋の構造を
マスターが知らなかったはずはない。
マスターを問いつめるクロヤナギ。
話を聞くと、
この個室はGLGが買い取ったものらしい。
5000万円で・・・。3年契約・・・。
そして改造したということだろうか?
密かに窓をスモークにして?

いやそれにしても、
なぜカミジョウのチャット相手の
部屋がすぐ正面にあると、
マスターは教えてくれないのだろう?
そうすりゃ捜査に余計な時間を
かけずにすんだじゃないか。
ってか知ってたのかな?
知らないとしたら、おかしくねえ? 
だってクロヤナギがバイトしに来てた
ってことはだよ、
ここで男どものチャット相手する女の子も
いたってことでしょう?
ってことは、その女の子が入る部屋は
ここの漫画喫茶独自のものなんでないの?
チャットルームも独自なんでないの?
だってクロエ(クロヤナギ)みたいな
人気嬢がいると儲かるって
マスターも云ってたじゃないか。
ってことは独自のチャットシステムを持ってて、
それを男どもに使わせることで金を
取っていたってことじゃないのかな。
とすればカミジョウのチャット相手の
部屋も当然この漫画喫茶の管轄内で
あるはずであって、それをマスターが
知らないのはおかしいなあ。
なぜ、マスターは
チャット相手の女の子の部屋が
どこにあるかを知らないのさ。
おかしくねえ?

単にあれか、この漫画喫茶が
独自のチャットルームも持ってるし、
他のチャットルームにもアクセスできる、
そんな場所ってことか・・・。
で、カミジョウは漫画喫茶の系列とは
他のチャットルームに入り浸っていたと・・・。
そしてそのチャット相手(女の子)が
チャットを行う部屋が、
GLG専用個室の正面にあったと・・・。
なるほど。合点がいった。
あるいは、アレだ。
捜査時にマスターが席を外していたから、
凶犯課の面々に部屋の場所を教えることが
できなかった・・・そんな理由もありだな。
・・・・・・。
・・・疲れるなあ。

加えて、マスターは
GLGの顔を見たことがないという。
んなわけねーだろ!
と詰め寄るクロヤナギだが、
どうやらGLGはマスターが店番のときを
回避していたようである。
なんでって?
GLG=顔が良い男。
そしてマスターはゲイで、
「いい男がいたらムラムラして仕事にならない」
と云っている。
とくれば、ねえ?
GLGは余計な関わりを持ちたくなかったのだろう。
あくまでチャットが目的だった。

さて、タカハシがいる部屋に
移動するシロヤブとウエハラ、
そして再びGLGのPCで
チャットを試みるクロヤナギ。
誰かとチャットをしているようである
(おそらく、だが
ここでクロヤナギが
チャットをしている相手はトキオであろう。
後の「placebo」を参照されたい)。

チャットルームの机上にあった
カギを手に取ると、その傍らにまた写真・・・。
女性を写したものである・・・。
いったいどんな意味があるのだろう。
カギの形が変わったものであったことが
タカハシの記憶を刺激したのだろうか、
彼女はヒロオカにカギを届けてくれと云う
シロヤブに対し、
それよりもいいところを紹介すると云ってくる。
カギの鑑定所。
25区随一。
なんでそんな場所知ってんだよ。
何者だよ。タカハシキララ。
職人は職人を呼ぶ、とそういうことらしい。
25区一のバイク便=職人=タカハシキララが
25区随一の鑑定所を紹介する、と。
鑑定士に会うために必要だという
色とりどりのカギ四本をタカハシより
授かり、いざ鑑定所へ向かう
シロヤブとウエハラであった。

ホント「おつかい」ライクだが、
カミジョウの構築した
迷宮の最深部もいよいよ近いのだろうか。

*** *** ***

やってきたのは、
どこからどう見てもコンビニ・・・。
ここが鑑定所・・・?
合言葉は、『WC貸してください』だという。
コンビニの制服着たパンクス的な
店員に合言葉を告げると、
すんげー長い説明でWCの場所を教えられる。
とにかく遠い、ってことらしい。
コンビニの地下? 奥地だな。

無菌的な通路を歩く二人。
タカハシから授かったカギを
決められた「ルール」に乗っ取って
使用し、WCにたどり着く二人。
タカハシに電話しまくって
カギを使う順序を訊き捲る己(オレ)。
わけの分からない説明しやがって!(笑)

中に入るとまぎれもなくトイレ。
どう見てもトイレ。
便座に腰かけ一人憂うジャブロー。

 『どう考えてもトイレだ
 ウエハラ
 オレはあの小娘に
 イジられてるのか?
 どっきりカメラとかかな?
 クロさんがいればなぁ』


と、ふいに横の壁につけられた
教会の懺悔室にあるような、
あるいはパチンコの景品交換所のような、
覆面的な応対口から声がする・・・。

 『次の方どうぞ』

鑑定士のオカモトさんであった。
コースなんかを尋ねられても分からねえよ。
すでにキララから聞いているらしいが・・・。
カギの鑑定にコースがあるのかい。
まごつくシロヤブをよそに
一人勝手に話を進め、
カギを持っていくオカモト。

便座に座って待つシロヤブ。
シュールだ。

鑑定が終了し、
カギの使いどころを聞く
ジャブローとウエハラ――

・・・・・・

まだ迷宮は続くのか。
いったい次はどこだ。
どこへ導かれるのだ。

*** *** ***

とあるマンションの一室。
クロヤナギと共に踏み込んだ
シロヤブとウエハラ。
ここまでにどれだけカギを
使ったのかは分からない。
オカモトさんに鑑定された
カギでここへ来たのかもしれないし、
あるいはもっと多くの過程を経たのかもしれない。
とにかく、ここへ辿りついた。

持ってきたカギを使って、
開錠をするシロヤブ。
どこを開けたのかはよく分からない。
部屋の引出しとかだろう。
金庫とか。
ちょっと「なあなあ」な描写だな。

出てきたのは・・・。
またカギじゃねえのよ。
何個目だよ。
そしてまた女性を写した写真。
何なんだよ。
誰か教えてくれ。
そしてこの迷宮はどこへ続くのか。

入手したカギを見て
一発で車のものだと察するクロヤナギ。
モデルチェンジしたばかりの新型車。
詳しいな。
モーターショーで見たと云う。
車好きなんだな、クロさん。
と思ったら!

クロヤナギ:
 『バカかオマエは?
 見に行くわけないだろ?
 コンパニオンなんだから』


ってまたバイトかよ!
企業間で抽選するくらいの売れっ子だってよ。
カリスマイベントコンパニオンだってよ。
なんだこの人。
ジャブローと共に呆れる。
そしてとにかく、カギが適合する
車を捜しに、マンションの駐車場へ・・・。

*** *** ***

高級車ばかりが並ぶ地下駐車場。
この生活臭のなさ。
普通の家族は一世帯も住んでいないという。
そんなこのマンションの正体とは・・・。

シロヤブ:
 『セカンドハウス専用ですか?
 女を囲う目的で作られたマンション・・・
 通常の不動産物件として扱われていない
 会員制・・・?』


クロヤナギ:
 『そうだ
 バブルの残骸となった
 資産価値の低いマンションを別の目的で
 運営しているのがココだ
 現代の遊郭だよ』


 『最悪だ! 最悪ですよ!
 何なんですか?
 この気持ち悪い場所は!?』


と憤るシロヤブに対し、

 『知るか!
 最悪でも糞でもなんでも
 人が群がり
 需要が生まれれば
 ソレは存在する
 ここが存在しても世界は終わらない
 オマエの正義を満たすなど
 無意味で無益だ』


と一喝するクロヤナギ。
また、悲しいだけだというシロヤブに、
誰もオマエに哀れんでくれとは
思ってない、とこれもクロヤナギ。
かっこいいな。
そしてジャブローと同じように、
カミジョウもまた悲しみを
纏っていたのだというクロヤナギ。
シロヤブはこれまでに
何回も仲間をなくしているという。
その結果身についた悲しみだろうか・・・。
彼もまた、カミジョウと同じように、
普通の社会では生きられない人間のようだ。
ジャブロー、過去に何があった?
なぜ凶犯課に入った。
そしてなぜ悲しみを身に纏う?
それはこれから明かされるのだろうか。

カミジョウはこのマンションの利用者だった。
おそらくそうだろう。
だからカギや写真を仕込むことができた。
そして車も・・・。
車を捜すクロヤナギ。

見つけた車の運転を試みるシロヤブだが、
なんかボタンが多いらしい。
さすが最新モデル。
クロヤナギが勝手にボタンを押すと、
ナビゲーションシステムが作動。
車は3人をまだ見ぬ場所へと案内する――
ここまで仕込むカミジョウの思惑とは、
いったい何なのか――

車中、
運転席:シロヤブ
助手席:クロヤナギ
後部座席中央:ウエハラ
という位置なのだが、
ウエハラはいつも顔が見えない。
影である。
凶犯課で座っているときも顔は暗い。
まったく影の男である。

*** *** ***

ついにたどり着いたのは
海沿いの一軒家。
青い空と青い海をバックに、
コンクリートだろうか?
白い綺麗な二階建ての家が建っていた。

場所は26区造成予定地。
造成予定は20年後とのことで、
それまでここは人が寄り付かない。
時の止まった場所。
ここに家を建てたということは、
カミジョウはここへ
人を寄せ付けたくなかったのだろう。
いったい何があるのか。

ドアの脇には「上条」の表札。
そしてドアにはカギがかかっていない。
中に答えがある。

そこには一人の女性がいた。
開いた窓から海と空が見える、
女性はベッドに腰かけ
コチラを向いている。
ツインテールの髪型。
要するにオサゲ髪だ。

身分を告げるクロヤナギら。

 『アナタは マチコさん・・・?』

とクロヤナギ。
女性は肯定する。
マチコさんって? 何?
一回もそんな名前聞いてないぜ。
プレイヤーと同じく
合点がいかないシロヤブに、
クロヤナギが説明してくれる。

マチコとは隠語。
契約同居人という職業を指す。
結婚できない者同士が
契約して共に生活する、
それが契約同居。
しかしずっと一緒に住むことはできない。
契約者は時折り家に帰るだけ。
同居人は家で待ちつづける。
だからマチコと呼ばれる・・・。
どこか悲しい語源だ。

このマチコさんは
カミジョウとの同居人だったのだろう。
確かに待つだけだが、待つことによって
カミジョウと関われることで、
悲しくはなかったというマチコ。
しかしカミジョウは自殺した。
そのことをマチコは知っていると云う。
ならばなぜ待つのか?
何を待っているのか?
マチコは云う、

 『アナタたちがここに来るまで
 彼との関わりがあります』


カミジョウに導かれて
この場にやってくる凶犯課と会うことで、
それは間接的にカミジョウを待つことに
なるということだろうか。
なんて間接的な、遠回りな、悲しい想い。

カミジョウはここに
刑事が来ることを予見していた。
当然だろう。
そのように仕込んだのだから。
しかしマチコの云う、
「凶犯課がここに来ることで
初めて事件が成立する」
とはどういう意味だろう。
事件?
カミジョウの死がここで完結するということか。
それとも。

カミジョウの正体を問うクロヤナギ。
それに答えて語り出すマチコ――

カミジョウはなんと潜水夫だった!
それも一番最初の潜水夫
シロヤブは「潜水夫」を知らないらしいが、
クロヤナギはすでに知っているようである。
つまりカミジョウは殺し屋だった。
すでに現役ではなかったらしいが、しかし
局内では伝説化していたほどの凄腕だったらしい。
5年前に局に対する苦情のトラブルをもみ消した事件が
相次いだらしいが、どうやらそのときに
暗躍したのがカミジョウ、であるらしい。
つまり、殺人を犯していたのだろう。
非公式で、しかし合法的な。

マチコ:
 『局は苦情処理の予算を割いて
 組織化しました
 それが潜水夫です
 
 カミジョウは悩んでいました
 当たり前ですよね
 郵便の仕事をするはずが
 人を処理する能力を
 身につけていたのですから』


潜水夫になることで
身元抹消されたあと、
マチコと出会ったカミジョウ。
そして身元と引き換えに手に入れた
莫大な金でマチコを買ったカミジョウ。
そこに安らぎをみたのだろうか?
愛? それとも・・・。
マチコは、カミジョウは帰る場所が
欲しかったのだろうと云う。
マチコには身元を一度も尋ねなかったという。
そして身体を触れることもなく、
ただ一緒にいたい、そう云って、
いつも笑っていたというカミジョウ。

カミジョウ=潜水夫。
そして潜水夫の自殺。
この時点で、
どうやらクロヤナギが
事件の構造を自分なりに推理したらしい。
郵事連がカミジョウを
殺そうとしていたことを察する。
現役を引退したカミジョウを
野放しにしておくことを危険と判断したのか。
郵政事業、つまりは調整事業を円滑に進め、
かつ維持していくためには、
情報の漏洩は阻止せねばなるまい。

クロヤナギ:
 『郵事連は大きな市場を狙って
 潜水夫を育てている
 情報流出を食い止めるためには・・・』


シロヤブ:
 『殺すしかない・・・』

ということだ。
しかし・・・

シロヤブ:
 『でも大きな市場って?』

そうそこが気になる。 クロヤナギは
『後で教えてやる』
って云うけれど、
今教えて欲しいな! 激しく希望。
でも教えてくれない。

クロヤナギの推理力は素晴らしく、
カミジョウが最後にマチコのところに
来たときに、誰かと会う約束を
していなかったかと、尋ねる。
なぜそんなところに考えがいくのか。
どういう頭だ、クロさんよ。

マチコ:
 『よくご存知ですね?
 古い友人に会うと云っていました
 管理人・・・さん?』


管理人!?
タワーマンションだ!
ジャブローが叫ぶ。
あの管理人、
銃撃戦以来、臥せってしまった管理人、
いったい何者だ・・・!

カミジョウの『笑わない人を信じろ』
という言葉を信じて、
凶犯課の面々に話をしてくれたマチコ。
笑わない人ね・・・。
額面どおりに受け取ると、まさに
クロヤナギだな・・・笑わないもんな。
それを云うなら凶犯課は笑顔が似合わない。
「笑わない人」、に他意があるのかどうかは
分からない。僕には深読みできない。

そして最後にマチコに出身を尋ねるクロさん。
それはシェルターだった・・・!
シェルター。地下環境。
そして驚愕の事実が判明。
クロヤナギもシェルター出身だった・・・!
ということは出身は24区?
あるいは25区においてもシェルターが
存在したのか?
だとしたらそれは
24区において「シェルターキッズ政策」に
用いられたものと同義なのか?
あるいはまったく別の意味があるのか?
もし24区のシェルター出身だとすれば、
マチコもクロヤナギも、
「アヤメ・マスプロ」で育成された人間、
ということになるのか。

身元をなくした男、
カミジョウが帰る場所。
そこで男を待つのは、
地下環境で育成された女、マチコ。
この引き合わせは・・・、
前作で「シェルターキッズ政策」
で育てられた男たち(カムイ)と
「アヤメ・マスプロ」で育てられた
女性たちが、まるで何かに
導かれるように結びついていた
ことを思い出させる。
暗い悲しみが滲む。

同じシェルター出身ということで、
マチコを励ますクロヤナギ、
そしてマチコの手にあった
銃を取り上げる。
カミジョウがいなくても
アナタが生きる価値はあると・・・。
悲しみは必ず消えると・・・。
もしかしたらクロさん・・・
いや考えすぎかもしれないが、
彼女はこのカミジョウに関する事件の
「真相」をすべて知っていたのかもしれない。
どこかの時点で察していたのかもしれない。
だからカミジョウの後を追おうとする
マチコを止めたのかもしれない。
「真相」って何かって?
それはこの後の「placebo」の第二話、
*02:TIGIRI”についての
テキストを読めば、少しは
輪郭のようなものが見えてくるかもしれない。
それが果たして真相を示しているのかも、
僕にはハッキリとは分からないが。

*** *** ***

桟橋で、クロヤナギとシロヤブが
話をしている。事件を振り返っている。
カミジョウは、
自分の私的な思惑とは別に、
凶犯課に(そう、郵事連ではなく)、
事件を託したかったのかもしれない。
この馬鹿げた25区を
どうにかしてもらうために。
そして同時に
カミジョウに関係していた
マチコを郵事連の手から守るために、
ルールを駆使して、
事件を遠くへ遠くへ導いた。
生半可なことでは手が及ばないように。
そして鑑識の調べからだろう、
カミジョウが用意した、
カギに付されていた写真は、
彼が潜水夫時代に殺した女性たちを
写したものであったことが判明。
それをメッセージにもしていたのだ、彼は。
ここ25区で何が起こっているのかを示す、
社会の真相を示すメッセージに。
他愛のない理由でクレーマーを殺す25区。
女性たちは皆、その被害者だった。
超管理社会の歪み。
その歪みを告発したかったのだ、
カミジョウは。
その願いは叶えられた、と僕は思う。
彼の死で、事件は動き出したから
(クロヤナギはシロヤブの
この見解を否定するけどね、
僕ははずれていないと思う)。

クロヤナギ:
 『次は管理人だ
 消えた管理人が事件を動かす』


そして忘れてはならない、
カミジョウはマチコを無事に守った。

シロヤブ:
 『でも 死んだらマチコさんを
 守ることなんて できませんよ?』


クロヤナギ:
 『もう翻弄されてんだよ』

シロヤブ:
 『う〜ん・・・
 意味が分かりませんよ』


そう、意味が分からないよね。
でも“*02:TIGIRI”で
何となく、分かるんだ。
このクロヤナギの言葉の意味が。
僕らはカミジョウに
見事に翻弄されたんだなって。
そしてクロヤナギは、
きっとやっぱり、カミジョウの
「思惑」に気づいていたんだなって・・・。

*** *** ***

海沿いの一軒家。
チャイムが鳴り響く。
インターホンから答える声。


 『はい・・・・・・・・・』


 『ただいま』


 『・・・・・・・・・
 おかえりなさい

 ずっと 待ってた』



 『もう二度と 離れない
 ここで 暮らそう
 ずっと一緒だよ
 必ず キミの傍にいる』



 『生まれて初めて
 
 嬉しい』



そう、死んだらもう、守れないよきっと。
でも、死んでなかったら?
ねえ?

*** *** ***

このカミジョウヤスシ編は
どことなくカムイとの関連が薄い。
前作の“プレクトラム”なんかを思わせる。
これは25区という特別な社会で
展開されたラブストーリーなのではないか。
僕はそう思う。

しかし、事件は続く。
管理人を追わねばならない。
消えた管理人が事件を動かす――



#03:boys don't cryへ続く・・・


2004/04/15
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