MONTHLY RECOMMEND [2004, June] Home

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Artist(s) … TELEFON TEL AVIV
Title … MAP OF WHAT IS EFFORTLESS
Number
01.when it happens it moves all by itself / 02.i lied / 03.my week beats your year
04.bubble and spike / 05.map of what is effortless / 06.nothing is worth losing that
07.what it is without the hand that wields it / 08.what it was will never again
09.at the edge of the world you will still float / 10.jouzu desu ne / 11.sound in a dark room
※10、11曲目は、日本盤ボーナストラック。

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TELEFON TEL AVIV(テレフォン・テル・アビブ)は、ルイジアナ州出身の、Joshua EustisとCharles Cooperのユニット。本作は2001年の1st『FAHRENHEIT FAIR ENOUGH』(未聴)に続く2ndアルバム。2004年リリース。

僕が彼らに興味を持ったのは、ナイン・インチ・ネイルズのリミックス盤『シングス・フォーリング・アパート』に彼らが参加していたという事実を知ったからだった(M-2とM-7のサウンド・デザインあるいはサウンド・プロダクションには「テレフォン・テル・アビブ」の名前が明記されているし、M-5にはJshuaの名前がある)。それに彼らがインタビューで、エイフェックス・ツインの『アンビエント・ワークス vol.2』をお気に入りとして挙げていたということも、気持ちを後押しした。これは悪いアーティストのはずがない!と(笑)。1stアルバムは、いわゆるエレクトロニカの作品として高い評価を受けたようですが、本作もその流れに位置するものでしょう。しかしかなり歌心あふれる作品になっています。歌はみじん切りにされたものではなくて、きちんとメロディを持ち(解説にもあるようにR&B的だけど、かなりPOP)、“歌”として聴くことができます。その歌を提供するヴォーカリストとして参加しているのが、ロサンゼルスのシンガー・ソングライターDamon Aaronと、僕も好きなL'altra(ラルトラ。新作も近いとか?)のLindsay Anderson。いいですねえ、この音としても声としても機能する、湿っていて、幻惑的な声。ヘッドフォンつけて聴いてたら知らぬ間に寝てました(誉めてるのか:笑)。

このテレフォン・テル・アビブの場合、何が良いかって、その歌を乗せるサウンドが良い。痙攣(けいれん)的な電子音やノイズをリズムとして使う一方で、オーケストラが奏でる優美な旋律を惜しむことなくぶつけてくる。そしてときにはメロウネス溢れるシンセ音を挿入。他にも色んな音を色んな使い方をしてて、アチコチから音が聴こえてくるから、聴いてて飽きない。このセンスはスゲーなあと思う。そんな独特の音世界は、ときには(特にインスト曲で)ナイン・インチ・ネイルズばりの暗い密室をイメージさせ、ときにはラルトラのような、枯れた情景をイメージさせる。でも歌が乗ると、途端にPOPミュージックとしても聴けるんだからすごい。有機的だけど電子的で、ノスタルジックで、ときにはノイジー。僕は聴かないから言い切れないけれど、ムームとは調理方法は似てても、きっと材料が違うんだろうなと思う。だからテレフォン・テル・アビブの音は独特なダークな空気を持っているのではないか。「メチャメチャ売れせん」とか言われたっていいじゃない。いいものはいいんだから。傑作だと思います。僕はきっと1stも買うな。余談だが、M-11の“jouzu desu ne”って「上手ですね」か?ジャケット内にも「うなぎは まっています」という謎な言葉が(笑)。なんだコリャ。



Artist(s) … WHEAT*
Title … PER SECOND, PER SECOND, PER SECOND...EVERY SECOND.
Number
01.i met a girl / 02.breathe / 03.these are things / 04.life still applies
05.go get the cops / 06.some days / 07.world united already / 08.hey, so long(ohio)
09.the beginner / 10.can't wash it off / 11.closer to mercury / 12.this rough magic

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Wheat(ウィート)はRicky Brennan(G)、Brendan Hamey(Dr)、Scott Levesque(Vo/G)の3人が97年に結成したバンド。1998年に1stアルバム『Medeiros』、99年には2nd『Hope & Adams』を発表。今作は2003年リリースの3rdアルバム。初めてメジャーレーベルから出したアルバムでもあるようです。作品ごとにサポートミュージシャンの参加はあるようですが、上記の3人が核であることに変わりはありません。

僕はとある曲を聴いて、「いいなあ、ウィート」と思ったわけですが、不覚にもその曲名を失念。なのでどの作品を買ったらその曲が聴けるのかも分らぬままに、このアルバムを購入。なんでこのアルバムにしたかと言えば、単に現時点での最新アルバムであったというだけ(すげー適当な買い方:笑)。正直、どちらかと言えば湿ったバンドだと思っていたんだけど、冒頭の“i met a girl”からいきなり裏切られた。フォーキーで軽やかなギターの音色に続いて、威勢良く「アァイ・メト・ァガァール〜♪」ってアクセントの強いヴォーカルが炸裂。何か太陽の光が見えてきて、「湿り気」とはほど遠かった(笑)。 ちなみにツイン・ヴォーカルのようだけど、Scottと、もう1人はRickyとBrendanのどっちが歌っているのか分りません。というわけで、僕は意表をつかれたというか、期待を外されたせいで、危うく正面から作品を聴かなくなるところでしたが、楽曲の良さが僕を惹きつけたのです。それに声。「アメリカン」って感じの声なんだけど、優しかったり、強かったり、ときには泣きそうだったり、表情が多才で不思議と耳を奪われる。僕の好きな透明さも多分に含んでいるし。

僕はウィートには「ロック」よりも、「ポップ」という言葉が似合うと思う。ロックっぽくディストーションギターをかましてくる曲もあるけれど、それは耳障りで逆効果のような気もする。僕が好きなのは、M-2やM-5のような、ミドルテンポのジンワリ染みる楽曲なのだ。密やかに流れるストリングスやコーラスワークもじっくり聴けるので。て、まあカントリーチック(?)な陽性の曲がある中だからこそ、そういう曲が光るのかもしれないが。プロデューサーはすっかり名を馳せたデイヴ・フリッドマンで、僕が思うデイヴらしさが随所で光っている。ワウワウとしたエコーとかね、「イェ、イェ」って浮遊する変な声とか…いやそれだけじゃないんだろうけど(汗)、表面的にそういう要素はデイヴらしいと思った。1枚通して聴くと、中盤過ぎまでの流れは緩急織り交ぜつつPOPで素晴らしいと思うんだけど、それ以降にちょっとダレた空気が流れる瞬間があって、残念(あくまで僕の印象)。

ところで、僕の心を奪った楽曲が、果たして本作に入っていたのかということだが…少なくとも12曲中にはなかった。「なんだ…違う作品だったのか」とあきらめかけたのも束の間、12曲目終了後、数秒の無音を経て、M-14で流れた曲こそが、僕の求めたものだった!感動。曲名は“don't i hold you”。「Don't i hold you like you want. Don't i treat you like you want. Don't i love you like you want be loved.」という言葉、切ない…(涙)。ミニマルで、シンシンと降り積もる雪のようなメロディがまた、切なさを誘ってタマラナイ…。




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