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■シルバー事件 再想(再走) − シルバー事件25区
□match maker−''02:quiet cradle -------------------- story ''01,''03,


ライブハウス「ラウドノイズ」。
荒々しいリズムとディストーションに
まみれながら、
パンクバンドのボーカルが叫んでいる。
顔には化粧、目と唇を黒く囲い、
頭は長いモヒカンである。

ジューダ:
 『オイ テメェらァ!
 分かってんのかァ!
 分かってんのかァコラァ!
 テメェらはクズだァ!

 そんなテメェらをォ
 俺たちが救ってやるゥ!
 デスバレー・ボム
 サウンドで救ってやるゥ!
 俺たちを崇めろォ!
 デスバレー・ボムがテメェらの神だァ!』


咆哮。

しかしそれは途中で
プツリと途切れる・・・。
突然に・・・。
・・・・・・?
なんとステージに上がった人物が
ボーカルのジューダの腹部に
ナイフを突き立てている・・・・・・!

絶叫するジューダ。

・・・・・・

*** *** ***

地域調整課会議室。
事件についての報告が、
地調の職員だろうか、イチガヤという
女性より行われている。

被害者はデスバレー・ボム、
ボーカル担当ジューダ・ロウこと
ヤマシロ・ユウタロウ28歳。

犯人はオヅヤ・トミコ34歳。
25区の大手総合商社「マツガネ」勤務のOL。
彼女はいきなりステージに乱入、
ジューダにナイフを突き立てたという。
いったい動機は何だろう?
熱心すぎるファン心理だろうか。
果たして・・・?
まずここが捜査すべき一点。

そしてデスバレー・ボムのファンである
オオサトは、事件にいたくショックを受けている。

オオサト:
 『はぁ・・・・・・
 ジューダァァァ!』


と唐突に叫ぶ始末。
対して、

ツキ:
 『はいはい そこ 叫ばない』

まったく他人事なツキである。

その犯人のオヅヤであるが、
取り押さえようとするスタッフをナイフで牽制、
隙を見て、服毒自殺を行ったという。

使われたという毒薬がブラッディ・ハイ
首筋から打ち込めば強烈な快感を得られるが、
同時に体内の血が一気に噴出し、に至るという。
どういう作用なんだよ。血が噴出って。
強烈すぎるべ・・・。

しかしこのブラッディ・ハイ。
厳しい取り締まりの末に、粗悪品が多く出回り、
最近では裏での取引も少なくなったという。
つまりこのオヅヤが使用したモノの
出所はいったいどこかということだ。
そこも捜査すべき一点。

ジューダの生死を気にするオオサトであるが、
どうやら死んではいないようだ。
オヅヤの死亡直後、病院に搬送されたという。
とりあえず一安心のオオサトくん。

オオサト:
 『復活してくれ
 ジューダァァァ!』


ツキ:
 『はいはい そこ 叫ばない』

課長キリュウ・テツオの判断で、
ナンゴウ(ゴルゴ系)、ミツモト(眼鏡にスネオヘアー)
という職員が、オヅヤ及びその周辺を洗うこととなる。
もちろんブラッディ・ハイの出所も。

なんでオオサト(とツキ)が捜査に当らないのかって?
私情が絡むとロクなことにならないから、
っていうのがキリュウの判断らしい。
しかし今回の地調はやること満載である。
それだけ25区を不安定にする要素がてんこもり
ということである。

まずは・・・地調絡みの重大事件。
潜水夫カミジョウヤスシ自殺
コレを聞いてショックを受けるのが
ヤブカワという年配の職員である。
髪には白いものが混じっており、
顔にはシワが刻まれている。

最近カミジョウが凶犯課に
地調の存在をリークするという情報があり、
上層部がカミジョウの調整(処分)を決定、
ヤブカワと、ササタニという若い職員が
カミジョウの周辺を探っていたのだが、
その矢先のできごとだったことから、
ヤブカワはショックを受けているようだ。
自分の捜査を感づかれたのではないか、
自分が何かしくじったのではないかと。
キリュウはヤブカワのせいではないと
フォローをするが、ヤブカワはどこか
納得のいかない表情である。

カミジョウを知らない様子のオオサトに、
ツキが話をして聞かせる。
カミジョウは、郵事連が最初に育てた
調整事務職員であり、
最初の潜水夫である(らしい)こと。
その頃の潜水夫の仕事は、
今の「配達屋管理」と違って
現場仕事(調整=殺人)が多かったこと。
しかも育成カリキュラムということで、
郵便局にしごく些細な苦情を訴えた
人間すらもバンバン調整していった、
言い換えれば、「しなければならなかった」こと。
ハードワークに耐え切れず
多くの人間が脱落していき、
結局残ったのはカミジョウ一人だったこと。
そこでこれはイカンということで、
業務見直し → 潜水夫の下に配達屋設置、
その潜水夫を統括する組織として地調が生まれた、
ということ。

カミジョウが衆人環視の喫茶店内で
服毒自殺を行ったことが問題であると
キリュウは述べる。
つまりカミジョウの死は
それだけ世間の注目を集めるということである。
その異常な死に様からは、
某かの事件性も疑われるだろう。
事実、凶犯課が動き出している
#02:good looking guy参照)。
カミジョウに関する捜査を通じて
地調の存在を凶犯課に知られてはなるまいと、
ヤブカワとササタニに凶犯課追跡の指令が下る。
場合によっては調整も構わないと・・・。
強気だな、地調。

そしてツキとオオサトに下る指令であるが、
これは先日の事件と繋がるものだった。
タワーマンションの事件でかかってきた2件の電話。
サクラと思しき女性からと、
あとは誰か分からぬ男性からのモノ。
その内、後者の電話をかけた人物が判明したという。
その人物は、
25区内のマンションに住む、
ショウナイ・トモヤ。
しかし、いとも簡単に居所は突き止められたという。
罠、かもしれない。
罠だとしても、食い破ればいいとキリュウ。

 『我々の存在を感じ始めた人間は
 先にその人間の存在を消せ いいな』


恐るべき理念である。
しかしこれが25区を管理する組織の実態なのだ。

*** *** ***

地域調整課特別喫煙室。
5スポを読みながら一服するツキ。
募集されていた銀色の宇宙人の愛称、
どうやら決定したようである。

『シルバリアン』。
コイケ・タイチさん考案。

自分も応募すればよかったかなと、
一人でちょっぴり悔やむツキ。

と、そこにヤブカワがやってくる。
彼も一服しに来たようだ。
もしくはツキと会話をしに・・・。

紫煙に巻かれながら、立ち話をする
ツキとヤブカワ。
どうやらオオサトの“秘密”について
話しているようだ。
とても気になるが。
やはりこの段階では
内容についてはチラリともうかがわせない。
オオサトのモンブランの食い方に
難癖をつけるツキであるが、
果たしてこれはツキ流の「かわし」なのか。
栗とケーキ部分を別に食ったら、
そんなのは「栗」と
「栗の味がするケーキ」じゃないか、と・・・。

ツキの面倒見のよさを誉めるヤブカワ。
ツキの過去がそうさせているのかな、と云う。
ツキは過去に何があった?
そしてオオサトはいったい・・・?

ヤブカワ:
 『彼はこのまま
 気付かない方がいいんだ』


何だろう?
実はアンドロイドとか?
彼こそ銀色の宇宙人とか?
カムイ・・・・・・じゃねえよなあ。
・・・・・・。
わかんねえや。

そしてこの妙な間を持った立ち話で、
どうしてヤブカワがカミジョウの死に
落ち込んでいたのかが分かることとなる。

ヤブカワはカミジョウを育てた男だった。
正確にはカミジョウを育てた人間の一人だった。
カミジョウを人殺しの機械にすべく
徹底的に仕込んだと云うヤブカワ。
だから、始末をつけるのも、
それも自分の責務だったというヤブカワ。
しかしカミジョウは自ら死を選んだ。
で、あるならば、
その死には、自分は無関係ではない、
カミジョウに対する責務を果せなかった自分がいる、
ケジメをつけられなかった自分がいる、
そうヤブカワは考えているようである。

そしてヤブカワは、
いつからかこれまでの自分を省みていたことを、
明かしてくれる。
カミジョウを育てたことに対して、
「疑念」を持ってしまったことを。
カミジョウが死んだと聞いたとき、
悲しい気持ちになったと、彼は云う。
それは責務を果たせなかった悔やみだろうか。
それとも情だろうか?
それとも自分の育てたマシンが
いなくなったという喪失の悲しみだろうか。

あるいは、
自分の過去を全否定されたような、
そんな気持ちなのかもしれない。
カミジョウの教育、殺人マシンの製造、
地域を調整するという仕事、
それらにひっくるめてデカイ穴を開けられたような、
そんな気持ちなのかもしれない。

ヤブカワの年配者らしい心の動きは、
仕事と、人生を、振り返らせたようである。
カミジョウの人生とは何だったのか。
そしてカミジョウを育てた
自分もまた、何だったのかと・・・。
果たして自分の仕事とは・・・。
だから彼はツキに、
この仕事をどう思っているかと尋ねるのだ。

ヤブカワは25区を揺り籠に例える。

ヤブカワ:
 『徹底した管理による揺り籠・・・
 我々はその揺り籠の中で
 眠る人々を
 起こさないようにする存在・・・・・・
 いや あるいは我々も揺り籠の中で
 眠っているのかもしれないね・・・・・・』


ヤブカワの視点はしごく客観的である。
自分の在り方を遠くから見つめている。
もうじき死を迎える人間が、過去のことを考える、
というのに似ているのかもしれない・・・。

ツキの言葉に、
今はただ、カミジョウの痕跡を追うだけだと、
ようやく自分を取り戻すヤブカワ。
そしてササタニと共に凶犯課を追跡しに、
出かけていく。

・・・・・・。

*** *** ***

ショウナイの部屋が見える一室。
つまり張り込み部屋で
張り込むツキとオオサト。

資料に目を通すと、
ショウナイは無職、28歳。
両親は24区に在住・・・・・・、
ということは24区はいまだ
機能しているということだろうか。
いったいどのような在り様に?
ネヅはいるのか?
カムイはどうなった?
などと疑問が出てくるが、
その答えはみな想像の域を出ない。

ショウナイは社会を
ドロップアウトしていた。
大学卒業後、
精密機器メーカーに就職するも、
ほどなく退職。
現在は貯金を切り崩しながらの生活。
外出はせず、ほとんど毎日を
部屋の中で過ごしているという。
分かりやすく云いたくないが、
云うならばニート。
NEET。NEET。NEET。NEET生活。
退職の理由は、
表向きは健康上の理由とされているが、
内実は精神的な病によるもの、らしい。

精神を病む理由にはさまざまあるだろう。
遺伝、環境、食物、身体的損傷・・・・・・。
だがこの25区においては、
環境がそれを誘発しているように思うのは、
僕だけだろうか。
もともとその素養はあったのかもしれないが、
ショウナイもまた、
25区という社会が生み出した
歪みに飲まれた被害者の一人かもしれない。

しかし彼がなぜ配達屋イイジマの
携帯に電話をかけられたのかが、謎である。
そんな電話番号が表沙汰になっているわけがない。
また、あのメッセージにしても不可解だ。
とにかくショウナイを調べなければならない。

ショウナイの帰宅を待って、
マンションに乗り込む二人。
どうやって入るかって?
正面扉にはロックがかかっているが、
そこは地調の技術力を結集した暗号干渉機、
キャサリン・ナノが力を発揮する。
ジャック・イン型と呼ばれる
25区で最近流行し始めた新たな形式のカギがある。
丸い穴(鍵穴)に端末を差し込んで、
暗証番号を入力する、というものなのだが、
キャサリン・ナノは現行のあらゆる
端末に対応している優れものなのである!
つまりキャサリンを差し込んで、
暗証番号を入力すれば、
もうロックは解除されてしまうのだ。
・・・まあいわずもがな、
キャサリン・ナノはi-pod nano。
デザインもまんまである。

しかしキャサリンがあっても
暗証番号は必要なのだが、そこは
前回のダメっぷりを挽回する目的で
オオサトが珍しい大活躍。
予め暗証番号を調査してきていたので、
難なくマンションに潜入。
ちなみにツキは“キャサリン”を
“キャロライン”と云い間違える(笑)。

ショウナイの部屋の前に立つ二人。
潜入方法を考えるが、
よく見ると、扉が開いている・・・。
誘っているのか。
充分に注意しながら内部に入る・・・。

暗い。
それに部屋には人気がない。
ショウナイはどこへ?
確かに部屋に入ったはずだ。
オオサトに電気を点けさせるツキ。

と、ツキの後方に誰かが・・・!

ショウナイトモヤ登場。
なんかもうすでに死んでそうな顔である。
綺麗でないロンゲを後ろで結んだ骸骨顔。
よれよれの服。
ジャンキーのイメージそのまんま。

ショウナイ:
 『僕はもう
 この世に存在していないような
 ものだからね
 気配がないのかな
 ブ ブハッ!
 ブハハハハハッ!』


なぜか時間がないというショウナイ。
ツキらにある説明をする。
唐突に大声を上げたりと、
明らかに精神的に不安定な様子。
しかし弱そうなので、どこか緊迫感がない。

配達屋のイイジマの携帯に電話をかけた
ショウナイであるが、ツキたちが
地調の人間であるかどうかは分からないらしい。
しかし地調という存在、
そして地調の行う「調整」のことを知っている・・・!
誰が漏らしているのだろうか。
非公式な部署の存在を。

『教えてもらった』というショウナイ。
彼は、地調の調整という名の殺人も
もうじき終わりだと云う。

ショウナイ:
 『カムイが来るんだ』

カムイが25区を解放するという。
カムイという存在は
いつどこから25区に沸いて出たのだろう。
どういう形で人々の
間に浸透していったのだろう。
その存在。
息詰まる社会の救世主。
ある意味では弱者の味方。
そしてある意味では強者の敵。
そしてそれは妄想などではなく、
確かに存在する。
少なくとも24区には存在した。
カムイ。

そのカムイ登場までの余興を
したいというショウナイ。
この部屋にあるジャック・インタイプの
カギのかかった箱を見事に開けて、
その中にあるカギを使って
ある部屋の扉を開けろというショウナイ。
そこにはツキらを待っている
者たちがいるという。
そしてそこには、
カムイに繋がるヒントがあると・・・!
地調がカムイを煙たがっていることを
ショウナイは知っているようだ。
苛つくツキ。

動きを見せるショウナイを確保しようとする
ツキとオオサトであるが、
ショウナイは大声で威嚇する。

そして彼は一瞬の隙をついて、
首筋に注射針を打ち込む。

ツキ:
 『あれは・・・・・・!
 ブラッディ・ハイ!』


流れ出る赤い液体
の噴出。
・・・・・・。
ショウナイ死亡

どうやら彼は、ただの伝言役だったようである。
そしてカムイに身を捧げた。
まだ見ぬカムイに。
それほどまでに、カムイに焦がれていたのだろうか。

とにかく清掃課を呼び、
現場のクリーニングを優先させるツキ。
そしてなんにせよ、
またカギ捜しである。
「correctness」同様、
この「match maker」の第2話も、
カギがキーワードになっているようだ。

部屋を探し、白い箱を見つけ、
ショウナイが残したヒントをもとに
暗証番号を割り出し、無事にカギを
入手するツキとオオサト。
そしてショウナイの部屋にあったPCから
出てきたのは、地下ネット出入りの履歴だった。
25区民限定。
頻繁に出入りしていたのは――

カムイネット25」。

カムイネットと言えば、前作で
“オールドマン”ことフルヤ(♂)と
“ニュートラル”ことナカマ(♀)が出会い、
惹き合い、そして24区に革命を起こそうと
企てることになった、その発端の場である。
結局、革命は失敗に終わったが。
それが25区においても再現されようと
しているのだろうか。
現段階ではデータの解析ができないので、
サイトの詳細は不明であるが、
少なくとも、カムイは確実に
25区を侵食し始めている。

カギの入手をしたツキに電話がかかる。
ナンゴウからだ。
オヅヤのパソコンを調べた結果、
カムイネット25に出入りしていた形跡が
発見されたという。
・・・・・・。
とすると、そうだ、
一見無関係に思われていた
今回のジューダ・ロウ刺傷事件と、
ショウナイの死の根底には
「カムイネット25」が媒介として
存在している可能性が浮上してきた。

今はとにかく、
ショウナイの言葉を頼りに、
入手したカギの適合場所を捜さねばならない。

*** *** ***

ツキに導かれ、
カギの鑑定所にやってきたオオサト。
鑑定所とは、もちろんコンビニ。
凶犯課がタカハシキララに導かれてやってきた、
あのコンビニである。ウハ。
同じようにパンクスな兄ちゃんに
『WC貸してください』とのたまい、
クソ長い説明でもってWCへ案内される二人。
しかしツキは勝手を知っているようで、
シロヤブらが四苦八苦して突破した、
四つのカギを、何食わぬ顔して開けてしまう。
とすると、常連だなこの男。
かなりの25区通。アンダーグラウンド知り。
そして少しばかり凶犯課と地調が接近し始めた。

WCに入るとオカモトさんが声をかけてくるが、
ツキを「ツキ様」と呼ぶあたり、
いったいどういう関係なんだろう。
主従関係みたいだけど・・・・・・。
ツキ曰く「昔からの付き合い」だと。
そしてツキはオカモトに、
オオサトを「今の相方だ」と紹介する。
とすると、前の相方がいたんだろな。
今その人は・・・・・・。どこに行ったのかな。

あっという間にカギの鑑定をするオカモト。
便利だなー。
さあ、カギの適合場所は――

*** *** ***

今度やってきたのは、とある雑居ビル。
どこかで見たな。
そう、フカマチマスターがいる
漫画喫茶が入っている、あの雑居ビル。
あら奇遇。偶然かしら。それとも・・・?

しかしカギを使うのは地下である。
よって地下へと下るツキとオオサト。
その最中、彼らは漫画喫茶へ入る誰かを目撃する。
ナヨナヨッとした、しかし
只者ではないオーラを身にまとった誰か。
誰だコレ?
ウエハラ・・・?
もしくは・・・。
本筋とはあまり関係ないかもしれないが、
気になる部分である。

地下へ降り、奥へ進むと、
目的のものと思しき扉を開ける二人。
先には美術品の倉庫があった。
壁には絵画。
正面にはオブジェが置かれている。
と、奥にさらに扉がある。
ジャック・イン型。
英語の暗証コード。
部屋をくまなく調べて
暗証番号を予測し、扉を開錠。

扉の先には、儀式を行うかのような
祭壇があり、床には円陣が描かれている。
現われたのは・・・
軍服を着た数人の男たち。
みな冴えない顔つきだ。
一番後ろにいるリーダーらしき男は
でっぷりと太ったガマガエルのような
若者である。

しかしどこかフザケた奴らだ。
言動がフザケている。
聞いてみれば、自分たちは、25区に
カムイを降臨させるべく結成された組織、
カムイファンクラブ(仮)」だという。
なんてフザケた奴らだ。
(仮)だと・・・・・・?
しかし奴らも地調の仕事が
何であるかを知っているようだ。
ショウナイと同じく。
後ろに必ず誰かいる、
やつらに知恵をつけている誰かが、
嫌でもそこに、考えがいく。

ツキたちをカムイ降臨のための
生贄に捧げると云う、
ファンクラブのリーダー、エンガワ
(一瞬エンザワかと思ってビビッタよ)。
ショウナイもその生贄の一人だと言いやがる。
そしてオヅヤについては
ブラッディ・ハイの実験だったと・・・。
なぜデスバレー・ボムのボーカルを狙ったのかに
ついては、彼が「神」を名乗っていたかららしい。
ファンクラブの面々には、カムイが神なのだ。

でも言動からして・・・ねえ・・・
こんな奴らに地調の人間が負けるわけがない。
オオサトは慌てたふりなんかしてみるも、
ツキに下手くそな芝居をたしなめられる。

ということで、あっという間に
「ボス猿」(by ツキ)こと
エンガワ以外の調整が完了(ってか人殺しすぎ)。
情けなく命乞いをするエンガワを
容赦なく清掃課のマエジマに引き渡すツキ。
これからエンガワには 「脳内洗浄」を行うという。
脳内の情報を綺麗さっぱり吸い上げてしまうのだ。
だからエンガワの自白などは必要ないそうな。

そこから何が分かるのか・・・・・・。

*** *** ***

地域調整課。
頑張ったオオサトに、
モンブランを奢るツキ。

そこにイチガヤ登場。
カムイネット25についての報告である。
一応の在り様については、
複数のカムイ信奉団体が集まって
形成している地下ネット上のコミュニティ、
ということになるようだ。
そしてそこでは、
社会に上手く適合できない人間が
寄り集まって、
閉塞感を打破するための救世主として
カムイを祭り上げていたと。
今回のカムイファンクラブ(仮)は
その中の新興団体で、
カムイネット25内で名を売るために
今回のような事件を起こしたという。
「組織の大きさ=カムイへの近さ」
という図式がいつの間にかできあがってしまい、
ただの参加者獲得競争、
つまりは団体間の小競り合いが、
今回の事件の根底にはあったようだ。
そしてカムイネット25は現在閉鎖。
閉鎖理由は不明だが、
中心になって情報を発信していた
人物がいたことが判明。

名前は不明。
ハンドルネームは「トランスレーター」。
カムイの代弁者を名乗っていたという。
どうやらエンガワやショウナイに
さまざまな情報を流していたのも、
このトランスレーターであるようだ。
いったい何者なのか。

そう、マエジマの脳内洗浄の結果、
エンガワは廃人となり25区に解放された。
言葉も忘れている状態なので、
情報流出の可能性は限りなくゼロ。
しかし洗浄中、エンガワの口からは、
」と「プラネタリウム」という
言葉が頻出したという。

海。プラネタリウム。

イチガヤと共に、
その言葉から連想される
場所の見当をつけるツキ。
最近湾岸地域に作られた施設が
それと思しきモノのようだ。

オオサトと共に調査に出るツキ。

*** *** ***

「シーサイド・プラネタリウム」。

星に興味のないツキがなんで
プラネタリウムに来るのかと
いぶかるオオサトに、ツキは
「どうやらご招待に預かっている」ことを告げる。

オオサトに
「また(仮)がいるんですか?」
と聞かれ、ツキは応える――

 『・・・・・・それは違うな
 あんな乳臭ぇ
 アマチュアじゃねぇ
 「今度はプロだ」と
 俺の勘が言っている』


プラネタリウムの扉もまた
ジャック・インタイプである。
キャロライン、もといキャサリン大活躍。
辺りを調べて考えるまでもなく
暗証コードを入力し、開錠。
そして入場。

現われたのは、一人の男・・・!
まさしく「本物」な感じだ。
整った髪にダークスーツ姿
切れ長の目が狡猾そうな印象を与える。
若くはなさそうだが、
それほど年寄りでもない。
ここでかかる音楽が
前作の“クサビ”の旋律だ。
もしくは“カムイ”。
ゾクゾクする。

名を問うツキに、男は告げる。

 『申し訳ありません
 まだちょっと本名は名乗れないのですが
 ・・・・・・ハンドルネームでいいでしょうか?』


こいつ分かってて云ってやがるな。
ほくそ笑んでやがる。
彼こそ、トレンスレーター

緊迫した空気が流れる。

今回はただの挨拶だというトランスレーター。
余興は楽しんでもらえたかと、気にする。
余興。
ショウナイやファンクラブのことだろう。
負けずにツキも、
「大根役者ぞろいだった」と返す。

トランスレーター:
 『まあ これから舞台は
 ますます盛り上がりますので
 楽しみにしておいてください
 ツキさんと古くから
 お知り合いの方々も
 出演されますから』


ツキ:
 『!
 てめぇ・・・・・・』


古い知り合い?
誰だろう?
いずれにせよ、この男はツキの過去も
ある程度知っているようだ。
そして今回の『シルバー事件25区』は
やけに「劇場」というイメージを使う。
サクラも言っているし、ここでも出てくるし、
この「match maker」の第一話のタイトルは
“underground theater”である。
この世は劇場だとクリソストムスは云ったが、
ここではこの25区全体を
劇場と捉えているのだろうか。
入り乱れる人間関係、
複雑に絡み合うストーリー。
どのように幕が落とされるのか。
とにかくこのトランスレーターという、
凶犯課でもない、地調でもない、
そしておそらく特捜でもない、
第三者の存在によって、
いよいよ事件が動き出したように感じられる。
胎動を感じる。
男の思惑とは何か?
いや男の言葉を聞くと、
「上司」という言葉が出てきている。
ということはどうやらどこかの組織に属している?
とすると、ナカネ側の人間か。
今のところはそう考えるのが妥当にも思える。
ナカネはおそらく
カムイ復活を目論んでいる、
もしくはカムイの存在を
25区の活性化に利用しようとしているだろうから。
トランスレーターのやっていることとも
矛盾しないように思える。
が、しかしだ。
ナカネは25区の統率者であろう。
ということは彼を体制側の人間として
考えてもおかしくない。
そして地調もまた体制側の組織である。
25区を管理しているのであるから。
ということはその地調の人間であるツキが、
ナカネサイド、体制側の人間である
トランスレーターを知らないというのも
またおかしな話ではないか?
そう考えると、トランスレーターは、
ナカネともまったく別な、
未知の組織の人間なのかもしれない。
あるいは、ナカネは体制云々を
超越した位置にいる、そんな人間なのかもしれない。
前作のネヅのような・・・(飛躍しすぎか)。
そしてまた、このトランスレーターが
属する組織は、“*01:NAGARE”において
トキオに指令を与えた謎の男とも
つながってくるのかもしれない。
まあ、とにかく想像だけれど。

・・・・・・。

トランスレーターを
連行しようとするツキとオオサト。
しかし男は、
一瞬の強い光を発したあと、
忽然と姿を消してしまう。
去り際に、気になる言葉を残して。

ツキさんの職場に
プレゼントを届けておいた、と・・・・・・。

胸騒ぎを感じて、
急いで課に戻るツキ。

*** *** ***

ツキのデスクには何も届いていない。
そしてオオサトのところにも。

ヤブカワと共に行動していたはずの
ササタニが一人でいたので話を聞くと、
二人はそれぞれ別行動をしているという。
ヤブカワは凶犯課のシロヤブ・クロヤナギを追い、
ササタニはアカマ・アオヤマを追っているという。

ツキの胸騒ぎが、
ササタニに、ヤブカワの識別信号を
調べさせる。まさか、である。

不思議がるササタニだが、
仕方なくヤブカワの識別信号をチェックする。

と、それは課の扉の前で止まっていた。
なぜ中に入ってこないのか。
なぜ動かないのか。

不安と共に扉を開けるツキ。

・・・・・・!

そこには腹部からを流した
ヤブカワが立っていた・・・・・・。
顔面蒼白。すでに息はない。
うろたえるササタニ。

プレゼント。
これのことだろう。

苛立ち、怒り、悲しみ、
それとも他の何かも混じっているかもしれない、
ツキは握り拳をロッカーに叩きつける。

ヤブカワは永久の眠りについてしまった。
静かな揺り籠(quiet cradle)の中で。

ツキ:
 『(・・・・・・そんなに)
 (・・・・・・そんなに
 寝心地がいいのかよ)
 (25区は・・・・・・)』


地域調整課の職員殺害。
事件はどこへどう動くのか。

*** *** ***

後日、復活したジューダ・ロウは
別人のように変貌したルックスで、
「ラウドノイズ」で歌を歌っていた。

カムイに捧げる歌を・・・・・・。

ジューダ・ロウという神はいなくなり、
ここにカムイの信奉者がまた一人。


''03:about nighthawkへ続く・・・


2006/05/03
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